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無間のハルカ・カナタ~死にすぎて致命傷でも平気なぼくは、生きるほど過去に戻る~  作者: マシナマナブ
第五章

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黒髪のハルカ

 気がつくと、ぼくは駅前の総合スーパーに立っていた。

 ぼくは、レヴェリアでマリスとなり、ヨミやマドカと戦い、力尽きた。

 そしてまた、現実世界へ戻ってきたのだ。

 時刻は、黒の暗殺者(シャドウリーパー)に刺される一時間と少し前。

 この一時間で、今度こそこの無限ループを前に進める。


『セイとシがマジわるトコロ、シンジツをテらすヒカリがウまれる。ヒカリはムサシのミタケにて、オトをアキらかにする』


 ぼくは、預言者ミコのお告げを思い出した。

 まだすべての意味が分かったわけではない。

 だが、一つだけ心当たりがある。


『ムサシのミタケ』


 これはおそらく、武蔵(ムサシ)御嶽(ミタケ)山のことだ。

 東京都青梅市にある霊峰で、幼い頃、ぼくは両親とそこを訪れたことがある。そして――三日間の神隠しに遭った。

 レヴェリア。マリス。そして、幼い頃の神隠し。

 これらはきっと、どこかで繋がっている。できることなら、今すぐ御嶽山へ行きたい。

 だが、ここから御嶽山までは、電車を使っても三時間以上かかる。

 ぼくが黒の暗殺者(シャドウリーパー)に襲われるまで、あと一時間。

 間に合わない。何か手はないだろうか……

 そこで、一人の大切な人の顔が浮かんだ。


 そうだ。ハルカだ。


 ぼくはすぐにスーパーを出て、ハルカの家へ向かった。


 駅から少し離れた場所に、大きな門と高い塀に囲まれた屋敷がある。

 門に掲げられた表札には『天宮』の文字。

 ここで間違いない。

 少し緊張しながら、インターホンを押した。


『どなたですかな?』


 聞き覚えのある男性の声だった。確か、瀬葉だったか。


「時任(トキトウ)彼方(カナタ)といいます。遙香(ハルカ)さんはいらっしゃいますか?」


『少々お待ちくださいませ』


 しばらくすると、門が勢いよく開いた。


「カナタさん!?」


「ハルカ!」


 そこにいたのは、目にいっぱいの涙を溜めたハルカだった。

 彼女の髪は、銀色ではなく長い黒髪になっていた。


「本当に……カナタさんですわ!」


 ハルカが駆け寄ってくる。

 今のハルカは車椅子に乗っていない。誰かの支えも借りていない。

 彼女は自分の足で走っている。

 ぼくのあの戦いは、無駄ではなかった。


「またお会いできるなんて……夢のようですわ」


 ハルカはそのまま、ぼくを抱きしめた。


「ああ。ぼくもだよ」


 ぼくもハルカの背中へ腕を回した。


 温かい。


 こうして現実のハルカを抱きしめられるなんて、ぼくにとっても夢のようだった。


「あれから、霧の街(ミラージュヴィル)を襲っていたマリスたちは、突然散り散りになって去っていきました」


 腕の中で、ハルカが話し始める。


「そして、カナタさんもいなくなってしまいました。ですから、きっとカナタさんが街を救ってくださったのだと――」


「まあ……いろいろあってね」


 何から話せばいいのか、自分でも分からない。


「コホン」


 背後から、わざとらしい咳払いが聞こえた。

 振り返ると、瀬葉が、なんとも言えない表情でぼくたちを見ていた。


「お嬢様。こちらの方は……?」


「ああ、瀬葉さん」


 ハルカはぼくから離れると、何のためらいもなく答えた。


「カナタさんですわ。私の旦那様です」


「……」


 瀬葉が固まった。


「だ、旦那様……ですと?」


 その顔から、見る見るうちに血の気が引いていった。


 ハルカは改めて瀬葉へ向き直る。


「瀬葉さんには、まだお話ししていませんでしたわね。私、カナタさんと結婚しているのです。正確には、レヴェリアにいるもう一人の私が、ですけれど」


「結婚!? お嬢様が!?」


 瀬葉が目を見開く。

 まあ、無理もない。瀬葉にとっては、ぼくはまったくの初対面だ。

 しばらく呆然としていた瀬葉だったが、やがて何かに気づいたように手を打った。


「なるほど。レヴェリアというのは、ゲームか何かのお話ですな?」


「違いますわ」


 ハルカが即座に否定する。


「レヴェリアは本当に存在する世界ですわ。それに、向こうにいる私も、間違いなく私です」


「は、はあ……」


「それどころか、私たちには子供もいますわ」


「こ、子供ッ!?」


 瀬葉の目がさらに見開かれた。

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