表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/16

15話

 

 ウィリアム男爵との会合を終え、リリムの待つ控室へと戻ってきた銀治は、黒い鞘に収まった刀を誇らしげに掲げて見せた。


「………」


 銀治はリリムの問いに答える。


「これはな、ダンジョンの深部で発見された『魔武器』だ。どうだ、格好いいだろう?」


 リリムは小さく頷いた。彼女は人前で声を発することを極端に恥ずかしがるため、口を開くことはない。だが、銀治には不思議と彼女の言いたいことが伝わっていた。


「………」


「ほう、声が聞こえるか。……察しがいいな、これはただの武器ではないのだ」


 銀治がゆっくりと鞘を引き抜くと、そこには闇を吸い込んだような、禍々しい黒い刀身が現れた。


「私がポーカーに興じている時に聞いた話ではな……」


 不安げな表情を浮かべるリリムに、銀治はベテラン教師のように語り始める。


 魔武器とは、悪魔の魂が宿っていると言われる禁忌の武装だ。一度も剣を握ったことのない子供でさえ、手にした瞬間に大木を切り倒すほどの威力を発揮する。だが、その力には必ず代償が伴う。人格が攻撃的に変貌し、憑かれたように戦いの中に身を投じ、やがて命を落とす。


 その危険性は誰もが知るところだが、それでも圧倒的な力を求める人々は後を絶たず、闇市場では天文学的な高値で取引されているのが現状だった。


「リリム、お前が今聞いているのは、この内に潜む悪魔の声だ。……それにしても、実に面白い。今、こいつは私の精神を乗っ取ろうと必死に足掻いているぞ」


 刀身からドロリとした黒い靄が発生し、銀治の腕を、そして体ごと包み込もうと這い上がってくる。リリムが悲鳴にならない悲鳴を上げ、身を乗り出した。


「案ずるな。……この程度の雑魚に侵されるほど、私の精神は惰弱ではない」


 銀治の言葉に反応したのか、刀身が激しく震え出し、木枯らしのような不気味な鳴き声を上げ始めた。


「これ以上、調子に乗らせるのも面白くない。この刀に憑りついた悪魔とやらを、今ここで滅してやろうではないか」


 銀治の顔から笑みが消えた。代わりに、全てを射抜くような冷徹な眼光が宿る。


「――破ッ!!」


 豪奢な控室のシャンデリアが激しく振動するほどの、重低音の怒号。直後、パリンと何かが割れるような硬質な音が室内に響き渡った。


 砕け散ったのは、メッキのように刀身を覆っていた「黒」だ。

 木っ端微塵に砕けた黒い膜は、断末魔のような甲高い悲鳴を上げながら、地面に触れる前に蒸気となって霧散した。


 後に残ったのは、一点の曇りもない白銀の刀身。


「……さあリリム。そろそろお前にも獲物が必要だと思っていたところだ。これを授けよう。思う存分、戦ってくれ」


 銀治が差し出した白銀の刀に、リリムはしばらく躊躇していたが、やがて覚悟を決めたようにゆっくりと手を伸ばした。


 彼女がその柄を握った瞬間、リリムの灰色の髪が、見えない波動に吹かれたようにふわっと逆立った。


「………」


「気に入ったのなら良かった……リリムなら使いこなせるさ」


 リリムは、宝物を手に入れた子供のような、純粋な歓喜の表情を浮かべて深く頷いた。




最後まで読んでいただきありがとうございました。


「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。


評価を頂ければさらに喜びます。


☆5なら踊ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ