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無間のハルカ・カナタ~死にすぎて致命傷でも平気なぼくは、生きるほど過去に戻る~  作者: マシナマナブ
第五章

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ムサシのミタケ

 御嶽山へ向かう間、ぼくたちはこれまでのことを話した。


「トワには不思議な力があるんです。進むべき道を教えてくれる。おかげで、私も何度か危険を避けることができましたわ」


 ハルカによれば、両親が亡くなった後、何度か命を狙われたことがあったらしい。

 ハルカを目の敵にしていた親戚――天宮(アマミヤ)玲音(レオン)と天宮(アマミヤ)円香(マドカ)が相次いで他界してからも、彼女が危険に晒されたことがあったようだ。

 そのたびにトワが事前に察知し、ハルカに教えてくれたという。


『トワ、ママを守った』


 頭の中に、得意げな声が響く。


「そうか。トワ、偉いな」


『わあい、褒められた!』


 レヴェリアで生まれたトワが、現実世界でもハルカを守ってくれた。

 今こうしてハルカが元気な姿でいられるのは、トワのおかげでもあるのだろう。


「御嶽山が見えてきましたな」


 瀬葉の声に、ぼくは窓の外へ目を向けた。

 連なる山々の中に、深い緑に覆われた山が見えてくる。

 標高九百二十九メートルの武蔵御嶽山。その山頂には、大きな神社が鎮座している。


「そういえば、御嶽山にはヤマトタケルにまつわる伝承がありましてな」


「日本神話の?」


「ええ。東征の途中、この山へ入ったヤマトタケルは、突然深い霧に包まれ、道を見失ってしまったそうです」


 霧――。

 ぼくは思わず、その言葉に反応した。


「そこへ、どこからともなく一頭の白い狼が現れ、ヤマトタケルを危難から救ったと伝えられております」


「白い狼……」


「その狼が、山頂の武蔵御嶽(ムサシミタケ)神社に祀られている大口真神(オオクチマガミ)ですな。この辺りでは『おいぬ様』とも呼ばれております。さまざまな災いから人々を守る、魔除けの神様として信仰されてきました」


「魔除けの神……」


 胸の奥で、何かが引っかかった。

 

 幼い頃、ぼくはこの山で三日間、姿を消した。

 その三日間に何があったのか、今もはっきりとは思い出せない。

 ただ、あの三日間に、何か不思議なものに触れたような気がする。


 ヘリはあっという間に御嶽山の上空まで飛び、山頂の神社から少し離れた、緊急離着陸場に着陸した。

 そこは尾根の上に開けた場所で、遠くまで見渡すことができた。


「カナタ様、これからどちらへ向かわれるのですかな?」


 瀬葉に尋ねられ、ぼくは辺りを見回した。


「それが、はっきりとは分からないんだ」


 目的地は、幼い頃にぼくが神隠しに遭った場所だ。

 だが、それがどこなのかも覚えていない。

 両親の話では、登山道を歩いていたはずなのに、突然姿を消したらしい。


『パパが昔行ったところに行きたいの?』


 するとトワの声が聞こえた。


『それならたぶん、こっちだよ』


「こっちって、どっち?」


 トワは指を差しているのかもしれない。

 だが、声しか聞こえないぼくには、分からない。


『えっとね……今、パパが見てる方の反対!』


「反対?」


 振り返ると、小道があった。

 ぼくはハルカの顔を見る。


「でしたら、行ってみましょう。トワはいつも、私に進むべき道を教えてくれましたわ」


 確かにトワには、生まれた時から不思議な力があった。

 ここは二人を信じよう。残された時間も少ない。

 ぼくたちはトワの言葉に従い、山の中へと歩き始めた。

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