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無間のハルカ・カナタ~死にすぎたので、致命傷くらいなら平気です~  作者: マシナマナブ
第三章

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未来

 翌朝、ぼくとミラは再び神殿を訪れた。

 畳の部屋で待っていると、昨日と同じ白を基調とした和装のミコが現れる。


「おはようございます。カナタさん、昨日は素敵な一夜でしたね」


 ミラが引きつった顔をしている。


「確かに楽しかったですけど、誤解を招くような言い方は勘弁してください。それより、予知の夢は見られましたか?」


「はい……」


 そこで初めて、ミコの表情から笑みが消えた。


「今回の予知は、私がこれまで見てきた中でも、最も衝撃的な内容でした」


 昨日までとは違う声音だった。


「それでは、お伝えします」


 ミコがまっすぐにぼくを見る。


「カナタさんのおっしゃっていた通り、マリスたちは集団となって、霧の街(ミラージュヴィル)への移動を開始します。そして百七十日後、霧の街(ミラージュヴィル)へ到達します」


 それは前のターンのぼくの記憶とも一致する。


「その数は、千を超えます。それはもはや大災害と言ってもよい規模です。ですから私は、預言者として申し上げます」


 ミコの声が神殿に静かに響く。


「直ちに霧の街(ミラージュヴィル)を捨て、住民全員を避難させることをお勧めします」


 それはぼくも考えたことがあった。でも街を捨てるなんて、簡単にハルカへ言えるはずがない。

 あの街は、家族を求めてハルカが創り上げた大切な街だ。


「……できれば、街を守りたい」


「そうおっしゃると思っていました」


 ミコは目を逸らさず、ぼくを見ていた。


「あなた方が街に留まり、マリスに立ち向かった場合の未来を見ました。まず、カナタさん。あなたはハルカさんや街の皆さんを守るため、マリスの大群に立ち向かいます。あなたは戦い続けます。何度傷ついても、片腕を失っても立ち上がり、何体ものマリスを倒します。その姿は、まさに英雄と呼ぶにふさわしいものです。ですが――」


 ミコはそこで言葉を詰まらせた。


「……最後には、数百体のマリスに囲まれ、命を落とします」


 死ぬこと自体は、これまで何度も経験してきた。

 この世界で死ねば、ぼくは現実世界へ戻るだけだ。


「ハルカはどうなる?」


 自分のことはどうでもよかった。


「ハルカさんは、生まれたばかりのお子さんを連れて逃げます。ですが、逃げる途中でマリスの毒に侵されてしまいます」


 ぼくの心臓が強く鳴った。


「それでも何とか霧の塔(ミラージュ)へ籠り、マリスから身を守ります。ですが、すでに毒は全身へ回り始めています」


 ミコの声だけが聞こえる。


「少しずつ身体の自由を奪われ、やがて自分の足では歩けなくなります。そして、美しい黒髪も、白く変わってしまいます」


 頭の中に、車椅子で銀髪の一人の少女の姿が浮かんだ。

 ぼくは、その姿を知っている。

 現実世界で会ったハルカだ。

 初めて会った時から、ずっと疑問だった。

 なぜ、レヴェリアでは黒髪のハルカが、現実世界では白い髪をしているのか。

 なぜ、自分の足で歩くことができないのか。

 あれは、生まれつきではない。これから起こることなんだ。


 レヴェリアで起きたことは、現実世界にも影響する。

 ならば、この世界で彼女を救うことは、現実の彼女を救うことを意味する。

 ぼくは強く拳を握り締めていた。


「……どうにかして、街を守る方法はないの? 街を捨てて逃げたって、それで終わりとは限らないだろ。マリスが霧の街(ミラージュヴィル)を滅ぼして、そこで動きを止める保証なんてない」


「おっしゃる通りです」


 ミコは静かに答えた。


霧の街(ミラージュヴィル)が滅びれば、それで終わりとは限りません。さらに他の街が襲われ、ここ天啓峰(オラクルピーク)も安全ではなくなるでしょう」


 逃げるだけでは、解決にならない。


「どんな方法でもいい。何か見えなかった?」


 ぼくはもう一度尋ねた。


「……ひとつ、気になるものが見えました。マリスの大群の後ろに、人が見えたのです」


「人?」


「考えてみればおかしいことがあります。マリスは、本来群れません。それぞれが勝手に動き、人を襲う存在です。千を超える個体が同じ目的地へ向かい、一つの街を襲うなど、本来あり得ないのです」


「じゃあ、どうして……」


「考えられる理由は一つ」


 ミコの声に力が入る。


「千を超えるマリスを従え、霧の街(ミラージュヴィル)へ向かわせている者がいます。おそらくは、マリスを操る力を持つレムウォーカー」


「レムウォーカー……」


 ぼくたちと同じ、現実世界から来た人間だ。

 つまり、そのレムウォーカーを止められれば、マリスの襲撃を防ぐことができる。

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