17.こういうの、好きなんだ
カフェからの帰り道、セルジュさんと別れた私は馬車に乗り家に向かっていた。
「あれ?アンナじゃないか」
道の途中で、ふと聞こえてきた聞き慣れた声。
「あら、ハル」
そう言いながら、御者にストップをかける。
「こんな時間に会うなんて珍しいな」
「あなたこそ。いつもこの時間、家にいるのに」
「僕はね……親戚の屋敷に行ってたんだ。つい最近改築したらしくて、ぜひ見て欲しいって招待されてさ。アンナは?」
「私?私は……」
言葉に詰まってしまった。
素直に言うべきか、言わないでおくべきか。
セルジュさんと何度も会ってる事。
(いや、でもまだ付き合ってるわけじゃないし……また心配かけても嫌だから、やめとこ)
「ちょっと……その、ちょっと遠出して森林浴に行ったの」
「森林浴かぁ、いいね。今日はいい天気だから、部屋にいちゃもったいないもんね」
「そう、そうなのよ」
なんとか危機回避。
(ふぅ……)
「……ところで、その格好どうしたの?」
(ぎくっ!)
「えっ?!こ、これ?」
「そう。今までとは違う雰囲気だなって思って」
(ぎくぎくっ!)
やばい。私の変化に気づかれた。
もしかしてセルジュさんの存在、勘づかれてたり……?
「あ、ええと……たまには気分を変えようかなって思って。ハル的にはどう?」
「えっ?!」
話の主導権をハルに返すと、不意打ちされたかのように焦り出した。
「どうかな、これ。似合う?」
「あ、え、あ……えっと……」
「ハル……?」
元はと言えば彼から切り出した話。
なのに、とても慌てていて……
「いや、その……ええっと……か、かか、可愛いなって、思って!」
茹蛸のような真っ赤な顔で、変にうわずった声でそう返ってきた。
(はは〜ん。なるほどなぁ)
「ハル、もしかして……こういうのが好きなの?」
わざとニヤニヤしながら聞くと、視線を逸らして黙り込んでしまった。
どうやら図星らしい。
(そうなんだ、意外。でもごめんね……あなたのためじゃないのよ、これは)
「へ〜。ハルって、こういうタイプが好みなんだ。結構王道が好きなのね」
「……っ!」
「あら、顔真っ赤よ?」
「う、うるさい!」
「耳まで染めちゃって!」
「見ないでってば!」
「ふふふ。ハルの秘密、知っちゃった」
「ううう……誰にも言わないでくれよ?恥ずかしいんだから」
「う〜ん、どうしようかな〜」
ニヤニヤが止まらない私。
それを見てハルは、帰るよ!と急に言って御者を急がせ、あたふたと立ち去っていった。
これ以上いじられたら堪らないと判断したんだろう。
(面白いネタ手に入れちゃった。忘れた頃にまた言ってみよっと)
慌てる彼の顔が浮かび、思わず笑いが溢れる。




