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無間のハルカ・カナタ~死にすぎたので、致命傷くらいなら平気です~  作者: マシナマナブ
第四章

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光の街からの来訪者

 ぼくたちはさらに捜索の範囲を広げた。

 マリスを操るレムウォーカーについて、近隣の村や街にも協力を呼びかけた。

 そんなある日、数人の供を連れたレムウォーカーが霧の街(ミラージュヴィル)を訪れた。


「ヨミが来たよ。ハルカに会いたいって」


 ミラがぼくたちの家に来て報告する。


「ヨミって?」


「隣の光の街(ルミナスヴィル)を統治しているレムウォーカーですわ。とても賢い方ですよ」


 ハルカがトワを抱きながら答えた。

 聞けば、光の街(ルミナスヴィル)はいくつもの集落が集まってできた大きな街らしい。

 ヨミの評判はよく、彼を頼って加わる集落が増え、今も街は大きくなっているという。


 いずれにしても、隣の街のトップがわざわざ来てくれたのなら、きちんと迎えなければならない。

 ハルカとぼくは正装に着替えて、霧の塔(ミラージュ)で彼を迎えることにした。


「ハルカさん、お久しぶりです。そして、カナタさん、初めまして。朝倉(アサクラ)清道(キヨミチ)です。みんなからは『ヨミ』って呼ばれてます」


 そう名乗った男の年齢は、三十歳前後だろうか。物腰は柔らかく、親しみやすい雰囲気がある。


光の街(ルミナスヴィル)の統治者様に、わざわざお越しいただけるなんて、ありがとうございます」


「いやいやいやいや! 『統治者様』なんて堅苦しいのはやめてください。俺、そういうの柄じゃないんで」


 思っていた以上に気さくな人だ。


「それで、今日はどうしてここへ?」


「もちろん、マリスの件ですよ」


 ヨミは待ってましたとばかりに身を乗り出した。


「千体以上のマリスを操っているレムウォーカーを探しているんですよね?」


「そうなんです」


「しかも、そのマリスの大群が攻めてくるかもしれない」


「はい」


「うわぁぁぁ……」


 ヨミは何やら楽しそうに拳を握りしめた。


「こういう状況、シミュレーションゲームだったら燃えますよねぇ」


「ゲーム?」


「好きなんですよ。資源を集めて、街を大きくして、戦力を整えて、敵の侵攻に備えるやつ」


 ハルカが少し困ったように答えた。


「まさに私たちはマリスに備えて、街を壁で囲んだり、兵士も増やしたりしています。残念ながら、これはゲームではありませんので、何があってもやり直しは効きませんわ」


「あ、そうでした。ちょっと不謹慎でしたね」


 ヨミは気まずそうに頭を掻いた。


「でも、マリスを操っている黒幕がいるなら、そいつを何とかするのが一番いい。孫子曰く『上兵は謀を伐つ』」


「どういう意味?」


「正面から戦う前に相手の企みを潰すのが一番いいってことです」


 ヨミは即答した。


「なるほど」


「俺、孫子の教え、好きなんですよ。二千五百年も前に考えられたことなのに、ゲームでもビジネスでも役に立ちます」


「けれど、まだそのマリスを操っているレムウォーカーについて、何の情報も得られてないんです」


 何やら熱く語っているヨミに、ぼくは口を挟んだ。


「そう、それだ。だから、俺が来たんです。ここは協力して探し出しましょう」


 ヨミはそう言ってぼくたちに手を差し出した。


「いいんですか?」


「もちろんです。だって、マリスはみんなの敵でしょう? 霧の街(ミラージュヴィル)だけの問題じゃない。だから捜索のための情報をこちらにも提供してください」


 ありがたい申し出だ。ぼくはヨミの手を握った。


「それは助かります」


「私からもひとつ、お願いしたいことがあるのですが……」


 そこでハルカが遠慮がちに切り出した。


光の街(ルミナスヴィル)には、悪夢マリスに対する強い戦力があると伺っておりますわ。有事の際に、その戦力を貸してもらうことはできませんか?」


 ヨミはほんの一瞬だけ思案して、すぐに答えた。


「もちろんです。ありったけの戦力をお貸ししましょう」


「よろしいのですか?」


 ヨミはにっと笑った。


「こういうのは、出し惜しみするのが一番よくない。孫子曰く『十なれば則ち之を囲み、五なれば則ち之を攻め、倍なれば則ち之を分かつ』」


「また難しいのが来ましたね」


「兵力差に応じた戦い方があるって意味ですが、俺なりにもっと簡単に言えば――とにかく相手より大きな戦力で叩き潰せばいい、ってことですよ」


 ヨミは力強く宣言した。


「一緒に、勝てる盤面を作りましょう」


 頼もしい人が、味方になってくれた。

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