↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無間のハルカ・カナタ~死にすぎたので、致命傷くらいなら平気です~  作者: マシナマナブ
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/50

ぼくの正体

 ヨミが興味深そうに、ぼくと鉄格子の向こうのマリスを見る。


「今のは、マリスがカナタを助けたように見えたね。不思議だな。カナタ、君にはマリスの友達でもいるのかい?」


 ヨミはうずくまるマドカへ目を向けた。


「それにしても、マリスを操る人間が、マリスにやられるとはね。さすがに油断しすぎじゃない?」


「マリスには、檻の中で大人しくしているよう命じてありましたの。それなのに、なぜ……」


「命令には従ってるよ。檻から出てないし、暴れてもいない。ただ君の頭を掴んだだけだ」


「……」


「まあとにかく――」


 ヨミは再びぼくへ目を向けた。


「マドカの能力を失うわけにはいかない。早く治癒の力を持つレムウォーカーのところへ連れていかないと、手遅れになるかもしれない。だからカナタ。悪いけど、大人しく檻に戻ってくれないかな」


 そう言われて従うはずがない。逃げるなら、今しかない。

 ぼくは床を蹴った。

 その瞬間――。


 ヒュンッ!


 鋭い何かが左脚を掠めた。

 一歩踏み出した途端、左脚から力が抜ける。


「――っ!」


 ぼくは体勢を崩し、床へ倒れ込んだ。

 左脚に力が入らない。

 床には一本のナイフが転がっていた。


「だから言っただろ。俺には先が見えるって」


 ヨミの手には、次のナイフが握られている。


「膝の裏を狙って、腱を切った。君がどちらへ逃げるのか分かっているし、ナイフをどこに投げれば効果的なのかもシミュレーションできる。投擲なら、外さないよ」


 マドカの支配の力は封じられたが――ヨミも厄介すぎる。


「俺には、騙しも不意打ちも通じない。君が妙な真似をしようとした瞬間、俺は確実に急所を刺すよ。これはただの脅しじゃない」


 ヨミがゆっくりと近づいてくる。


「できれば殺したくないんだ。もっと時間があれば、じっくり話し合いたかった。でも今は、マドカを治療しないといけない」


 ヨミが手を差し出す。


「分かってくれないかな」


 分かるわけがない。

 ここで捕まれば、ハルカを危険に晒すことになる。


「うおおおっ!」


 ぼくは動く右脚だけで床を蹴り、ヨミへ飛びかかる。

 しかし、ぼくが飛びかかるより早く、ヨミの腕はすでに動いていた。


 ドッ!


 胸に衝撃が走った。

 見るとナイフが深々と胸に突き刺さっていた。


「……がっ」


 口の中に鉄の味が広がり、血が溢れた。

 ヨミは静かにぼくを見下ろしていた。


「残念だよ。俺は同じことは二度言わない」


 息を吸おうとしても、うまく吸えない。

 肺をやられた。これは致命傷だ。

 痛みは平気だが、この状態では一分も持たないだろう。

 その時――。


「カナタさん……」


 背後から声がした。

 鉄格子の隙間から、一本の触手が伸びてくる。あのマリスだ。

 細長い触手が、ぼくのすぐそばまで伸びていた。何をするつもりなのかは分からない。それでもぼくは迷わず、その触手を掴んだ。


 ジュウッ――。


 肉の焼けるような音を立てて、触れたところからぼくの皮膚が溶けていく。

 だが、不思議と痛みはなかった。それどころか、心地よささえ感じる。

 まるで、大切な誰かと手を繋いでいるような感覚だった。


「おい、何だ、それ?」


 ヨミの声が聞こえた。

 ぼくの手は溶け続け、指がなくなり、手のひらが崩れていく。やがてぼくの腕とマリスの触手の境目がなくなった。


 繋がっている。


 ぼくと、マリスが一つに繋がっている。


「……おかしい。何度シミュレーションしても、先が読めない……理屈では説明できないことが起きているのか?」


 ヨミの声から余裕が消えた。

 黒い影が腕から肩へ、そして全身へと広がっていく。ぼくの体から輪郭が失われ、黒い影のような姿へと変わっていった。


「カナタ……君は、本当に人間なのか?」


 ヨミのその言葉を聞いた瞬間、これまで抱えていたいくつもの疑問が頭の中で繋がった。


 なぜ、ぼくはレヴェリアへ来るたび、いつもマリスたちの中で目を覚ますのか。

 なぜ、ぼくにはマリスの毒が効かないのか。

 なぜ、他のレムウォーカーたちが持つような特殊な力が、ぼくにはないのか。

 そして、なぜ――マリスにしか効かないはずのマドカの力が、ぼくには通じたのか。


 全部、一つの答えに繋がっている。

 ぼくはレムウォーカーじゃない。


 ――マリスウォーカーなんだ。

いつも読んでくださってありがとうございます!

『面白い』『続きが気になる』と思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

その一つ一つが、次の展開をより面白くする力になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。