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ガンダーラ城下町

ヴァーヴァラ、ミニ図鑑、おさらい編


【メイ】【グリゼルダ】


メイは隆史が国王だった際、侍女として仕えていた。

隆史もよく寵愛していたため、彼女はあこがれの心を抱き、共に戦えるよう、グリゼルダを師事する。

だが、隆史によって戦乱には参加させられなかった。


そのグリゼルダは海神ポセイドンの娘で隆史の師である。

江崎流拳法《衝》を習得している。

彼女は隆史に片想いしているが、なかなか言えず、他の女に先を越されてばかりであった。

そして、その想いを秘めたまま、戦乱に参戦、死亡。

「―――だから、こういつも無茶は止めろと……。」

「雪月花さん、そろそろ。」

 咲が呆れたようにそう声を掛けた。

 それもそのはず、僕は雪月花によって海から引き上げられたから二十分近く、正座でお説教されているのだ。全く、ありがたすぎて涙が出てくる。

「―――それもそうですね。」

 雪月花は頷くと、僕に手を差し伸べた。

 僕はその手を掴むと、正座で痺れた足に鞭を打って立ち上がった。

「では、御主人様、ここからは別行動となりますね。」

 雪月花は淡々と言う。だが、彼女は離れたくないのか、まだ僕の手を掴んでいる。

「素直じゃない奴め。」

 僕は微笑みを浮かべると、雪月花を引き寄せて口づけした。

「んっ……!」

 いきなり口づけされて戸惑っていたようだが、すぐに喜色を浮かべて彼女も口を吸ってきた。

 そして、それは雪月花の魔力となる。

 数分間、そのままの体勢でいたが、時間も惜しいので息継ぎの合間に離れた。

 雪月花は残念そうに、だが、頬を赤らめてペコリと頭を下げた。

 咲と蕾は視線をどこかに彷徨わせている。まぁ、目の前でいちゃいちゃされたらこの反応は当然なのかな?多分。

「じゃあ、頑張ってきてくれ。咲、蕾、頼んだよ。」

「はい。」「うんっ!」

 二人が頷くのを確認すると、僕は踵を返して駆けだした。


 僕はガンダーラ城下町の中に入り込むと、町の様子を確認した。

 しかし、警備が厳しいな……。

 僕は飛び越えてきた高い城壁を見ながら思った。

 カノンの手配がなければきっと入れなかっただろう。

 そして、中も石造りの家々が並んでいる。

 来る途中、いかにも流浪の旅人のような服装に着替えたが、ここらは裕福なのか煌びやかな服装の人間が多い。

 ―――もっとも、表面だけだが。

 僕はそう思いながら人々の様子を伺った。

 ここにみすぼらしい姿の男が立っているというのに、彼らは一瞥もしない。

 つまりは、見慣れている証拠。

 やはり、貧富の差があるのだろうか。

「イヴ。」

 僕は小声で呼びかけると、イヴはスッと僕の影に降り立った。

『な、なんでしょうか?』

 ―――何故、そんなぎこちない。

「僕の目になってくれ。この町の概要が知りたい。」

『畏まりました。』

 彼女はそう呟くと、身の回りに半透明な膜を張った。その途端、身体が透過した。

 僕にはかろうじて見えるが、恐らく周りの人には見えないだろう。

 そしてふわりと浮かぶと、宙を舞った。

 その途端にイヴの目に映る光景が僕の頭の中に入り込んできた。

『北の方に見えるのが恐らく、城です。あそこを中心にこの町が広がっています。中心部に近付けば建物の背が高くなっています。』

「なるほど。で、ここはイギリスの植民地と聞いていたが、どこかに監視する場所があるのだろうな。」

『城の中でしょうか。あ、いえ、目視で一つ、城壁の南門……つまり、隆史様の右手にある門の付近の建物ににイギリス人が出入りしています。」

「町の様子は?」

『そうですね。豊かそうに見えますが、路地裏は荒れていますし、西は完全にスラムですね……。』

 イヴは見たくもない、という様子で言った。

 僕はその光景をイヴの目を通してみた。確かに荒れている。ならず者だらけだ。

『―――どうやら、ここは徴兵制のようです。』

 イヴは別の方向に視線を移す。軍人が民間人を何人か連行している。その手には赤い紙が握られていた。

「つまり、あの紙が徴兵の。」

『そのようです。もう少し近寄って確認したいですが、探知系の物を持たれていた場合、バレてしまいます。隆史様も城に向かうのであれば、魔力を押し隠してお進み下さい。』

「ありがとう。イヴ。」

『いえ。』

 そう言うと彼女は宙で姿を消し、僕の身体の中に潜った。

 僕はそれを確認するとそちらの方に足を向けた。


 城は、イヴの目を通した時も思ったが、でかかった。

 いかにもイギリスっぽい石造りだ。

 植民地って大変だなぁ……。

 僕がそんな感想を抱きながら、城門の方に歩いていくと誰かがこちらに駆けてきた。

「待て、貴様、何者だ?」

 屈強な戦士だ。色黒で目が鋭い。筋骨隆々だ。

「手前はここに仕官しにきた者で。」

 そう切り出すと、戦士の双眸が鋭くなった。

「なぁにぃ?仕官だと?見たところ、貴様、日本人ではないか。」

 やばっ。

 僕は内心焦りながらも口を開いた。

「実はここの評判は日本にも轟いておりまして、僕も両親の反対を振り切って仕官すべくここに来たのです。」

「ふむ……。」

 じろじろと僕を見る戦士。

 やばい……バレたか?

 僕がじっと待つ中、戦士は口を開いた。


「そうかそうか!よし、分かった、ついてこい!」


 あら?

 僕は恐る恐る戦士の顔を伺うと、彼は喜色満面だ。

 これもカノンの細工……ではなさそうだ。

「よし、儂が直々に将軍閣下に会わせて進ぜよう。儂はロウェル。貴様は?」

清水(しみず)(まもる)と言います。」

 僕は予め用意しておいた偽名を伝えた。

「そうか、衛か。良い名だ。」

 ロウェルは上機嫌そうに頷くと、僕の背に手をやって共に城の中に入った。

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