祝宴
あれから半年が過ぎた。
「ハルカ、おめでとう!」
「カナタもおめでとう!」
祝福の声が、霧の街の広場いっぱいに響く。
今日は、ぼくとハルカの結婚式だ。
ハルカは頻繁にぼくの家を訪れるようになり、いつの間にか一緒に住んでいるような状況になっていた。
そんなぼくたちを見ていたミラが、
「もう夫婦みたいなものなんだから、ちゃんと式を挙げようじゃないか」
と言い出したのが始まりだった。
まあ、実はそれだけではなく、他の理由もあるけれど。
街の人たちは料理や花などを持ち寄り、広場は盛大な祝宴の場となっていた。
ぼくも自ら腕を振るい、料理を並べる。
「あたしはねぇ、二人を初めて引き合わせた時から、実はこうなる気がしてたんだよ」
ミラが世話焼きの仲人みたいに胸を張った。
「そうなの? ぼくは今でも、自分なんかがハルカの結婚相手でよかったのかって思うよ」
「何言ってんだい」
ミラは豪快に笑い飛ばした。
「この街を救った英雄と、この街を創った創造者だよ。これ以上ない組み合わせじゃないか」
「この街にも、いい人はたくさんいたと思うけど」
「いい奴はいくらでもいるさ。でもね、違うんだよ」
ミラは少しだけ真面目な顔になった。
「ハルカは、ずっと本当の家族を求めてた」
それは彼女自身も言っていた。その願いからこの街が生まれた。
「あの子が、この街のみんなを家族みたいに大切にしているのはあんたも知ってるだろ? でも、あの子は創造者なんだ。あたしらとは違う」
ミラは広場を見回した。
「みんなハルカを尊敬してる。でも、その気持ちがあるからこそ、一歩引いちまう。それじゃ、本当の家族にはなれないだろ?
でも、あんたは違った。創造者だからじゃない。ハルカに一人の人間として向き合ってくれた」
その言葉で、胸のつかえが消えたような気がする。
そこでミラはぼくの背中を勢いよく叩いた。
「それじゃあ、新郎から一言もらおうじゃないか!」
ぼくは少し緊張しながら前へ出る。
「ええと……正直、人前で話すのは得意じゃありません」
広場に温かい笑い声が広がる。
「ぼくは、この街へ来た時、本当に何も持っていませんでした。そんなぼくに、居場所をくれたのがハルカでした」
ぼくはハルカを見る。
「この街でハルカと過ごす時間は、ぼくの人生でいちばん幸せな時間です」
ハルカも少し照れたようにぼくを見た。
「この幸せと、この街の皆さんの幸せを、これからも守っていきたいと思っています」
ぼくは深く頭を下げた。
「これからもよろしくお願いします」
大きな拍手が広場を包んだ。
「じゃあ次はハルカだね」
続いて華やかなドレスに身を包んだハルカが一歩前へ出る。
「皆さま、本日は、このような温かい祝福をいただき、本当にありがとうございます」
ハルカは広場をゆっくりと見渡した。
「私は創造者として、この街で暮らす皆さんが、穏やかな毎日を過ごせることを願ってまいりました。
誰かと何気ないお話ができて、温かい食卓を囲める日々。皆さんのそんな生活を、私はいつも見守っておりました。
ですが、その幸せが、どれほど尊いものなのかを、本当の意味で知ったのは、つい最近のことです」
ハルカはそこでぼくを見る。
「カナタさんと食卓を囲み、同じ時間を過ごす。ただそれだけのことが、とても楽しくて、明日が来ることを楽しみに待つようになりました」
ハルカの頬がほんのり赤くなる。
「皆さまが大切になさっていた幸せの本当の価値を、私もやっと知ることができました」
もう一度、広場のみんなへ向き直る。
「私は、この街が大好きです。この穏やかな毎日が、これからも続くよう、私は創造者として力を尽くします。ですから……」
そしてハルカは深く一礼した。
「皆さん、どうかこれからも、力をお貸しください」
拍手と声援が広場いっぱいに響き渡る。
その歓声は途切れることなく、ぼくたちを祝福する宴は、夜更けまで続いた。
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