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無間のハルカ・カナタ~死にすぎたので、致命傷くらいなら平気です~  作者: マシナマナブ
第四章

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開戦

 霧の街(ミラージュヴィル)に緊張が走った。

 散らばっていたマリスは次々と合流し、その数は千を超えていた。

 見渡す限りの黒い異形。

 それらが一斉に霧の街(ミラージュヴィル)を目指して進んでいる。

 そして、マリスが通り過ぎた土地には毒が残る。

 大地は黒く染まり、植物の育たない死の土地へと変わっていく。

 千を超えるマリスの後ろには、そんな黒い大地がどこまでも続いていた。

 それはまるで、世界を黒く塗り潰す死の行進だった。


 ぼくも、ただ待っていたわけではない。

 この大群を操っているレムウォーカーがどこかにいる。

 ミコの予知を信じ、兵士たちと手分けして周辺を探し回った。

 だが――見つからないまま、その時は訪れた。


「マリスの大群が見えました!」


 見張りの声が響き渡った。

 街の門は固く閉ざされ、巨大な(かんぬき)が下ろされる。

 兵士たちは武器を手に壁の上へ集まり、ぼくもそこから外を見下ろした。


「……すごい数だ」


 霧の向こうから、黒い影が次々と現れる。

 マリスは、たった一体でも人間にとって大きな脅威だ。

 それが今、千体を超える大群となって目の前にいる。

 黒い異形の群れは途切れることなく押し寄せ、やがて壁の外を埋め尽くした。


「来るぞ!」


 ドンッ!


 マリスたちが一斉に壁へ群がり、鈍い衝撃が壁を揺らした。

 鋭い腕を何度も壁へ突き立て、壁の表面を削り取っていく。


「このままでは……」


「大丈夫ですわ!」


 ハルカは街の絵に筆を走らせた。

 壁の削られた部分を筆先でなぞると、傷ついた壁があっという間に修復されていく。


「おおっ!」


 兵士たちから歓声が上がった。


「これなら耐えられそうだ」


 マリスはなおも壁を壊そうと攻撃を続けている。

 だが、削られてもすぐにハルカが直してしまう。

 壁に群がるマリスたちに向け、兵士たちは壁の上から雨のように矢を降らせた。

 壁を登ろうとするマリスもいるが、上までは届かず、途中で滑り落ちていく。

 ゆっくりではあるが、マリスの数も減らせていた。

 マリスといえど、正面からこの壁を突破するのは容易ではなさそうだ。

 ぼくたちが準備してきたことは、無駄ではなかった。

 そう思ったまさにその時だった。


「カナタさん!」


 背後から、兵士の切羽詰まった声が飛んできた。


「西地区の壁から、マリスが次々と街の中へ降ってきています!」


「……え? マリスが、降って……」


 その報告は、にわかには信じられなかった。

 しかし、大群のほとんどが南側の門へ押し寄せてきたため、ぼくたちは南側の防衛に集中し過ぎていた。


「マリスはすでに何体も街に侵入しています!」


「どうやって……」


 西地区の外側には川が流れ、その川岸から高い壁がそびえ立っている。

 街の中に入るには、川を越え、さらにあの壁を登らなければならない。

 それはこの街の入り口である南側の門を突破するより難しいはずだ。


「ハルカ、ここを頼む!」


「カナタさん!?」


「西を見てくる!」


 すぐにぼくは走り出した。

 すでにマリスは街の中にいる。

 一刻も早く止めなければ。

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