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無間のハルカ・カナタ~死にすぎて致命傷でも平気なぼくは、生きるほど過去に戻る~  作者: マシナマナブ
第五章

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家族の再会

「そうですわ。カナタさんになら……聞こえませんか? トワの声が」


 ハルカに言われ、ぼくは意識を澄ませる。

 すると――頭の中に、小さな声が響いた。


『パパ?』


「トワ?」


『パパ! 会えて嬉しい』


 今度は、はっきりと聞こえた。


「トワも、すっかりお話しできるようになりましたわ。ですが、レヴェリアで生まれたトワには、現実世界の体がありません。それでもこうして、私たちの中に存在しています」


「本当に、あのトワなのか?」


『そうだよ、パパ。トワ、ずっとママの中にいたの』


「トワと過ごした時間はもう三年になりますわ。これは誰にも話せない私だけの秘密だったのですけれど、カナタさんなら分かってくださると思っていました」


 赤ん坊だったトワがもうこんなに話せるなんて……思わず胸の奥が熱くなる。


「トワもパパに会えて良かったですわ」


「……あの」


 そこへ割って入った瀬葉の声に、ぼくたちは振り返った。


「先ほどから、お二人は誰とお話しになっているのですかな?」


「あ……」


 そうか。瀬葉には聞こえていないのか。


「トワの声は、ぼくたちにしか聞こえないみたいです」


「トワ……というのは?」


「ぼくたちの子供です」


「……」


 瀬葉は額に手を当てた。

 さすがに理解が追いつかないようだった。


 再会したハルカやトワと話したいことはいくらでもある。

 けれど、今は話し込んでいる場合ではない。


「ハルカ。一つ、お願いがある」


「なんでしょう?」


「今から一時間以内に御嶽山へ行かなきゃならないんだ。協力してもらえないかな」


 ハルカはすぐに頷いた。


「もちろんですわ。カナタさんのお願いとあれば喜んで。それは、とても大切なことなのでしょう?」


「ああ」


 すると、それまで困惑していた瀬葉が口を挟んだ。


「青梅の御嶽山ですかな? ここからですと、車では二時間ほどかかりますな」


「それじゃ間に合わない。どうしても一時間以内に行かなきゃならないんだ」


「でしたら――」


 瀬葉の表情が変わった。


「天宮家の自家用ヘリを出しましょう」


「ヘリ?」


「ええ。ヘリコプターなら、御嶽山付近まで二十分ほどで着きます。すぐに手配すれば、十分間に合うでしょう」


 自家用ヘリが普通に出てくるあたりは、さすが天宮家だ。


「瀬葉さん、お願いしますわ」


「かしこまりました」


 瀬葉は一礼すると、すぐにどこかへ連絡を入れた。


「御嶽山にはヘリコプター緊急離着陸場がございます。そちらへ連絡して、着陸の許可を取りました」


 ここまで簡単に事を進められるなんて……

 ぼくは改めて、天宮家の力を思い知らされた。


 ぼくたちは瀬葉に案内され、屋敷の裏手へ向かった。

 そこには大きな格納庫があり、その中に一機のヘリコプターが収められていた。


「すごいな……本当にヘリがあるんだ」


「さあ、急ぎましょう」


 瀬葉が慣れた様子で格納庫へ入っていく。


「あれ? 操縦士は?」


「もちろん私ですぞ」


 瀬葉がさらりと言って、胸を張った。


「瀬葉さん、ヘリの操縦ができるんですか?」


「ええ。グライダーからクルーザーまで。一通りの免許は取得しておりますので」


「一通りって……」


 この人はいったい何者なんだ。


 牽引車に引かれたヘリが、格納庫から出てきた。

 すぐに瀬葉が操縦席に乗り込み、続いてぼくとハルカもヘリコプターへ乗り込んだ。

 やがてローターが回転を始めた。

 回転音は瞬く間に轟音へと変わり、巻き起こった風が周囲の草木を激しく揺らす。


「では、参りますぞ」


 瀬葉の声とともに、機体がふわりと地面を離れた。

 目指すは、武蔵御嶽山。

 幼いぼくが三日間、神隠しに遭った場所だ。

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