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無間のハルカ・カナタ~死にすぎて致命傷でも平気なぼくは、生きるほど過去に戻る~  作者: マシナマナブ
第五章

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黒の暗殺者

 けれど、奴はまだ知らない。ぼくが何度黒の暗殺者(シャドウリーパー)と戦い、その動きを体に叩き込んできたのかを。


 勝負は、初撃。


 暗殺者が間合いを詰めた。

 刃が真っすぐ心臓を狙ってくる。この一撃は、ぼくの体が覚えている。

 ぼくは身をずらし、剣を受け流す要領でスタンガンの先端を刃に合わせた。

 電極が刀身に触れ、ばちりと青白い火花が散る。

 暗殺者が一瞬、手を引いた。

 その隙に、ぼくは腕を突き出す。


 届く――。


 電極は黒い上着をかすめた。

 奴は身を翻しながら、もう次の一太刀を繰り出していた。

 ぼくはとっさに体をひねる。

 胸元が裂け、焼けるような痛みが走った。

 深く斬られはしたが、急所ではない。まだ動ける。

 だが、初撃では決められなかった。


 暗殺者の動きが明らかに変わった。

 もう、ぼくをただの一般人だとは思ってくれない。

 あとは何秒、持ちこたえられるか。

 これまでの最高記録は、五秒だ。


 再び迫る切っ先。

 飛び退くと、顎のすぐ下を刃が通った。

 タイミングを合わせて繰り出したスタンガンは、足で蹴り上げられた。

 落とすものか。

 握り直しながら後ろへ跳ぶ。

 着地したときには、もう次の刃が迫っていた。

 速いだけじゃない。ぼくが逃げる先を、読まれている。


 暗殺者と何百回も戦った経験は生きている。

 そうでなければ、もうとっくに死んでいる。

 それでもまだ届かない。

 レヴェリアの強化者(ブースター)すら上回るような身体能力だ。

 だが、奴は人外の化け物ではない。これまでの言動からも、むしろ理性的な人間を思わせる。

 そしてぼくがどこにいても必ず見つけ出し、殺しに来る。

 一体どうやって……


 刃をかわし、横へ逃れる。

 ポケットからスマホが飛び出し、地面に落ちた。


 ――こいつか?


 いつも正確に居場所を突き止められる理由。

 ぼくのスマホの位置情報を知られていたのだとしたら、説明がつく。

 考えかけたところで、暗殺者の刃が来る。

 ぼくは刺されることを覚悟でスタンガンを突き出すと、奴は反応し、一歩後退した。


 他人のスマホの位置情報を、そう簡単に知ることはできない。

 仮に居場所を突き止めたとしても、ヘリでここまで来たぼくたちに追いつくには、それなりの移動手段が必要になる。

 そんなことができるとしたら、これは個人的な恨みなんかじゃない。こいつの背後には巨大な組織がある……


 いや、今は考えるな。

 一秒でも長く生き延びるんだ。


 退きながらスタンガンを構え直す。

 そろそろ五秒。相手の動きもさらに速くなっている。

 相手の狙いは見えるのに、身体がついていかなくなってきた。


 一撃だけでも――。


 そこで足がもつれ、体が傾く。

 踏ん張ろうとしたわずかな隙に、暗殺者が懐に飛び込んできた。


 いけない。

 かわせない。


 ゴッ!


 その瞬間、鈍い音がして暗殺者の首が突然横に弾かれた。

 ハルカが投げた大きな石が、奴の横顔に命中したのだ。


「ナイス、ハルカ!」


 暗殺者がわずかによろめく。

 令嬢の投石に救われるなんて、思ってもみなかった。

 でも、この隙だけは逃さない。

 ぼくは即座に地面を蹴り、その懐へ飛び込んだ。

 そしてボタンを押したまま、暗殺者の首元にスタンガンを押し当てた。


 バチッ!


 放電音が弾けた。

 暗殺者は体を痙攣させ、その手から刃物が落ちた。

 初めてだ。あの刃を、手放させた。

 ぼくはすぐにそれを遠くに蹴り飛ばす。

 奴は倒れることはなく、片膝をついた。

 ぼくもそれなりの傷は負ったが、まだ生きている。

 そのときだった。


 ギュリオォン、ギュリオォン。


 地面に落ちたスマホが鳴った。

 耳障りで、何度聞いても慣れることのない、現実の終わりを告げる音だ。

いつも読んでくださってありがとうございます!

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