指先一つで
想像して、赤面する。
「いや、あの、ほら……」
私としてはマキちゃんが私を運んでくれたというのを想像して、もしダンジョンの中で体調を崩した人がいれば運んであげられるなぁと思っただけで……。
いや、もちろん志崎さんが倒れてたらお姫様抱っこして運んであげるけど……。
「さて、ついた。じゃ、準備しよう!」
そう言うと、ミサさんは買ったばかりの水切りワイパーを両手でもち魔法の杖のように掲げる。
「底なしの沼、果てなき砂塵。逃げ場なき大地の掌をその身に刻め。重力は鎖となり、足元の静寂は呪縛の檻へと変ずる。贖えぬ罪を背負いて、永劫なる眠りの中に足元の沈黙を破れ」
呪文を唱え始めた。……よく覚えられるよね。私には無理だなぁ。
「『アビス・ドロップ』」
戦闘民族が地面にこぶしを叩きこんだような1mほどの円形の穴が空く。
何度見てもミサさんの空けた穴は、漫画とかで拳を叩きこんでできた穴のようだ。
べコリと凹んで日々が入っているあの感じ。
「さ、ここに広げて、ああ、ちょっとでっかすぎたかな、まあいいや」
ミサさんと二人で穴を覆うようにゴムシートを敷く。
穴にそって凹ませる。
それから、ゴムシートの端っこにゴムバンドをくくりつけて、腰に巻いた。
「ほら、これなら、体から離れるわけじゃないから、消えないよね!」
「あ、その手があったんだ!」
穴にゴムシートを敷く。スライムを落として倒す。魔石はゴムシートの上に載る。ゴムシートをゴムバンドでつないでおけば、つながっている判定で魔石も消えない。
っていうわけだよね?
「天才!ミサさん天才!」
「えへへ、そう?じゃあ、さっそく!」
ミサさんがミジ切ゴムワイパーを掲げ、そして地面に下ろすと、穴にスライムを落とした。
「ああああ!ゴムがクッションになって、スライムが死なない!私、天才じゃなかった!」
ミサさんがショックを受けた。
ゴムの上にスライムが水たまりのようにたまる。
倒したときに立ち上る光は見えない。
「えーっと、じゃあ、穴をもっと深くしたらいいかも!」
ミサさんが首を傾げた。
「深く?……あ、深くをイメージすればいいのね……。どうしよう、呪文……作らないと」
そこから?
「そうだ、そういえば、志崎さんが呪文と動きをセットにするといいって教えてくれたの。私もちょっとやってみるね」
ぽこっ、ぽんぽん、クリーン、クレイコーティングはそのままでいいとして。
ぼこっなんだよね。1mをよく使う。でも、安全地帯を作ろうと思うと1mでは不便。
大き目の穴、1m2m3m……これらを、ぼこの呪文一つで、う動きで制御できないかな?
志崎さんは腕の振りで変化させてた。指先だと小さな……指?
だったら、これでどうだろう。
「【ボコッ】」
指を1本立てて、1m四方の穴をイメージして呪文を唱える。
「次、【ボコッ】」
指を2本立てて、2m四方の穴をイメージして呪文を唱える。
「次は【ボコッ】」
指を3本立てて、3m四方の穴。
うん、指の数で大きさを指定、イメージ定着しやすそう。
指は10本あるから、1mから10mまで同じ呪文でいける。これ、便利かも!
「お、お姉さま……どうして……」
ミサさんが唖然として私を見ていた。




