バリア?!
「うん、重たいな。動けるけど、違和感があっていつもの動きは無理だなぁ。いや、もしかしたら有希だと歩けない?」
「流石にそんな非力じゃないですよ。【クレイコーティング】長靴」
両足を長靴のような厚みで泥で覆う。
「う、うん?」
足を持ち上げようとしてちょっと苦戦する。けれど、持ち上がらないわけじゃない。どちらかというと、足が固定されてしまっている方が違和感がすごい。
ゴムの長靴のように曲がらないのだ。
「あ、この感じ……あれみたいですね」
3歩4歩歩いてから紫崎さんを見る。
「そうだな、あれだろ、俺も思ったところだ」
せーのと言ったわけではないのに、二人の声が重なった。
「スキーブーツ」
「ギプス」
うん?目が合う。
「スキーしたことあるのか、有希は?」
「ギプスって足を骨折したことあるんですか?紫崎さん?」
またもや声が重なった。
二人ではははと笑う。
「っと、で、こっち、重りの方は……動かせないわけじゃないが、とっさにこれをやられたら一瞬動きが止まった上に、力のない魔物なら動きを止めることができるだろうな」
紫崎さんが丸太のように泥で固められた左足を動かし振り上げて地面に勢いよくたたきつけた。
バーンと割れる重り。
「わっ」
割れた破片が飛んできた。
当たると思った瞬間、自分でも信じられないくらいものすごいスピードで志向が働いた。
「【当たるな】」
私に向かって飛んできた固まった泥の破片が当たらないように、全身にバリアをしたイメージ、バリアが弾くイメージで呪文を唱えてみた。
その結果、バリアが成功したのか、飛んできた泥の破片は私に当たることなく、別の方向へと飛んで行った。
「……」
紫崎さんがこちらを見て口をあんぐりさせている。
「結界……いや、防御魔法……か?」
紫崎さんがつぶやく。
なるほど。バリアよりはかっこいいかもしれない。結界……。いや、でもイメージはバリアだしなぁ。結界とはちょっと違うかも。
「そんな魔法があるなんて聞いたことがない……」
「え?そうなんですか?風魔法なら、えーっと、空気の幕みたいなのを作って攻撃をはじけたりしないんですか?」
紫崎さんが首を傾げた。
「えーっと?」
「ビルの入り口で、空気が上から結構な勢いで吹き付けられてて、外の暑い空気と、クーラーで冷やされた中の空気を混ざらないようにする?エアーカーテンって言うんでしたっけ?あれの強力なやつなら攻撃を防げたりは……。ん?待てよ、エアーカーテンは人が通れるし、強力にするとそれってエアカッター?あれれ、しかも針のように細いものなら空気に穴をあけて通れてしまう?うーん……」
紫崎さんが笑った。
「エアカーテンか。んー、まぁ似たような攻撃を防ぐ方法はいくつかあるよ。水魔法を使えば火魔法の攻撃を防ぐことが出来たり。ただ、結界や防御魔法のように持続させようとすると魔力の消費量が多くて実用的ではないんだ……っと、その前に、すまない。怪我をさせてしまうところだった」
ぺこりと紫崎さんが頭を下げた。
「いえ、大丈夫なので、大丈夫です」
紫崎さんは頭を上げると首を横に振った。
「結果的に無事だっただけで、怪我をさせてしまったかもしれないという事実はなくならない。うかつだった……土魔法が役に立たないと言われている一つに、土壁の防御力がないと言うのもあったというのに……」
紫崎さんがはっとして頭を下げた。
「す、すまない。土魔法使いの君の前で役に立たないなどと……世間でそう言われているという話であって、俺が有希を役立たずだと思っているわけではなくて……!とはいえ失言だった」
そういえば、紫崎さん雷電さんに失言して突っ込まれていることが何度かあったような……?思ったことをすぐ口にしてしまうタイプなのかな。
でも、それって逆に……。
……もしかして、死語かもしれないと思いつつ「バリア!」




