入学お祝い親睦会
親睦を深めるために、ファミレスにやって来た結真たちは、各々好きな飲みものを持ち寄り、グラスを掲げた。
「入学おめでとう。カンパーイ」
いつもの仲間と新しい仲間が一つのテーブルを囲み、和やかな雰囲気を醸し出す。
テーブルの上には山盛りのポテトとピザ。それをちょっとずつ、みんなで摘む。
「俺、ピザだけじゃ足りねぇわ。みんなもなんか頼む?」
晴信はランチタイムのメニューを広げる。
「やっぱり、ガッツリ行かないとな」
学生の懐にも優しい値段設定のファミレスのメニューの中から晴信が選んだのは、ハンバーグとカルボナーラ。
1000キロカロリーを軽く超える悪魔的なチョイスに、女子たちは顔を引き攣らせる。
「さすが男子。勇者だわ」
「もう陸上部は朝練始まってるから、腹減るんだよ。旭も腹減ってるだろ?」
「うん、カツカレーにする」
食べ盛りの男子高校生たちは、タブレットで注文を済ませるとポテトを口に放り込んでいく。
面白いように消えていくポテトとドリンクに、結真は有名な掃除機のCMを思い浮かべていた。
晴信と璃羅は陸上。
旭は吹奏楽部。
柔心は軽音部。
音恋はダンス部。
兎萌はお家のケーキ屋さんの手伝い。
みんな朝練に励み、授業をこなし、放課後も練習が待っている。
これからみんな忙しくなるだろう。
結真だけが宙ぶらりんで、打ち込むものがない。
自分も何かすべきなのだろうかと悩みはするが、まだ靄がかかっている状態だ。
結真は内にある小さな焦りをコーラの炭酸でむりやり押し流した。
置いていかないでと手を伸ばすのはまだ早いと、ピザを頬張る。チーズとトマトの味がじんわり口の中に広がり、心に栄養が届く。
「私もなんか食べよ」
晴信に影響されたわけではないが、悩んだときは甘いものがほしい。結真はメニューからパンケーキを選ぶ。
「そういえばゆまちゃん、部活入らないの?」
まさに今、悩んでいたことを兎萌に突きつけられ、言い淀んだ結真の視線が泳ぐ。
「あっー、うん。部活はやらない、かな」
「どうして?」
「うちも気になる」
柔心と音恋も不思議そうに首を捻る。
「特に興味がないからかな。それに私、今一人暮らしだから家のこととかまだ慣れてないし。部活までやる余裕ないんだよね」
「まじで?」
「一人暮らしとか大変じゃん」
「うちの両親、仕事で海外行ってて。まぁ日本に残りたいって言ったのは、私だから」
「なんで、残ろうと思ったの?」
柔心と音恋には、一人暮らしという言葉が眩しく映ったらしく、興味津々で結真を見つめている。
それがくすぐったくて、自然と口元が動いてしまう。
「璃羅とうさぎちゃん────。まぁ、ふたりと同じ高校に行きたくて?」
「なんで疑問形?」
「ツッコまないで。恥ずいんだけど」
両隣の璃羅と兎萌の肩が、結真の肩に当たる。
ふたり、交互に視線を向けると口角が上がり切っており、ご満悦だった。
「ご注文の品、お待たせいたしました」
結真たちの話を断ち切るように、晴信のハンバーグとカルボナーラ、旭のカツカレーが運ばれてくる。
「ごゆっくりどうぞ」と店員さんが、伝票を筒に刺して、去っていった。
腹を空かせた男子たちが待てができるわけもなく、すぐさま料理にかぶりつく。
ほかの皆が、落ち着いて食べればいいのにと感想を一致させた。
「うちらもなんか頼もうか」
「お昼食べに来たんだもんね」
「じゃあ、うちはコスパ最強のドリア」
「アラビアータにしよ」
「あたしはペペロンチーノにしよっかな。兎萌はどうする?」
「うーん、ミートソースパスタかなぁ。ゆまちゃんは?」
「さっきパンケーキ頼んだから、どうしよう」
「じゃあ、みんなのを少しずつシェアする?」
「やった。なら、パンケーキもみんな食べて」
「サンキュー」
「なんで、晴信が入ってくんの」
「だって、くれるんだろ?」
「お前はもう食ったろうが」
うんうんと全員が頷く。
その中には同じ男の旭も含まれている。
「晴信、いくらなんでも図々しすぎ」
旭の正論パンチが炸裂し、晴信は言葉を失った。




