お告げ
「つまり、そいつを止めればマリスの襲撃も止められるってこと?」
ついに希望の光を見つけられたように思えた。
「その可能性は高いです。ただ、マリスの大群がその何者かの盾になります。難易度は極めて高いと言わざるを得ません」
それでも、すべてのマリスを倒すよりはましだ。
とは言え、ぼくの今の力では心許ないことも確かだ。
そこで、ふと疑問が浮かぶ。
「そういえば、ぼくの能力って何なんだろう?」
「カナタさんの?」
「レムウォーカーには、それぞれ特別な力があるんでしょう? レヴェリアで死ぬと現実に戻る。それがぼくの能力なのかな?」
「大変興味深い現象ですが、レムウォーカーの能力とは少し性質が違うように思います。そもそも、私たちはレヴェリアで死んだ経験がありません。死ねば現実へ戻るというのが、カナタさんだけの現象なのかどうかも分からないのです」
ミコの答えは慎重だった。
「予知で見た限り、カナタさんの身体能力は強化者並みです。ですが、あれは能力ではなく、ご自身の鍛錬によって身につけられたものに見えました」
「じゃあ、ぼくの能力は結局なんだろう……」
「レムウォーカーの能力は、その人の強い願望と結びついています。カナタさんがレヴェリアへ来る前、強く願っていたことはありませんか?」
「願っていたこと……」
考えてみるが、何も浮かばない。
「特にないと思う。何者かになりたいとか、何かを成し遂げたいとか、そういう夢もなかったし」
「それは妙ですね」
「夢も野望もない人間が、レヴェリアに来ることはないの?」
「私の知る限りではありません」
ミコは少し考えてから口を開いた。
「もしかしたら、夢ではなく、後悔なのかもしれません」
「後悔?」
「ええ。例えば、マリスウォーカーは生前の未練に囚われ、過去へ向かう存在です。ならば強い後悔が、レムウォーカーを生み出すこともあるのかもしれません」
後悔だとすれば、心当たりはある。
「ただし、そのような実例は知らないのです。レムウォーカーは、望みを抱き未来へ向かう存在。マリスウォーカーは未練に囚われ、過去へ向かう存在。それは似ているようで大きな違いがあります」
結局、ぼくの能力は分からないままだったが、やるべきことは決まった。マリスを操るレムウォーカーを見つけ出し、止める。
ぼくは立ち上がった。
「ああ、それから、現実世界についても見てみました」
ミコは少し慌てて付け加えた。
「やはり、現実世界のことは鮮明には見えませんでした。ただ、漠然としたお告げのような言葉を聞きました」
「お願いします」
ミコは懐からお告げを書き留めた木札を取り出し、読み上げる。
「――セイとシがマジわるトコロ、シンジツをテらすヒカリがウまれる。ヒカリはムサシのミタケにて、オトをアキらかにする」
「生と死が交わるところ……?」
「以上です」
ミコはその木札をぼくに差し出した。
「私にも詳しい意味は分かりません。これが何かの手掛かりになれば良いのですが」
ぼくはそのお告げを読み返す。
この言葉が、現実世界のループを解く手掛かりになるのかもしれない。
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