第八十四夜 ―― 形見の大剣と、バノックバーンの奇跡 ――
第八十四夜 ―― 形見の大剣と、バノックバーンの奇跡 ――
王宮の宝物庫。そこには、刃こぼれした一本の「大剣」が、祭壇のように祀られている。
ザルカ王は、その剣の前に跪き、静かに頭を垂れた。
「……アーロンは死んだ。だが、彼の剣はまだ戦っているのだな。オーガスト……彼はついに、父の影を捨て、真の王として覚醒したのか」
サフィアは、王の肩にそっと手を置き、この歴史絵巻の最後の一頁を語った。
◆ サフィアの語り 第八十四夜 ――「意志の継承と、勝ち取った夜明け」
アーロンの死後。バノックバーンの荒野で、オーガスト率いるクヌ軍は圧倒的な数のクナ軍と対峙しました。士気の上がらぬ将兵を前に、オーガストはアーロンの形見である大剣を高く掲げました。
『……諸君、我々はかつてアーロンと共に戦った! 彼の肉体は滅びても、その意志はこの剣に、そして我らの胸に生きている! 今こそ、真の自由を掴み取る時だ!』
民衆と兵士たちは、地鳴りのような咆哮と共に突撃しました。アーロンの魂に見守られた彼らは、不可能と思われた勝利を掴み取り、ついに祖国の独立を勝ち取ったのです。
英雄は死してなお、その国の「礎」となったのでした。
サフィアは語り終え、王の目を見つめた。
「王様。一人の男の『死』が、一国の『生』を創ることがありますの。……恐怖で縛り上げた国は脆く、一振りの『自由の剣』によって容易に崩れ去る。それを、忘れないでくださいませ」
ザルカは、力強く立ち上がり、大剣の柄を握りしめた。
「……ああ、サフィア。余は、民がその命を懸けて守りたくなるような、そんな『自由』を愛する王になろう。アーロンの叫びは、今、余の胸の中でも響いているぞ」
夜の帳が、英雄たちの眠りを守るように、静かに、




