変わりゆく展開
奇妙な出来事は、それだけではなかった。
翌日、街の住人から妙な相談があった。
「確かに、昨日の夜は自分の家のベッドで寝たんだ。それなのに、朝起きたら地面の上で寝てて……」
「知らない間に移動していたってこと?」
「いや、家の方がなくなったんだ。跡形もない」
「家が?」
現場へ向かうと、昨日まで家が建っていた場所には、何もなくなっていた。
草の生えていない空き地だけが残っている。
「こんなこと、初めてです……」
一緒に来たハルカも、驚きを隠せない様子だった。
「私が描いたものが勝手に消えるなんて、これまで一度もありませんでしたわ」
そこでハルカは何か思いついたように、表情を変えた。
「霧の塔へ行きましょう」
ぼくたちは急いで塔へ向かった。
ハルカが確認したのは、街を創るために描いた絵だった。
霧の街は、一枚の絵で創られているわけではない。
いくつもの区画に分けて描かれた絵があり、それらが組み合わさって、今の街を形作っている。
ハルカは保管されていた絵を次々と取り出し、床に並べていく。
「……やっぱり、あの家が描かれた絵がありませんわ」
敷き詰めた街の絵を見つめ、ハルカは呟いた。
「絵がなくなったから、家も消えたってこと?」
「そうかもしれません。ですが、なくなった絵に描かれていたのは、あの家だけではありません。他の家は消えずに無事のようですわ」
ハルカは残された絵を一枚ずつ確認していく。
「それに、一枚だけではありません。他にも、なくなっている絵があります」
ハルカが険しい表情で告げた。
「でも一体誰がどうやって……」
日中、霧の塔の入口には人がいて、誰が出入りしたのかも確認されている。
そして夜になれば入口には鍵が掛けられる。
誰にも気づかれずに侵入し、絵を持ち出すのは簡単ではない。
消えてしまった家の住人には、ひとまず別の空き家へ移ってもらうことになった。
こんなことは前のターンでは起きなかった事件だ。
だが、異変はそれで終わらなかった。
「マリスが……マリスたちが動き始めました!」
マリスの動向を監視している兵士が、慌てた様子で報告した。
「散らばっていたマリスが群れを作っています。そのまま、こちらへ向かっているそうです!」
「もう?」
ぼくは完全に不意を突かれた。
ぼくの記憶では、マリスの大群が動き始めるのは、まだ一か月以上先だったはずだ。
それなのに、もう行動を始めている。
「到着まで、どのくらい?」
「まだ正確には分かりません。ですが、このままの速度なら……あと三日ほどかと」
ぼくの知っている展開とは、明らかに違う。
「ヨミさんに連絡をお願いしますわ!」
ハルカがすぐに指示を出す。
光の街から援軍を送ってもらう予定だったのは、一か月ほど先だ。
当然、まだこちらへ向かってはいない。
「急いで使者を出そう。できるだけ早く援軍を送ってもらうんだ」
ぼくは窓の外へ目を向けた。
街を守る巨大な壁が、霧の向こうにそびえている。
予定は早まったが、壁は完成し、兵士も増やした。準備は整っている。
それなのに、嫌な予感が消えなかった。
失われたぼくの二時間。
消えた家と絵。
そして、一か月以上も早く動き始めたマリス。
何者かが、未来を変えている。
いつも読んでくださってありがとうございます!
『面白い』『続きが気になる』と思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。
その一つ一つが、次の展開をより面白くする力になります。




