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無間のハルカ・カナタ~死にすぎたので、致命傷くらいなら平気です~  作者: マシナマナブ
第四章

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変わりゆく展開

 奇妙な出来事は、それだけではなかった。

 翌日、街の住人から妙な相談があった。


「確かに、昨日の夜は自分の家のベッドで寝たんだ。それなのに、朝起きたら地面の上で寝てて……」


「知らない間に移動していたってこと?」


「いや、家の方がなくなったんだ。跡形もない」


「家が?」


 現場へ向かうと、昨日まで家が建っていた場所には、何もなくなっていた。

 草の生えていない空き地だけが残っている。


「こんなこと、初めてです……」


 一緒に来たハルカも、驚きを隠せない様子だった。


「私が描いたものが勝手に消えるなんて、これまで一度もありませんでしたわ」


 そこでハルカは何か思いついたように、表情を変えた。


霧の塔(ミラージュ)へ行きましょう」


 ぼくたちは急いで塔へ向かった。


 ハルカが確認したのは、街を創るために描いた絵だった。

 霧の街(ミラージュヴィル)は、一枚の絵で創られているわけではない。

 いくつもの区画に分けて描かれた絵があり、それらが組み合わさって、今の街を形作っている。

 ハルカは保管されていた絵を次々と取り出し、床に並べていく。


「……やっぱり、あの家が描かれた絵がありませんわ」


 敷き詰めた街の絵を見つめ、ハルカは呟いた。


「絵がなくなったから、家も消えたってこと?」


「そうかもしれません。ですが、なくなった絵に描かれていたのは、あの家だけではありません。他の家は消えずに無事のようですわ」


 ハルカは残された絵を一枚ずつ確認していく。


「それに、一枚だけではありません。他にも、なくなっている絵があります」


 ハルカが険しい表情で告げた。


「でも一体誰がどうやって……」


 日中、霧の塔(ミラージュ)の入口には人がいて、誰が出入りしたのかも確認されている。

 そして夜になれば入口には鍵が掛けられる。

 誰にも気づかれずに侵入し、絵を持ち出すのは簡単ではない。

 消えてしまった家の住人には、ひとまず別の空き家へ移ってもらうことになった。


 こんなことは前のターンでは起きなかった事件だ。

 だが、異変はそれで終わらなかった。


「マリスが……マリスたちが動き始めました!」


 マリスの動向を監視している兵士が、慌てた様子で報告した。


「散らばっていたマリスが群れを作っています。そのまま、こちらへ向かっているそうです!」


「もう?」


 ぼくは完全に不意を突かれた。

 ぼくの記憶では、マリスの大群が動き始めるのは、まだ一か月以上先だったはずだ。

 それなのに、もう行動を始めている。


「到着まで、どのくらい?」


「まだ正確には分かりません。ですが、このままの速度なら……あと三日ほどかと」


 ぼくの知っている展開とは、明らかに違う。


「ヨミさんに連絡をお願いしますわ!」


 ハルカがすぐに指示を出す。

 光の街(ルミナスヴィル)から援軍を送ってもらう予定だったのは、一か月ほど先だ。

 当然、まだこちらへ向かってはいない。


「急いで使者を出そう。できるだけ早く援軍を送ってもらうんだ」


 ぼくは窓の外へ目を向けた。


 街を守る巨大な壁が、霧の向こうにそびえている。

 予定は早まったが、壁は完成し、兵士も増やした。準備は整っている。

 それなのに、嫌な予感が消えなかった。


 失われたぼくの二時間。

 消えた家と絵。

 そして、一か月以上も早く動き始めたマリス。


 何者かが、未来を変えている。

いつも読んでくださってありがとうございます!

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