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無間のハルカ・カナタ~死にすぎたので、致命傷くらいなら平気です~  作者: マシナマナブ
第三章

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新しい命

 こうして、ぼくとハルカは晴れて夫婦となった。

 レヴェリアの結婚に法的な意味はない。それでも、ぼくたちにとっては大切な節目だった。

 そして、このタイミングで結婚を決めた理由は、もう一つあった。


「体の調子はどう?」


 ぼくが声を掛けると、ハルカは大切なものを触るようにお腹へ手を添えた。


「気持ち悪さは少し落ち着いてまいりましたわ。それに最近は……」


 そこに優しい眼差しを向ける。


「動いているのが分かるのです」


 その一言で、ぼくの頬も自然と緩んだ。


 そう。ハルカのお腹には、新しい命が宿っている。出産予定日は、およそ四か月後。

 ぼくは、その小さな命に会える日が待ち遠しかった。


 けれど、その喜びと同じだけ、不安もある。

 この子が生まれて約二か月後、マリスの大群が、霧の街(ミラージュヴィル)へ襲来することをぼくは知っている。


 守るものが増えた。

 生まれてくる子供。

 ハルカ。

 そして、皆が暮らすこの街。


 そのすべてを守るためにやれることは、すべてやってきた。

 兵団も強化した。

 街を囲む巨大な壁も、ハルカによってすでに完成している。

 これならマリスの大群でも容易には突破できないはずだ。

 それでも、拭いきれない胸騒ぎは残っていた。

 確認されているマリスの数は、今なお増え続けている。


 そこでふと、ハルカが以前話していた人物を思い出す。


「そういえば、前に『預言者』の話をしていたよね?」


「預言者のミコさんですわね」


 ハルカは頷いた。


「予知の力を持つ強化者(ブースター)のレムウォーカーです。天啓峰(オラクルピーク)という山で暮らしていらっしゃいますわ」


 未来を見る力……

 その力が本物なら、何か有力な情報が得られるかも知れない。


「確かにミコさんなら、この街を守る方法を何かご存知かもしれませんわ」


 預言者の住む天啓峰(オラクルピーク)は、霧の街(ミラージュヴィル)の北にあり、馬車で一週間ほどの距離だという。

 ぼくはそこへ行くことに決めた。

 だが、身重のハルカを、そんな長旅へ連れ出すわけにはいかない。


「ハルカはここで待っていて。ぼくが行ってくるよ」


 ハルカは少し考え込んでいる様子だ。


「二人とも街を空けるわけにもいきませんわね……ですが……」


 それきり黙り込んでしまう。


「どうしたの?」


「あの、その……」


 意を決したように顔を上げる。


「ミコさんと……変なことは、しないでくださいね」


「なんでそうなるの?」


 思わず力が抜けた。


「いや、しないよ」


 ぼくはそう真顔で答えたが、ハルカはどこか不安な様子だ。


「くれぐれも、お気をつけください」


 ぼくは旅の準備を進めた。

 道中の食料と、馬車の手配が必要だ。

 馬車といえば、一人しか思い浮かばない。


「ミラに頼むか」


 ミラは、街を守るためなら喜んでと、二つ返事で引き受けてくれた。


「ミラは預言者に会ったことある?」


「ないね」


 ぼくが尋ねると、ミラはすぐに首を横に振った。


「預言者に会いたがる奴なんて山ほどいる。そう簡単には会えないさ」


 さすが預言者だ。


「じゃあ、ぼくが行っても会えないだろうか?」


「普通ならね。でも……」


 ミラはにやりと笑って付け加える。


「でも、なんと言っても、あんたは創造者の旦那だ。会ってくれる可能性はある。それに、あんたが会いにくることも、彼女はもう知っていて、準備しているかもしれない」


 ミラのあまりに自信たっぷりな口ぶりに、ぼくも勇気をもらった。

 こうしてぼくは、ミラの操る馬車に揺られながら、天啓峰(オラクルピーク)へ向かった。

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