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命懸けの喧嘩 その2


切り裂く風(アスラネヴィータ)


 先ほどまでシグレがいて、爆炎に包まれていた場所から風が巻き起こり、煙が一気に払われた。同時に床を切り裂きながら、風がメグルに襲い掛かる。


「くっ!?」


 メグルは完全に、油断していた。シグレが戦闘不能になったと思い込み、その上で私に炎を浴びせ続けると言う行動に出ていたのだ。私に集中しすぎだね。

 その隙を突かれてメグルには、襲い来る風に対する対処をちゃんとするのは難しい。

 襲い来る風に対し、拳に宿した炎をぶつけて防ごうとしたけど、ダメだった。風は炎を裂きながら、メグルに襲い掛かる。

 メグルは身体を風に切り裂かれながらも、場所を移動しながら身体を守る動きをした事でその攻撃をやり過ごした。

 正直、傷つくメグルの姿は見たくない。シグレも私の気持ちは理解しているはずである。でも、そう言っていられない程に、メグルは強い。だからシグレは、人を傷つける魔法をメグルに向かって放った。傷つけるつもりでやらなければ、逆にこちらが傷つけられてしまう。それを私に伝えるために、だ。


「……分かったよ、シグレ」


 私は、爆炎で純白のドレスにすすをつけた姿のシグレを見て、呟いた。

 メグルを救うため、シグレを失ったりしたら全てが終わってしまう。そうならないよう、私も本気で行く。


闇へ引き込む悪魔の手(メギドメルド)


 私は魔法を発動させた。私の頭上に紋章が浮かび上がり、その紋章の中から黒い手が出現する。それも、右手と左手の、2つ。それぞれの手の大きさは、人2人分程だ。とても大きく、色が色だけにちょっと不気味。

 そんな巨大な手の1つ。右手は、私に襲い掛かっていたメグルの炎を掴み取り、握りつぶして消し去って見せた。

 残る左手はメグルに向かって伸びていく。

 今、風によって服を切り裂かれ、肌に傷を作って血を流しているメグルに対し、容赦のない挟撃である。


「調子に、乗るな!炎神の加護(イフリートフォージ)!」


 メグルがすさまじい魔力を解放して、その魔法を発動させた瞬間。メグルの身体に炎が宿った。その炎はメグルを包み込み、拳に既に宿していた炎が、更に激しく燃えさかって威力を増す。続けてその背中に炎の翼がはえた。燃えさかる炎の翼は、周囲に火の粉を飛ばしながら大きく広げてとてもキレイ。

 炎を宿したメグルは、迫り来る黒い手に向かって、炎を宿した手をかざした。そしてその手と手が触れ合う直前に、黒い手が発火。一瞬にして消し炭となって塵と化す。


「こうなったら、もう知りません。本当に消し炭にしてさしあげますので、お覚悟を」

「て言う事は、本当はそんなつもりなかったって事?」

「貴女達はご主人様の駒となり、ご主人様のために生きていく存在となるはずでした。当初の予定とは少し変わりましたが……煙の魔女はもうこちらの手の中。風賢も、ご主人様が手に入れるはず。貴女達はオマケなので、処分しても問題ないでしょう。魔法に関して少し特異な所があるようですが、個人的にも貴女は消したい。だから本気で行かせていただきます」

「ああ、そう。それじゃあ私も、本気で行くから。今更泣いたって、もう許さないよ、メグル。シグレを傷つけた罰は、受けてもらうから」

「ほざいていなさい。本気になった私の炎は、もう止められません。全てを飲み込み、全てを燃やし、全てを消し炭にし、何も残さない。貴女という存在は、本当に存在したのかどうかも分からなくなるのです!」


 叫びながら、メグルが私に向かって突撃してきた。炎の羽を羽ばたかせ、低空を飛んでこちらに向かってくる。

 彼女が通った後は炎が軌跡を残し、まるでロケットか何かが通った後のようになっているのが面白い。なんて思っている場合ではない。メグルの炎は、メグルの言うようにこれまでとは次元が違う。


切り裂く風(アスラネヴィータ)!」


 シグレが私を援護するため、再び魔法をメグルに向かって放った。

 床を切り裂きながら進んでいく風は、メグルに向かって一直線。でもその途中で、炎の熱気に負けて散ってしまった。

 メグルはもう、シグレの事を見向きもしない。完全に私に狙いを定めている。

 さて、どうしよう。メグルの炎は強力だ。恐らく下手な氷の魔法は、相性的に通じない。それはディシアとの戦いで痛感した事だ。


星の重力(グラビティドゥニア)


 なら、氷の魔法を使わなければいい。

 私は迫り来るメグルに向け、魔力を大きく解放。辺りは私の魔力によって一瞬にして溢れかえり、そして闇の魔法を発動した。

 するとメグルの頭上に、一つの黒い塊が出現した。突如として、メグルの動きが止まる。そしてメグルが生み出した炎が床に吸い寄せられるようにしてひれ伏し、圧力によって消え始めた。その圧力によって、床もベコベコと潰れ始めている。普通は潰れる事のない、石の床が潰れだしているのだ。


「な、なにを……した、のですか!」


 立っているのも辛そうなメグルが、苦し気に私を睨みつけながら尋ねて来る。

 普通なら、地面に張り付いてる所なのに。そうならないのは、メグルが発動させ、自身に宿した加護のおかげだろう。その加護は、彼女の身を守るの当時に、身体能力を飛躍的に高めている。


「単純に、少し高位な魔法を使っただけだよ。星の重力(グラビティドゥニア)闇へ引き込む悪魔の手(メギドメルド)と同じく、島のヒーローカカウスマンに出てくる魔法で、絵本の中で島を潰した魔法……」

「っ……!こんな、威力を……!」

「メグルが本気を出したんだもん。私も本気を出さなきゃ。でも、それで本気なの?」

「──そんな訳、ないでしょう。爆発的な加速(エクスアクセル)


 メグルが、ディシアも使っていた魔法を発動させた。メグルの足元に炎が巻き起こり、メグルを一気に超加速させて私に迫り来る。加速した彼女に、重力はきかない。一気に駆け抜けられ、炎を纏ったメグルが私に襲い掛かってくる。


「焼け焦げなさい」


 私の目の前にまでやってきたメグルが、容赦なく拳を振り上げる。そして、炎の拳が私に襲い掛かった。

 その瞬間、頭の中にいつもの声が響いた。その声に導かれるがままに、私はその言葉を──魔法を発動させる。


魔力の沈黙(サレストゥリヤ)

魔力の沈黙(サレストゥリヤ)



 その魔法が発動した瞬間、メグルの炎は突然消え去ってしまい、不発に終わった。

 その魔法は、マジックキャンセラーの如く、周囲の魔法を打ち消してしまったのだ。でもマジックキャンセラーと違うのは、メラヴィス語を用いたメグルの魔法までもを打ち消してしまった事。


「なにっ!?」

「どうしたの?私を燃やすんでしょう?」

「は。え?加護が……!」


 消えたのは、炎の拳だけではない。メグルの身体を纏っていた炎までもが突然消え去り、メグルは狼狽え始める。

 私はその隙を狙い、メグルに襲い掛かった。胸倉を掴み、勢いよくダイブする。でも力加減が分からなくて、勢いよくメグルの頭に頭突きしてしまった。


「いっ!?」

「っ!?」


 一瞬頭が真っ白になり、頭が痛くなる。それはメグルも一緒のようで、メグルは背中から床に倒れてしまった。彼女にのしかかる形で、私も一緒に倒れこむ。


「この……退きなさい!」

「嫌、だ!」


 メグルに馬乗りになった私の顔面に、メグルの手が伸びてきた。そして私を上から退かそうとしてくる。

 それでも抵抗していると、今度は殴られた。でもその拳に魔法の力は宿っていない。ただの物理攻撃だ。

 そっちがその気なら、やってやろうじゃない。私もメグルの顔面めがけて、パンチをお見舞いしてやった。こっちはマウントを取っているんだ。やりたい放題できる。


「この……退け!」


 と油断していたら、胸倉を掴まれて横に倒されてしまった。そこにメグルが馬乗りになってきて、今度は私がマウントを取られてしまう。


「ただの、ガキが!オレを苦戦させやがって!お前は一体、なんなんだよ!」


 私を殴りながら、メグルの口調が私の知っているメグルに戻って行った。興奮しているせいなのか、それとも昔を思い出してくれたのか……分からないけど、嬉しい。

 だから私は、殴られながら笑った。


「私の名前は、シェスティア・タラクティ!メグルの、家族だ!」

「っ!」


 メグルの拳が、止まった。その隙を狙い、今度は私がメグルを横に倒してマウントを取る。

 そして、力を籠めてその顔面に拳を振り下ろした。拳が顔に当たるのと同時に、メグルの中へと入り込む事に成功する。

 喧嘩は、もうおしまい。すぐに解放してあげるから、そしたら仲直りしよう。

 メグルには、話したい事がたくさんあるんだ。何から話すか迷うけど、とりあえずは解放するのに集中しよう。


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