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無間のハルカ・カナタ~死にすぎたので、致命傷くらいなら平気です~  作者: マシナマナブ
第四章

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赤い目

 それから数日、ぼくたちはヨミたちと情報を共有しながら、マリスを操るレムウォーカーの捜索を続けた。

 光の街(ルミナスヴィル)からも人員が出され、捜索範囲は一気に広がった。

 それでも、有力な手掛かりはまだ見つかっていない。

 襲撃まで残された時間は、刻一刻と減っていく。

 ただ待っているわけにもいかず、ぼくは兵団とともに何度もマリスの討伐へ出た。

 一体でも多く倒しておけば、襲撃の際の被害を減らせるかもしれない。

 だが、一度の遠征で倒せるのはせいぜい二、三体だ。それだけ苦労しても、全体への影響はわずかと言わざるを得ない。

 以前、地下で出会った人の言葉を話すマリスには、あれ以来遭遇していなかった。

 確かに、ぼくの名前を呼ばれたように思う。

 今となっては、幻でも見ていたような気さえしてくる。


「それにしても、あんたは本当にすごいね」


 討伐を終え、黒く染まった大地を歩いていると、ミラが感心したように言った。


「マリスを仕留められることはもちろんだけど、黒い大地を平気な顔して歩いてる」


 ミラが足元を指す。

 マリスによって汚染された大地。

 草木は枯れ果て、地面は黒く溶けたようになっている。


「あたしらなんて、その上に数分もいたら毒にやられて動けなくなる。だから黒い大地はできるだけ避けてる。それなのに、あんたはその上に何時間いたって平気じゃないか」


「そういえば……」


 言われてみれば、確かにそうだ。

 この黒い大地に長時間いても、ぼくの体には何の異変も起きない。

 ひとつ、思い当たることがある。

 ぼくはこれまで、何度もマリスに殺され、やり直した。

 毒に侵された場所にも、長い時間いた。

 そのせいで耐性でもついたのかもしれない。

 ただ今は、その体質が役に立っている。


 その日の討伐を終えて霧の街(ミラージュヴィル)へ戻った頃には、すっかり日が暮れていた。

 街の入口で兵団のみんなと別れ、ぼくは一人で巨大な壁を見上げた。

 マリスの襲撃に備え、ハルカが創った防壁だ。

 高く、厚く、霧の街(ミラージュヴィル)全体をぐるりと取り囲んでいる。

 これほどの壁なら、そう簡単には突破できないはずだ。

 だが、相手は人間ではない。

 あの異形たちが何をしでかすか、完全には予想できない。

 ぼくはそのまま、壁に沿って歩くことにした。

 崩れそうな場所はないか。

 侵入されそうな隙間はないか。

 念入りに見て回ったが、今のところ特に異常はない。

 気づけば、夜もかなり更け、街は静まり返っていた。


 そろそろ帰るか。


 そう思った時だった。

 霧の向こうに、人影が見えた。


「……こんな時間に誰だ?」


 小柄な人影だった。

 頭から深くフードを被り、壁に沿ってゆっくりと歩いている。

 この街では見覚えがない人物だ。

 ぼくは腰の剣に手を添えながら近づいた。


「ちょっといいかな?」


 声をかけると、その人物の肩がびくりと震え、足が止まった。


「こんな時間に、ここで何をしてるの?」


 返事はない。


「今、怪しい人物を探してるんだ。悪いけど、ちょっと顔を確認させてもらっていいかな?」


 その人物はゆっくりと、こちらを振り返る。

 だが、深く被ったフードに隠れて顔は見えない。


「フードを取ってくれないなら、こちらで確認するよ」


 一歩、距離を詰めたその時――。

 フードの奥で、何かが赤く光った。


「……え?」


 目だ。

 そう気づいた瞬間――


 ぼくの意識は、そこで途切れた。

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