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無間のハルカ・カナタ~死にすぎたので、致命傷くらいなら平気です~  作者: マシナマナブ
第四章

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自作自演

 ヨミは何でもないことのように話し始めた。


「そう、やってることは単純だよ。マドカにマリスを動かしてもらい、街を襲わせる。そこへ光の街(ルミナスヴィル)の軍が颯爽と現れ、マリスを撃退する。まあ正確には、マドカにマリスを撤退させてもらうだけだけどね」


「自作自演……」


「そういうこと」


 ヨミは楽しそうに笑い飛ばした。


「自分たちだけではどうにもならなかったマリスを、光の街(ルミナスヴィル)の軍が追い払ってくれた。そうなれば、みんな俺たちに感謝するだろ? 光の街(ルミナスヴィル)に加わりたくなる」


 ようやく分かった。


「……そうやって、街を大きくしてきたのか」


「まあね」


 ヨミの統治する光の街(ルミナスヴィル)は、いくつもの集落を取り込んで大きくなった。

 ヨミの評判がよく、彼を頼って人々が集まってくるからと聞いていたが、裏にはこんなカラクリがあったのだ。


「じゃあ、援軍を送ってくれる話も……」


「そう、同じことだ。そもそも光の街(ルミナスヴィル)に、マリスの大群を撃退できるような戦力なんてないよ。見せかけだけの軍だから。第一、戦う必要がないからね」


「だから、襲撃を早めたのか……」


「そう、正解」


 ヨミが人差し指をぼくに向けた。


「本来の予定では、援軍が到着するのは一か月先だった。だけど、俺たちが来るより早く、マリスに街を襲わせたかった。だから予定を変更した」


 ヨミは悪びれることなく話を続ける。


霧の街(ミラージュヴィル)が十分に追い詰められたところで、俺たちが到着する。そして、マリスが撤退する。俺たちは救世主だ。きっと俺の申し出を受け入れてくれるだろう」


 つまり、霧の街(ミラージュヴィル)の人々はマリスから守ってもらうために、光の街(ルミナスヴィル)の傘下に入る……


「戦わずして、街が一つ手に入る」


「……なんて奴だ」


 そのために街が被害を受けることなど、ヨミにとっては計算のうちなのだろう。


「褒め言葉として受け取っておくよ。孫子曰く――『戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり』」


 そして、いつもの気さくな調子で付け加えた。


「戦争なんて、まともにやるもんじゃないよ」


 そしてヨミはぼくの目を見た。


「さて、なぜ君にこんな話をしたと思う? それは、君にもこっちへ来てほしいからさ」


「……ぼくに?」


「俺は別に、人を殺したいわけじゃない。街を滅ぼしたいわけでもない。欲しいのは領土と人。できるだけ多く、手に入れたいんだ」


 やはり、ゲームの話をしているように聞こえる。


「レムウォーカーは貴重だ。そして、君は強い」


「だから仲間になれと?」


「うん。俺のやり方を理解してくれるなら、仲間として歓迎するよ」


「あら。それは困りますわ」


 そこでマドカが割って入った。


「カナタさんは、仲間ではありませんの。わたくしの大切な僕です」


「固いこと言うね」


 ぼくは苦笑するヨミを見て、言葉を挟んだ。


「……もし、断ったら?」


「まあ、分かるだろ?」


 ヨミは変わらない調子で答えた。


「ここまで知った君を、そのまま帰すわけにはいかない。あるいは、本当にマドカの力が君に効くなら――永久に、自分の意思を持たない操り人形になってもらうしかないかな。不本意だけど」


 マドカがニヤけながらぼくに一歩近づいた。


「ずっとわたくしの僕として、大切にして差し上げますの」


 本心では、こんな奴らの仲間になるなんて冗談じゃない。

 だが、ここは冷静に考えよう。

 今のぼくには、意地やプライドなんかより、ずっと大切なものがある。


「……分かった。協力してもいい」


「お?」


 ヨミの表情が明るくなる。


「ただし、条件がある」


「聞こうか」


「ハルカとトワには手を出さないでくれ。二人の命を保証してほしい」


 ヨミは少し考え、あっさりと頷いた。


「うん。俺としては、それで構わないよ」


「ヨミ!」


 マドカがすぐさま声を上げた。


「それでは困りますの! ハルカを葬ることが、わたくしの目的なのですから。それでは、あなたと手を組んだ意味がありません」


「あちゃあ……」


 ヨミが困ったように頭を掻く。


「どうしても駄目?」


「どうしてもです」


 マドカはきっぱりと言い切った。


「それに――」


 そして、ぼくを見て冷たく微笑む。


「あなたは何か勘違いしていませんこと?」


「……え?」


「あなたに、条件を出す権利なんてありませんわ」


 マドカの赤い瞳が、妖しく輝いた。


「だってあなたは――わたくしの僕なのですから」

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