第28話 帰還
15層7日目の朝から、拠点の解体が始まった。
昨日のうちに整理できるものは済ませてあった。
残りを順に処理していく。
夜営道具、調理器具、通路確保に使った工具類を悠真が収納した。
蛭田が確認を回って、全体に声をかけた。
「今日は14層水域を越えて上層側へ戻ります。荷物の最終確認を今のうちに」
全体がそれぞれの作業へ散った。
◇
出発前に収納の状態を確認した。
群生帯5区画、結晶群5単位、壁石1点。
どれも内部で止まっている。
鍛冶担当が横に並んだ。
「崩れは出ていますか」
「今のところ変化なしです。地上で確認するまでは確定じゃないですが、今の状態は保たれています」
鍛冶担当は少し間を置いてから「そうですか」と返す。
そして準備を進めていった。
◇
15層の通路を引き返した。来た道を逆にたどっていく。
群生帯のそばを通過した。
回収済みの区画は抜けた跡のまま残っている。
手のついていない部分はまだあったが、蛭田はそこへは寄らず、全体も足を止めずに進んだ。
広い空間を抜けた。
開口部のある壁のそばを通った。
霧は今日も流れていたが、誰もそちらへは向かわなかった。
◇
14層水域の手前に着いた。
水は変わらず通路を塞いでいた。幅も流れも、来た時と差はなかった。
蛭田が全体に確認を取った。問題がある者はいなかった。
「倉橋さん、お願いします」
「わかりました」
水域に向けて収納を発動した。範囲を取りながら水を取り込んでいく。
川底が現れ、中央は十分に歩けるだけ開いた。
先行に2人が入った。
足場を確かめながら渡り、向こう側から合図を出した。
全体が動いた。渡渉は問題なく終わり、最後尾が越えたのを確認してから収納を解除した。
水が戻って通路を塞ぎ、元の状態に戻った。
蛭田が人数を確認した。全員いた。
「続きます」
全体が前へ向いた。
◇
少し進んだところで短い休止が入った。
隊員の一人が悠真の横に来た。
「ここまで来れば、あとは地上まで運ぶだけですね」
「そうですね」と悠真は答える。
収納の状態を確認したが特に変化はなかった。
休止が終わり、全体が動き出した。
15層はもう背後にある。
上層へ向けて進んだ。
14層から通路を逆にたどり、13層、12層と順に上がっていく。
来た時と同じ道だったが、荷物の中身が変わっていた。
ペースは落とさなかった。
休憩を取り、状態を確認し、また動く。
6層の簡易拠点に着いたのは4日後だった。
全体が荷を下ろして休憩をとる。
悠真は収納の状態を確認した。
群生帯5区画、結晶群5単位、壁石1点。
どれも変化はない。
鍛冶担当が近くに立った。
「まだ保っていますか」
「保っています」
「それなら、地上まであと一息ですね」
それから収納の確認を終えて、端末をしまった。
◇
《深霧峡》の管理施設に戻ったのは、15層を出発してから7日後だった。
出入口を通って、地上に出た。
施設の受付で帰還の記録を入れ、携行していた装備をロッカーに返す。
蛭田が管理員と資材の持ち込み確認を済ませていた。
一連の手続きが終わると、全体が静かに散っていった。
蛭田が全員に向けて短く告げた。
「今日はここで終わりです。正式な報告と精算は明日以降にします」
誰も異論を出さなかった。
全体が思い思いの方向へ動いた。
悠真は施設のロビーで収納の状態をもう一度確認した。
数も状態も変わっていなかった。
◇
端末が振動した。朝倉からだった。
「戻りましたか」
「今日着きました」
「廃工場の件、急ぎで共有したいことがあります。明日でいいので、時間をもらえますか」
「分かりました」と返信して、端末をポケットへ戻した。
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