27.終わり、そして
〜 三章 ハロルド編 〜
二度目の失恋だったが、アンナの心はとてもスッキリしていた。
恋愛から離れ、自分の心にようやく素直になれた今。
ここまで迷いに迷って、ようやく気づく事ができた。
本当に大切な人……あの人に。
風邪が治り、また二人でカフェに行った。
といっても、今の私にはなんの味も分からなかった。
何を飲んだのかも、何のケーキを食べたのかも。
完全に上の空だった。
なにせ今日は、言わないといけない事があるのだ。
「どうしたの?今日、なんか疲れてるみたいだけど」
「あ、いえ……」
「そろそろ帰ろうか」
今だ。言うなら今。
「セルジュさん……!」
「なんだい?」
「その、ごめんなさい!」
「えっ?どうしたんだい急に?」
「その……なんていうか……私達、合わない気がして……」
セルジュさんはしばらく目を丸くしていたけど、徐々に納得したような顔になった。
「ああ、そっか……そうだよね。やっぱり君に無理をさせてしまっていた……」
「いえ!なにもセルジュさんが悪いとかそういうわけじゃなくて!」
「お互い合わなかった、と」
「はい……」
「……」
「……だから、ごめんなさい」
「分かった」
「セルジュ……今まで付き合ってくれてありがとう」
「こちらこそ。楽しかったよアンナ」
こうして、私達の曖昧な関係は終わりを告げた。
慌てるでもなく泣き出すでもなく……とてもあっさりとした別れは、ある意味彼らしくもあった。
私も私ですんなり納得できて、そんなに悲しくはなかったし、綺麗な別れとなった。
別れた後すぐにハルから誘いが来て、彼の別荘に遊びに行く事になった。
木々のさざめきや川の音とかを聞きながら紅茶でも飲みながらのんびりしよう、と。
二連続で失恋続きの私を彼はどうにか励まそうとしてくれているみたいだった。
前回の失恋の時のこともあって、またああやって私の心が駄目になってしまうのを恐れて。
彼の思惑通り、気分はさっぱり切り替わって……久しぶりの彼との外出にわくわくしている自分がいた。
それは恋愛としてではなく、単純に遊びに行く事へのわくわくだった。
何も着飾っていない私の本心。
駆け引きとか、相手からどう見えるとかそういった考えの一切ない……純粋な私の気持ち。
(釣りしたいから倉庫にしまっといた釣竿持って行こうっと……あと、ハンモックと……それに本も何冊か持っていって……そうそう、それと、あと……)
本当に心の底から楽しみで、私の頭の中はやりたい事でいっぱいだった。




