13.爽やかな風が吹いて
屋敷の広い客間で、丸テーブルに向かい合って座りお茶を啜る。
どこか外国のものらしく、今までにない珍しい銘柄。
まるで果物をそのまま溶かし込んだかのような、爽やかでみずみずしい風味だった。
この屋敷の主人であるセルジュさんもまた、爽やかという言葉をそのまま表すかのような人だった。
さらさらでまっすぐな長い銀髪を首の後ろで一つに結っていて、どこか中性的な雰囲気の美青年。
もやっとした話し方のサイラスとは全然違う、彼のはっきりとした物言いは……なんだか新鮮で気持ちよかった。
控えめで真面目な性格で、そこまでふざけたりはしないけど、クスッと笑えるような品のある冗談は結構言うタイプ。
どこか異国の生まれらしいセルジュさんの独特な青い目は、まるで空のような綺麗な水色で……ねっとりとした雰囲気のサイラスとは反対に、カラッと晴れ渡った青空のような人。
そんな彼が、苦しげに顔を歪めている顔すら綺麗で……思わず話そっちのけで何度もドキッとさせられてしまった。
「サイラスは昔からああなんだ。だから、君がつらい目に遭うのも分かっていた。あの時、バーで私が君を止めていれば……」
サイラスの女好きは昔からのものだったらしい。
でも、セルジュが何度咎めても『友達』だからと言って聞かなかったそう。
そうやって『友達』として、何人もの女性を緩く繋ぎ止めておく……それが彼の常套手段だった。
かと言って、それでも中には本当の意味での女友達もいるもんだから……何でもかんでも止めに入るわけにはいかず、困っているんだそう。
「本当に、申し訳ない……!」
「そんな……謝らないでください!」
部屋に入った瞬間から、ずっとこの調子。
申し訳なさそうに深々と頭を下げるセルジュに、逆にむしろ私の方が申し訳なく感じていた。
なにせ、色々と間違えたのはあくまで私であって……目の前の彼は全くの無関係なんだから。
しかし、そうやって謝る彼の顔にはどことなく疲れが表れていた。
ストレスによる疲労の目、そしてやつれた顔。
口には出さないけど……サイラスの女性関係の問題は、きっとこれが初めてなんかじゃない。
今までに相当何度もやらかしてそうだ。
そして、そのたびにセルジュさんがこうやって必死に謝る羽目になる……どっかの誰かさんの尻拭いで。
『問題のある男』なんて面倒な知り合いを持ったばかりに、とんだ苦労人だ。
その心労は計り知れない。
「尻拭いさせられてばかりじゃ、大変でしょう?サイラスが起こした問題なんて、もういっそ放っておいてもいいんじゃ……」
サイラスはきっとこのままだろう。
女遊びをやめる気なんて……今も、おそらくこの先も……ずっとない。
だから、このままだとセルジュさんの心労が増えるだけなんじゃないかって。
「いや、それはできない」
「えっ?どうして?」
「彼は私の先生なんだ」
「せ、せ、先生?!」




