表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無間のハルカ・カナタ~死にすぎたので、致命傷くらいなら平気です~  作者: マシナマナブ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/28

招待

 勢いで誘ってしまった……

 女の子を家へ招くなんて、生まれて初めてだ。


 ハルカは、準備をしてから行くと言ったので、少し時間ができた。

 その間に、ぼくは慌てて料理に取りかかる。

 今ある食材でレシピを考え、野菜を刻んで下ごしらえ。

 料理は嫌いじゃないが、何だか落ち着かない。

 皿を並べたところで呼び鈴が鳴った。

 ぼくは深呼吸を一つして扉を開く。


「こんにちは、カナタさん」


 そこに立っていたのは、白いシャツに、薄紫色のロングスカートを身につけたハルカだった。

 創造者としてキャンバスへ向かう凛とした姿とは違い、今日は年相応の少女に見えた。


「……どうかしましたか?」


「あ、いや……似合ってるなって」


 ハルカは少し照れたように視線を伏せた。


「ありがとうございます」


「どうぞ、座って」


「失礼いたしますわ」


 ハルカがふわりと椅子へ腰掛ける。


 食卓にはサラダと色鮮やかな果物が並んでいる。

 ぼくは鍋から温かいスープをよそい、ハルカの前へ置いた。


「まあ……」


 ハルカはまずサラダを一口食べる。

 その途端、目を丸くした。


「このドレッシング、とても美味しいですわ!」


「すりおろしたタマネギに、砂糖と塩、それから油を混ぜて、最後に柑橘の果汁を少し加えただけだよ」


「野菜がいくらでも食べられそうですわ」


 続いてスープへ口をつける。

 スプーンを口に運び、ほっと息を漏らした。


「……なんて落ち着く味なのでしょう」


「いろいろな野菜を細かく刻んで炒めて、肉のブイヨンで煮込んだスープなんだ。派手さはないけど、体が温まるよ」


「カナタさんって、まるでシェフみたいですわね」


 ぼくは苦笑した。


「シェフみたいに高級食材を扱ったことはないよ。ぼくが考えているのは、スーパーの特売品がどうしたら美味しくなるか、それだけだよ」


 ハルカは静かに首を横へ振った。


「高級な食材だから美味しい、というものではありませんわ」


 そう言って、スープをもうひと口。


「心を込めて作られたお料理は、それだけで特別です。そういうお料理の方が、ずっと心に残りますわ」


 その言葉に、ぼくは少し照れくさくなった。


「じゃあ、メインディッシュだ」


 ぼくは焼きたての皿を運び、ハルカの前へ置く。

 こんがり焼き色のついた羊のステーキ。

 そして、ふんわりと焼き上げた、ぼくの得意料理――オムレツ。

 ハルカの瞳がぱっと輝いた。


「まあ……ついに、カナタさんのオムレツがいただけるのですね」


 ナイフを入れると、黄金色の表面が割れ、半熟の中身がとろりとあふれた。

 ハルカはそれを一口運ぶと頬を緩めた。


「……本当にふわふわですわ。中はとろりとしていて、ケチャップのようなお味のこの赤いソースとも、とてもよく合っています」


「大きなホオズキみたいな実があって、食べてみたらトマトにそっくりだったんだ」


「ランタン草ですわね」


「甘みが出るまでじっくり煮込んで、ソースにしてみた」


 ハルカは感心したようにソースを見つめる。


「あれが、こんなお味になるなんて……同じ食材でも、料理をする方によって、こんなにも違うものなのですね」


 続いて羊のステーキを口へ運ぶ。


「こちらも素敵ですわ。噛むたびにじわりと広がる美味しさがあって、それに、とても香ばしいですわ」


「弱火の炭火でじっくり焼いてみたんだ。それと、羊の風味が苦手な人もいるから、香草で和らげてみた」


「細かいところまで気を配っていらっしゃるのですね」


 最後にぼくは焼きたてのアップルパイと紅茶を運ぶ。

 甘い香りが部屋いっぱいに広がった。


 ハルカは最後の一口まで大切そうに味わい、満足そうにティーカップを置いた。


「ごちそうさまでした。本当に幸せな時間でしたわ」


 ぼくは少し不思議に思って尋ねた。


「ハルカはお嬢様だから、もっと豪華な料理を食べ慣れてるのかと思ってたよ」


「現実世界では、そのようなお料理をいただく機会もありましたわね……」


 そこでハルカは首を小さく横に振る。


「ですが、レヴェリアでは違います。腕の良い料理人も多くありませんし、食材も限られています。それに──」


 そして、少しだけ照れたように目を伏せる。


「誰かが私のために、時間をかけて作ってくださったお料理をいただいたのは、とても久しぶりでした」


 食卓には、空になった皿だけが残っていた。

いつも読んでくださってありがとうございます!

『面白い』『続きが気になる』と思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

その一つ一つが、次の展開をより面白くする力になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ