14.あの人が……先生?
セルジュさんはどう見ても大人で、学生には見えない。
あの人が先生だなんて一体どんな授業なんだ……
(あっ、もしかして保健体育?あるいは生物?哺乳類の生殖の話とか?)
もはや今の私にとってサイラスは、下半身フリーダムなイメージしかなくて、思いつくのはそういうのばっかり。
とうとう自分の中で大喜利大会が始まりそうな勢いだったけど、ふと目の前のセルジュさんの顔が目に入り我に返った。
彼は至って真面目な顔のまま、言葉を続ける。
「そう、先生。彼には学ぶところがたくさんあってね。彼は人と仲良くなるのが得意で……良いか悪いかは置いといて、とにかく人とのコミュニケーションがうまいんだ。初対面の相手でもあっさり警戒を解いて、すぐに仲良くなれるんだ」
そう言われてみれば。
性格はあれだけど、それを除けば老若男女人好きのする男性だ。
優しくてマメで、会話も面白くて聞き上手で。
「ああ、なるほど……」
「だから、よく会いに行って色々と教えてもらってるんだ。色々とだらしないところはあるけど、根はそんなに悪い奴じゃないんだよ」
知り合いとはいっても、なかなか深い仲のようだ。
まぁ、サイラスだって……普通に過ごしてる分にはそこまで悪い人じゃないんだろう。
そこに女が絡まなければ。
「でも、セルジュさんだってそういうの得意なんじゃないですか?」
(だって、それはセルジュさんだって……)
こうやって私と喋るのが目的だけど、会って話そうとは言わずに、紅茶を理由にして柔らかく誘ってくれた。
初対面同士でただ会うだけだとハードルが高いし何を話そうか緊張してしまうけど、お茶が目的なら気楽に応じられるから……そんな目に見えない彼の心遣いがあの一通の手紙に表れていた。
だから、セルジュさんだって気配り上手なはず。
「いや、それがね……どうにも駄目で。何かと苦労してばかりだよ」
意外だ。
今だって受け答えにおかしなところはないし、特にコミュニケーションで苦労してるようには見えなかったから。
「真面目すぎるというか、会話が固すぎるってよく言われるんだよ……そのつもりはないんだけど、なんだかいつも見えない壁を自分で作っちゃってるみたいでね」
確かに、真面目な人だ。
それも……こうやって知り合いの揉め事を放っておけず自分から関わってくるくらいだから、なかなかの正義漢。
「会合とか晩餐会でのスピーチだって、いつも自分で作った原稿をサイラスに見せて直してもらうんだ……無駄な説明が多すぎるとか言われて、毎回ペンで真っ赤になって返ってくるよ」
「そうだったんですか……」
「といっても、今回はアンナさんをここまで傷つけてしまったわけだから……いつもより強めに言って、しっかり反省してもらうけどね」
そういってふふっと笑った。
ここまでずっとつらそうな面持ちだったから。
今ようやく彼の笑顔が見れた。
さっぱりとした、でも綺麗な笑顔。
(やっぱり好き……かも……)
窓から爽やかな風が吹いてきた。
それは……さらさらと気持ちのいい風だった。




