第七十四夜 ―― 七年の涙と、光の帰還 ――
第七十四夜 ―― 七年の涙と、光の帰還 ――
王宮の広間。朝の光が窓から差し込み、暗い影を追い払っている。
ザルカ王は、盲目の王子のように両目を閉じ、静かに語りを待っていた。
「……サフィア。七年か。ワラカの旅よりもさらに長い、暗闇の歳月だな。王子は、その荒野で何を見つける? 枯れ果てた絶望か、それとも……」
サフィアは、王のまぶたにそっと指を触れ、最終夜の語りを始めた。
◆ サフィアの語り 第七十四夜 ――「荒野の再会と、癒やしの雫」
盲目のまま、木の実やベリーを拾い、悲しみの歌を歌いながら七年の月日を彷徨い歩いた王子は、ついに地の果てにある荒野へと辿り着きました。
そこで聞こえてきたのは、かつて自分を魅了した、あの懐かしい歌声でした。
そこには、かつての華やかさを失いながらも、逞しく生きるカマラの姿がありました。彼女の傍らには、王子との愛の証である、男女の双子の子供たちが寄り添っていました。
二人は抱き合い、再会を祝して涙を流しました。
カマラの流した熱い涙が、王子の濁った両目にこぼれ落ちると――奇跡が起きました。王子の視力が、かつてよりも清らかに、鮮明に回復したのです。
王子は、カマラと二人の子供を伴い、自らの国へと帰還しました。
芽キャベツを盗んだ父の罪も、塔に閉じ込められた孤独も、すべては美しい家族の肖像を描くための影に過ぎなかったのです。
サフィアは語り終え、王の前に芽キャベツのサラダを差し出した。
「王様。激しい飢えから始まった物語は、最後には豊かな愛の食卓へと繋がりました。……どんなに暗い茨の道も、歩みを止めなければ、いつか光差す故郷へと帰り着けるのですわ」
ザルカは、芽キャベツを一粒口に運び、その苦味と甘みをゆっくりと味わった。
「……カマラ、か。苦難を経て、自らの手で幸せを掴んだ強き娘の名だな。サフィア、余もこの芽キャベツのように、小さくとも力強い生命力を、この国に根付かせようと思うぞ」
夜明けの風が、家族の笑い声のように、穏やかに王宮を吹き抜けていった。




