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清水衛の暴露

ヴァーヴァラ、ミニ図鑑、おさらい編


【ジャンヌ】


隆史の悪魔。

初期から隆史の陣営におり、当時一緒であったアンリや常磐と仲良く隆史を殺め、支配から逃れようと考えていた。

とてもしぶとく、独逸軍との衝突の際もアンリと常磐が死んでしまったのに対し、ジャンヌは胴を切られながらも長らえた。

その後、共に隆史といるうちに情が移ったのか、ゼウスに隆史が殺されかけた時、口づける事で『永久の服従』による結界で隆史を守った。

しかし、『永久の服従』を誓った故、隆史にずっと縛られる事となる。

が、彼女はそんなに苦としている訳ではなさそうだ。毒舌だが。


以前、隆史の師である江崎剣、その妹の神谷薙に仕えており、それなりに江崎、神谷の秘術は心得ているようだ。


フランスと日本との衝突の際も生き長らえる。


作者曰く、本作品で一番重要視している脇役。

今後活躍するかどうかは分からないが、ただ、それなりに登場回数は多くなる予定……らしい。

「ま、衛……?これはどういうことだ……?」

 軽く怯えるような声。

 僕は半ば諦めの気持ちを感じながら笑みを浮かべた。


「―――クリス、君だけにはこの姿を見せたくなかった。君の中の衛でいたかった。」


 僕は地を蹴ると、魔力の砲弾の盾となった龍の姿のジャンヌに飛び乗った。

「ジャンヌ!」

「仰せのままに、マスター。」

 昔と変わらぬ淡々とした声。だが、それが今はとても頼もしい。

 ジャンヌが大蛇の如く、黒ずくめの集団に襲いかかると、α、β、γは全員散開した。

 そして、同時に攻撃を放ってくる。

 が、その攻撃は突如浮かび上がった死体達に防がれた。

「まだ、見せ場はあるみたいだね。」

 カノンが死体を盾に防いでくれている!

 僕はそれを横目で確認すると、ジャンヌに傀儡糸を出して指示を発した。

 この傀儡糸、魔力の糸だけでなく情報伝達にも使える優れもの。

「はぁっ!」

 ジャンヌは大きく跳ねると空中で姿をハヤブサに変えた。

 僕が地上に降り立つと同時に彼女はγへと鋭い嘴での一撃を放った。

「―――ッ!」

 声なき声を上げながら結界で受け止めるγ。

 しかし、それによって結界がジャンヌの方に集中するという隙が出来た。

 結界というのは構造上、どうしても攻撃が集中する方に魔力が集中する。

 そんな中、反対側から徹底的な攻撃が放たれたらどうなるのだろうか?


 次の瞬間、僕はγの後ろに回り込み、掌底に神炎を出現させて突きだした。


「があああああああああああああっ!」


 その瞬間、γは凄まじい悲鳴を上げて燃え尽きていった。

 αとβはそれを確認すると、お互い頷き合って壁の大穴から脱出していった。

「鮮やかな撤退……ごほっごふっ!」

 僕が呟いていると、突然、胸に激痛が走った。

 しまった、拒否反応が……!

 気付いた頃にはすでに時遅し、僕は血を吐きながら地面に倒れ込んでいた。

「隆史、隆史!」「マスター!しっかりして下さい!」

 カノンとジャンヌの声をぼんやりと耳にしながら、僕は目を閉じた。


 目を覚ますと、柔らかなベッドの中にいた。

「タカシ、目を覚ましたか。」

 すると、ぎゅっと握られる手。

 僕は視線をその方向に向けると、クリスがその手を握っていた。

 そして、視線を僕のいる部屋へと彷徨わせた。

「―――どうやら、地下牢では、ない、か。」

「恩人をどうやって牢獄に放り込めようか。」

 クリスは安堵したように微笑みを浮かべると、身を乗り出して僕の唇に柔らかな物を押しつけた。

「でも、僕は……分かるだろう?」

「ああ……フランスの悪魔使い……デビル・ヴァーヴァラだろう?」

「その通り。それなのに何故、僕を?」

「―――当たり前だろう、妻が夫を守るのは。」

 クリスは頬を赤らめて言うと、えへんっと咳払いした。

「まず、タカシには守って貰ったのが事実。それがどうであろうと、変わる事はない。故に、悪魔がどうこうというのは置いておいて、タカシと先程戦ってくれた兵士……カノンと名乗っていたが、両名の安全は確保した。恐らく判断するに、悪魔というのはそんな恐ろしい存在ではなく、日本軍側が悪魔を撲滅しようと適当に『恐ろしい』とでも法螺吹いた、というのが真相か?」

「―――さすが、将軍閣下様。聡明で。」

「正解だな?ならば、ガンダーラも方針を変えねばなるまい。いずれにせよ、恐らく手の早いイギリスだ。こちらがヴァーヴァラを擁護しているということを知った以上はすぐに動くだろう。戦の準備をせねばなるまい。」

「だが、勝てるのか?」

 僕が指摘すると、彼女はため息をついた。

「勝てない。故に民は徐々に逃がす。恐らく、そちら側が手引きしてくれるだろう?」

「ああ、出来るだろう。」

「すぐに行動を起こしたい。タカシ、ここに信頼の置ける人間を集めよ。だが、私も身の安全は保証された訳ではないので、ロウェルは置かせて貰うぞ。」

「構わない。雪月花。」

 僕が虚空に呼びかけると、空中に猫が現れた。

「はい、御主人様、何でございますか?」

「カノン、麻里亞を呼んで欲しい。ここに。」

「畏まりました。」

 雪月花は指示を聞くとすぐに姿を眩ました。

「……便利だな。」

「だろう?」

 クリスは感嘆したように言うのを、僕は自慢げに聞いた。

「……私にも、出来るのか?」

「出来なくはないけど、ちゃんとした設備があった方が良い。契約に失敗すると十中八九身体を乗っ取られるから。」

 僕はそう言うと、そうか、と彼女は引きつり笑いを浮かべた。

「そのうち教えてあげるよ。手取り足取り。」

「ありがと。」

 くすくすと嬉しそうにクリスが笑っていると、部屋に麻里亞とカノン、そしてロウェルが入ってきた。

「揃ったか?」

「のようだね。」

 クリスは視線を部屋にいる四人に向けると、コクンと頷いた。

「では、始めよう。今後、イギリスに反旗を翻すか否かを決めたい。」

「……なるほど、閣下、これを機にイギリスから独立を図ると。」

 ロウェルは鋭い視線を僕に向けて言った。

「騙されたのは気に食いませんが、独立自体には賛成です。ですが、悪魔が信頼に置けるかは……。」

「それに関しては、我々も同じだ。悪魔を完全に信頼しているのは安部隆史ぐらいだろう。」

 カノンが腕を組んでそう言うと、ロウェルは鼻で笑った。

「ふぅん、もう死んだ以上はどうにもなるまい。」

「いや、生きていますよ。ここに。」

 麻里亞はそう言うと僕を指し示した。

「……はい?」

 ロウェルは思わず、といった感じに聞き返してきた。

「清水衛と名乗っていましたけど、自分、安部隆史です。」

 僕が手を挙げて言うと、クリスティーとロウェルは唖然とした。

「……嘘だろ?安部隆史といったらヴァンパイア王でもあるんだぞ?日中に堂々と、しかも敵国にいる……とは……?」

「いや、夜会の国王ではあるけど、ヴァンパイアでもないし。」

「じゃあ、何でここに侵入を……?」

「そりゃ、クリスに会うために。」

 僕が逐一、答えていくと、クリスはため息をついた。

「何て事だ、憧れの人がこんな近くにいて、それも夫だと……?」

「ん?クリス、何か言った?」

「い、いや、何でもない。とにかく、否定の要素がないのであれば、即刻同盟を取り結んでそのことを知らしめておきたいのだが、構わないか?」

 クリスは何か慌てたように早口で言う。

 僕はコクンと賛同の意を示すと、ロウェルがチラと視線をカノンにやった。

「カノン……と言ったな。議会の招集を行う。手伝え。」

「へいよ。」

 じゃ、またねー、と言いながらカノンは立ち去り、その後をロウェルが続いた。

 そして、麻里亞が会釈して部屋を出ると、部屋には僕とクリスだけになった。

「すまなかった。クリス。」

「ん?」

「ずっと欺いていた。」

「気にしないでくれ。それに、一度、貴方は私を救ってくれた。その恩を忘れた訳ではあるまい。」

 クリスはくすくすと笑いながら、僕に口づけした。

「さぁ、少し休んでいてくれ。必要になれば、起こすから。」

「お言葉に甘えて。」

 僕は一つ頷くとベッドに寝たまま、すぐに眠りへ落ちていった。

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