笑い上戸?
髪がぶわーっと広がってたぶんひどい状態になっていると思う。
慌てて手で押さえて整えたものの……。
「じゃりじゃりだ……」
砂は風くらいじゃ取れないよねぇ……。
「すまない……」
志崎さんがしょんぼりしてしまった。
地面を割っちゃうくらいすごい風魔法が使えるのに、自慢して威張り散らすわけではなく、悪いことをしたと肩を落とす姿。
ギャップ萌えってこういうのを言うんだろうか?
……淳史ならすごいだろとどや顔して、砂まみれにしてしまったことなど気にもしなかっただろうな。……いや、本当、なんで付き合ってたのかな?
「謝らないでください。これで、私の魔法も披露できます」
にこりと笑うと、志崎さんが首をかしげる。
「魔法は見たよ、立派な穴を掘るところを。……あまり無理をして魔力切れになるといけないし……」
人差し指を伸ばし、紫崎さんの方をすいっと小さくなでる。イメージとしては、窓枠に誇りがたまっていないかチェックする侍女頭か、嫁いびりをする姑。
「志崎さんほどすごい魔法は使えないですけど、今なら役立てます。志崎さんも全身真っ白ですし」
指についたすなを見せる。全身黒いから余計に目立つ。
自分の体を見下ろし苦笑しながら、志崎さんが手で服についた砂ぼこりを払う。
「確かに真っ白だな。頭ももしかして白くなってるか?あー、頭じゃりじゃり」
「【クリーン】」
「じゃりじゃり……え?しないぞ?」
志崎さんが全身を確認する。
「え?白くなくなった。手で払っても細かい砂粒が繊維の間に入り込んでなかなか落ちないというのに……」
驚いた顔で私を見る。
「えへへ、どうです?私もちょっとは役に立てるでしょう?【クリーン】」
今度は自分にクリーンをかけた。
「すごいな!すごい、すっかり綺麗になってる、泥もあっという間に落ちて、新品同様じゃないか!」
志崎さんが私の足もとにしゃがんでズボンを見た。
しまった!スライムの酸から守るためのクレイコーティングまできれいに落としちゃった!
「スライムの酸から守るためとはいえ、洗濯が大変そうだなと思って見ていたが、これなら全然問題ないな!本当にすごい!」
褒めてもらえるのはうれしいけれど、ズボンを見ているのはわかるんだけど、しゃがんでじっくり足元を見られるのは……。
「志崎さんも試してみます?」
「魔力に余裕があるならぜひっ!できるんであれば全身!」
全身?……まぁ、できないことはないはず。
「志崎さんを全身【クレイコーティング】」
全身泥人間の完成だ。髪の毛の先1本のこらず泥。顔ももちろん。薄く広げた泥が固まっているけれど、粘土像みたいになっている。
粘土象になってもイケメンだなぁ。とまじまじと顔を見ていたら、ぶはっと口が開いた。
「【クリーン】ごめんなさい、もしかして、息ができなかったですか?」
「あははははは、いや、あはははは、すごいなぁ、なんか、すごい。呪文一つで泥で全部覆えちゃうのかぁ」
めちゃくちゃ笑っている。何かツボに入ったのかな?
「いやー、あはは、本当に、あははははは、楽しい、使い方ひとつで、役立ちそうだなぁ。これ、厚みは変えられないのか?」
厚み?
「動けるようにズボンに薄くクレイコーティングしただろ?もっと、長靴みたいにしっかりと厚みを出したり、えーっと、重りみたいに?やってみてくれないか?」
重り?
「【クレイコーティング】」
まずは志崎さんの右足に長靴のような厚みを持たせて泥で覆い乾燥させる。
「【クレイコーティング】」
次に重りになるようなって言われてもなぁ。と考えた末、一番初めに浮かんだのが囚人が付けるような鉄球だったけれど、さすがに違うよね?と思い直して、丸太のように足を泥……というか粘土かな、もはや……で左足を覆ってみた。
長靴クレイコーティングをした右足を持ち上げる志崎さん。
新しくクレイコーティングの幅が広がり……?!




