別視点 研究所にて
「所長、東京のダンジョンの数は全部で38です」
「現在ダンカリで土、泥、石と出品されているものを落札してもよろしいでしょうか?いずれも第一階層のため送料含めて500円~1500円程度です」
「予算内だ。ダンカリで入手できるダンジョン意外は、探索者の職員がいたな。出張して、第一階層の土を採取して回ってもらおう」
「ダンジョン一覧、用意しました」
ホワイトボードに東京ダンジョンの位置が記された地図が張られた。
地図に、ダンカリで入手可能なダンジョンに赤印が次々に記されていく。
「残るは、この8か所。行けるか?」
「ここは5倍ダンジョンでしょう?レベル1階層でも初級冒険者には荷が重いかもしれません」
「なら、ここは依頼を出すか。いや、依頼内容から何かあると勘ぐられては情報を漏らすようなものか」
「じゃあ、それ以外の7か所なら、行けるか?」
そうして、研究所は都内の5倍ダンジョン以外の土を入手することに成功した。
それから2週間。
「おかしい、魔石に反応する金属は見つからなかった」
「もしかしたら1階層の箱に別の階層の土が混ざっていたのでは?」
「5倍ダンジョンの1階層だったのでは?」
5倍ダンジョンの土を入手すること、2階層、3階層の都内の土も集めること。東京近郊のダンジョンの土も集めること。
1階層でも場所により違う可能性があるため、研究所近くのダンジョンの1階層で場所を変えて土を採取すること。
方針が決まり、新たに動き出した。
「それで、結果、この間の土からどれだけのミスリルが取れたんだ?」
「はい、980gの土から、0.1gのミスリルが取れました」
「約1キロから0.1gか。ミスリル鉱石は国の買取品目だか、土から出るミスリルの扱いはどうなるのか分からないが。国が買い取るとしても、現在の買取り価格は金よりもずっと高い。1g10万はするだろう。国意外への販売が可能となれば、その倍は値がつくだろう」
「ダンジョンから1キロの土を持って来れば1万円~2万円のミスリルが取れるとなれば、1日10キロ持って帰ってくるだけで、月収300万じゃないですか」
「ははは、まぁそうだな。皆が同じことをすれば価格は下がっていくだろうし、そんなに上手い話しではないとは思うが」
所長はそこで言葉を区切って、目を細めた。
「夢は、ある」
研究員が頷いた。
「ですよね。魔石があれば金属の取り出しも用意です。むしろ、鉱石として採掘したものよりも土の状態からのほうが楽かもしれません」
別の研究員が首を傾げた。
「……ですが、ちょっとおかしくないですか?」
「おかしいとは?」
研究員が小さな声で続けた。
「砂鉄って、磁石を引っ付けて砂浜を歩くだけで取れますよね?」
所長があっと何かに気が付いたように目を見開いた。
「ダンジョンが現れて10年。1階層は動員法で義務付けられた時間を潰すために入る者も多い場所。魔石を持ち歩いている者もいる。そして、ミスリルなどのダンジョンさんレアメタルの価値が高いのも周知の事実だ」
他の研究員も気が付いた。
「確かに……土の状態で簡単に手にはいるなら、すでに誰かが手に入れていてもおかしくないですね……」
「特に、ダンジョンの物が一般に売り買いが可能となった今、金になる者はないかと躍起になっている人間は捨てるほどいる」
「それなのに、見つかっていない……確かにおかしい」
研究員が顔を見合わせる。
「それを研究して解明するのが、我々の仕事ですよ!研究員なんですから!」
女性研究員がパンっと手を打った。
「あはは、確かにそうだ。もしかしたら運ばれてきたときの条件によりただの金属がミスリルに変化した可能性だって考えられるんだからな!」
「え?ミスリルを作り出せるってことですか?だったら夢が広がりますね!」
所長がふっと息を吐きだす。
「夢は、ある」
次から主人公周りに戻ります!




