第二章:君の記憶の中で、決して溶けない雪
#純愛 #悲恋 #切ない #泣ける #バッドエンド #初恋 #長野 #インドネシア
一月の長野は、まるでクリスタルの牢獄だった。日本アルプスから吹き下ろす風は、剃刀の刃のような氷の破片を運び、僕の頬を切り裂く。滑りやすい歩道に立ち、震える手でジャケットのポケットを探る。あの青いヘアピンがまだそこにあることを確かめるために。
バンジャルマシンで三つのアルバイトを掛け持ちし、十年間貯金し続けてきた。すべてはこの街への航空券を買い、この寒さに凍えるため。ただ、ひとつの名前のために。
あかり。
その時、カフェのドアがカランと鳴った。彼女が出てきた。
彼女はクリーム色の厚手のウールマフラーを巻いていた。顔立ちはあの頃とあまり変わらず、相変わらず綺麗だったが、そこには見知らぬ「大人」の影があった。彼女は隣に立つ背の高い男の冗談に応え、笑っていた。男は独占欲を示すように、あかりの腰を引き寄せた。
僕は一歩前へ踏み出した。INTPとしての僕の分析能力は、すべて不全を起こして死に絶えたかのようだった。論理は「逃げろ」と叫んでいたが、メランコリックな心がこの足を前へと突き動かした。
「あかりちゃん?」
僕の声は掠れ、マイナス五度の気温と、言いようのない恐怖で震えていた。
二人の足が止まった。あかりが振り向く。永遠とも思える数秒間、彼女は僕を見つめた。僕は彼女の瞳に輝きが宿るのを待った。バリト河のほとりにいたあの頃のように、僕の名前を叫んでくれるのを待った。
けれど、返ってきたのは、彼女の綺麗な額に寄せられた不審そうな皺だけだった。
「すみません……どなたですか?」
ひどく丁寧で、氷のように冷ややかな日本語だった。「どこかでお会いしましたっけ?」
世界が崩れ去った。僕は、長野の風よりも冷酷な真実に気づかされた。――人は、人混みの中で失恋によって死ぬことができる。そして世界は、何事もなかったかのように回り続けるのだ。
「僕だよ……エドだ。バンジャルマシンから来たんだ」
僕はたどたどしく答え、証拠としてあの青いヘアピンを取り出そうとした。「二〇一五年。ナンヨウザクラの木。指切りの約束……」
隣の男が眉を吊り上げ、顔つきを険しくした。「おい、なんだお前? 俺の彼女に近寄るな」と、乱暴な口調で怒鳴った。
「待ってくれ、少し彼女と話したいだけなんだ」必死に、たどたどしい日本語で訴える。
男は僕の肩を荒々しく突き飛ばした。僕は汚れた雪の塊の上に無様に転倒した。「失せろ、この外国人浮浪者が! 彼女が怖がってるだろ!」
あかりは僕を助けようとはしなかった。それどころか、男の腕に隠れるようにして、僕を危険なストーカーでも見るような怯えた目で見つめた。「健太くん、行こう。この人なんて知らない。怖いよ……」
彼女は小さくそう囁いた。
二人は遠ざかっていく。雪の上に座り込んだ僕を残して。僕の手からこぼれ落ちた青いヘアピンに、粉雪が静かに積もり、それを覆い隠していくのが見えた。
この街にとって、異邦人の男の悲しみなんて、気にも留める必要のない小さなノイズに過ぎないのだ。行き交う人々にとって、僕は角を曲がればすぐに忘れ去られる、ただの惨めな景色の一部に過ぎなかった。
自分を忘れてしまった誰かを愛し続けること。僕は灰色に染まった長野の空を見上げながら思った。
それは、流れる川の水面に名前を書き込むようなものだ。どんなに深く刻み込もうとしても、流れは一瞬ですべてを消し去ってしまう。僕は思い出を迎えに来たつもりだったけれど、実際には、その葬儀を見届けに来ただけだった。
「最後までお読みいただきありがとうございます。次回の更新は明日、22:00を予定しております。また明日お会いしましょう!」




