現るのは敵か味方か
ヴァーヴァラ、ミニ図鑑、おさらい編
【イヴ】
隆史が青龍から力を授かった際にその力を扱いこなせるように青龍が送った精霊。
隆史の魔力と結びつき、都合良く彼の身体から出たり入ったり出来る。
今回は結びついているお陰で、イヴも隆史と共に時空間を超えたと思われる。
以前は肉体を持っていなかったが、隆史の傀儡を得る事で身体を手に入れた。
今では隆史が重宝する大事な相棒。
「もしもし、大陸行きの船はどこか知らないかな?」
僕は港を歩き回ると、一人の水夫に訊ねてみた。
ひ弱で人の良さそうな水夫だ。
「大陸……ああ、中国の方かね?今は日中貿易が盛んじゃからのぉ。」
水夫はうむうむと頷きながら喋った。
「そうじゃの、あっしの親分に掛け合ってみらぁ。」
「親分?」
「ああ、ここいらの貿易会社の支配者じゃぁ。」
「ほう、じゃあお願いします。」
「おうよ、来いや。」
僕はその水夫に連れられて移動を開始した。
しかし―――。
僕は腰に手をやりながら考えた。
雪月花やクレアは元いた場所に置いてきてしまった故、丸腰だ。
アイチエッジすらないとなると……どこかで武器を仕入れなければ。
水夫に連れられて僕はある建物に入った。
見た目、長屋の家で中は暗く、少し魚臭い。
「親分、中国に行きたい奴を連れてきました。」
僕が用心する中、水夫は大声を上げた。
「おう!入れや。」
中から大きな銅鑼声が響いた。
僕とその水夫は廊下の奥に突き進んでいくと、突き当たりにドアがあった。
「失礼しやす。」
水夫はそれを押し開けると、中には大きな偉丈夫が立っていた。
彼の背は高く、髪の毛はくしゃくしゃで顔は煤けている。だが、その顔は好奇心に満ちているような気がした。
んで、中はいろいろとゴミが散らばっている。その中にチラホラと本が見えた。
そして……この臭いは……貝殻?
「おう、竜、戻ったか。」
「へい。」
「それがその大陸に行きてぇ、って奴か。」
「へい。」
「名前は?」
「隆史と言います。」
「タカシ……どっかで聞いた名前だな……。」
その瞬間、彼の瞳はキランと輝いた。
咄嗟に僕は身構えると、彼はくくっと笑った。
「俺は海月。ここらの海賊番長だ。」
「お、親分!明かして良いんですか!?」
水夫が慌てたように言う。それを海月は手で制した。
「大丈夫だ。こいつも無法者だ。」
「へっ?」
「見ろ。その手。剣を握ってきた手だ。そしてその指は所々白い。つまりはチョークを使ってきた奴だ。つまりは、聖悪魔教のもんだろ?」
「ご名答。そういうあんたもだろ?」
「ほう?」
「そこらの本からは巧妙に隠してあるようだが、妖気がぷんぷん漂っている。それにこの貝殻の臭い。何の事情があるか知らないが、チョークの代わりに貝殻を使っているんだろ?」
僕がそう言うと、海月は愉快げに呵々と笑った。
「名推理じゃねえか、坊主。テメエ、上の名前はなんだ?」
「安部。安部隆史だ。」
「―――嘘、だろ?冗談も程々にしろ、小僧が。」
スッと偉丈夫の双眸が鋭くなった。
竜がびびった様子で後ずさる。だが、僕は臆せずに言った。
「嘘じゃない。」
「あいつは死んだ。外見こそは似ているが、死んだ奴を生き返らせるのは不可……。」
「不可能ではないが、僕は死んでいない。」
「嘘だッ!俺はこの目で確かに見た!神炎を最大出力で放出して、敵と共に燃え尽きる安部隆史を!」
「神炎?コレか。」
僕は掌から極小サイズの神炎を出現させた。
『隆史様!』
イヴが頭の中で戒める。
だが、この程度では反発は起こらないらしい。
「……は?まさか……。」
海月は引きつり笑いを浮かべながら地面から何かを拾った。
弾丸、のようだ。
それを、僕の神炎の中に放る。
次の瞬間、その弾丸はジュッと音を立てて消失した。
「信じたか?」
「―――信じざるを得ないようだ。何で天下の隆史様が生きているかどうかは聞かないでおこう。だが……これでフランス軍は希望を見出した。」
「とりあえず、大陸まで連れて行って欲しい。」
「心得た。とりあえず、俺の船で案内しよう。竜、仲間達を全員引っ掻き集めろ!明日、出航だ!」
「し、しかし、親分、海上保安部隊にはどう許可を取れば……。」
「無許可だ。無許可で俺達はこの腐れ日本を抜けて、聖悪魔教会に向かう。」
「へ、へいっ!了解でやんす!」
竜は一つ身震いすると慌ただしくその場を出て行った。
「安心しな。隆史さんよぉ。」
海月はやんちゃ坊主のように鼻を擦りながら言った。
「海賊団、悪魔の銛が味方なんだ。きっちり送り届けてやらぁ!」
そして、翌日の早朝。
まだ港に人気はなく、静かだ。
そこのある船に一人、また一人と人が集まりつつあった。
その船室には好奇を漲らせた五人の男女がいた。
ここから、また始まるのだ。
僕はその面々を見渡しながら手に汗を握った。




