24.嫌いじゃないけど
だけど、彼にはまたセルジュとは違う大きな問題があった。
悪いところがほとんどない彼だけど……かといって逆に、これ!といった好きになるポイントがないのだ。
好きって思えるかどうか。
結構重要なところだけに悩ましい問題だ。
決して危ない相手じゃない。
むしろ、周りから優しくて良い人だってよく言われてるくらいだし。
でも何度会ってもテンション上がらないし、そこまで好きって感じにはなれなくて……
なんだか微妙な惜しいところで止まってしまって、好きになりきれないのだった。
(ときめかなくてもいい?割り切る?)
上に姉がいるから女を分かってると言うか、気が利くし。
それに性格も、ちょっと引っ込み思案なところはあるけど……穏やかで優しいし。
金遣いが荒いとか女好きとか、そういう危険な要素もない。
この先の生活も……なんとなく平和で穏やかそうではある。
(でも、でも……やっぱり……)
セルジュさんを諦めきれない。諦めるには理由が弱すぎる。
二人を比較しても魅力的なのは圧倒的にセルジュさんの方で、彼の方に軍配が上がっていて。
結局出てきた結論は、最初からすでに分かりきったものだった。
こうして散々好き勝手比べた結果、残ったのは……
二人を比較してしまった事に対する重い罪悪感だけ。
なんの結論もなく、ただ嫌な気持ちになっただけだった。
(ほんと、最低ね……)
「……ごめんね」
「ふぇっ?」
小動物のように頬を目一杯膨らませ、クッキーを堪能中だったハル。
話しかけられたからと慌ててモゴモゴし出した。
「ご、ごめん!変なタイミングに!全然大した話じゃなくて……」
「ひ〜よ、ひょっほまっへへ(い〜よ、ちょっと待ってて)!」
彼はしばらくモグモグして、ごくん!と飲み込みお茶を一口含んだ後、おもむろにこちらを向いた。
「なんだい?」
「ごめんハル、食べてる時に。ほんとにそんな大した事じゃなかったんだけど……」
「じゃあ、何?」
「ええっと……その……ほら今、私がお皿の中で一番大きいクッキー食べちゃったから。好きなやつでしょ、これ」
適当な出まかせで誤魔化す。
「ああ、そういうことか……いいよ、そしたら次は僕が二倍食べればいい」
あまり誤魔化せてなかったけど、ハルは納得してくれたようで……大きめのクッキーを二枚わしっと手でまとめて掴み、またモゴモゴと美味しそうに食べ始めた。
(あ〜あ。今のでズボンが粉まみれに……)
思いっきり齧った瞬間にブワッと飛び散って……ズボンの股間部分に粉が集まってしまっていた。
あんまり細かい事を気にしない、彼らしいっちゃ彼らしいけど。
粉まみれのまま呑気にまた次の一枚を手にするハルに、思わず笑いが溢れる。
「ふふっ……」
「ん?」
「いや、なんでもない」
(子供の頃とはだいぶ変わっちゃったけど……そこは相変わらずね)
あんな咄嗟についた嘘すら、ハルの前では平和な日常の一コマになってしまう。
きっと彼と結婚したら、毎日がこうやって穏やかに過ごせるんだろう。
(でも、やっぱり……私は……)




