11話 別れ
「父上!
奉行様からこのような話がありまして、、!」
「一郎か、どうしたどうした」
20歳となった一郎は父の仁右衛門と同じく
奉行に仕える身となっていた
仁右衛門は奉行の側近という形で
一郎はその隣につき仕事を学んでいる
最近は一郎に任せることも増えつつある
一郎が自分でできることはもちろん全てやるが
分からないことがあれば相談に向かっている
そして日が沈んで月が浮かんできた頃、、
「奉行様、一郎の様子はどうでしょうか?
最近は1人にして任せることも増えてきましたが、、」
「中々上手くやっておるよ
まぁまだ完璧とは当然言えんがな
まだ若い一郎に全ては求めてはいない」
「そう言って頂けると父としては嬉しい限りで
教育はしっかり行っていますが
抜けがあったら申し訳ないと」
「まぁまぁそう重く感じることはない
それに今日呼んだのは1人の友人としてだ
私に仕えた中で1番付き合いが長く
友人とも呼べる関係は仁右衛門、お前だ
もっと楽にしてくれ」
「そういうことでしたか
では最近小耳に挟んだ奉行様の
とあるお遊びについて教えて頂けますかな?」
「おまっ!仁右衛門!なぜそれを、、!」
「ふっふっふ
この町での私の情報網を舐めてはいけませんよ」
「全く侮れんな
しかしお前が興味あるとは思えんが」
「ええ、私には愛する妻がいますから
興味はないですよ
奉行様をからかう理由が欲しいんです」
「わっはっは!
楽にと言ったらすぐこれだ!
酒が入っても話さんぞ?」
「それはどうでしょうかねぇ、、?」
と、月に一度の奉行と仁右衛門の友人としての時間は
あっという間に過ぎていく
そんな最中に
「お奉行様!お奉行様!大変です!」
血相を変えた部下の1人が飛び込んできた
「こんな時間に一体どうした!?
なにがあった!?」
「戦の準備が行われてるとの情報が、、!」
「戦だと!?
徳川家康公が江戸に幕府を開き今はもう
戦など起こせないないはずでは、、」
「現に兵が集まっています!
ここは元の甲斐国に隣接する場所
相手は武田家の旗を掲げています!」
「まさか、、武田家の血筋が生きていたというのか!?
一体長篠の戦いから何年経っていると
今更何をしようというのか?」
「誰が総大将かは未だわからず、、!
しかし敵の総数はおよそ5000人
江戸幕府に対する反逆にしてはあまりに
少なく思います!」
「ふむ、、どう思う?仁右衛門」
「私も数が少な過ぎるかと、、
他にも協力者がいるのか判断しかねます
しかし早めに対処しなければ勢いづく可能性も
5000人に対抗できる戦力を集めるのに時間が
足りません
後どのくらいでこの町、、いや我が藩に入るか
予想できるか?」
「はっ!
現在の行軍の速さでは後3日ほどかと
思われます!」
「3日か、、、
平和になった世でかつての戦のような
動きが出来るものがどれだけいるのか
しかしここで食い止めなければなるまいな」
「そうですね
藩主に報告し兵を集めましょう
我々の町を戦場にするわけにもいきません
甲斐国へ向かう途中の山々の間に盆地があります
そこで迎えうちましょう」
「そうだな
この藩に来るにはその盆地を通るしかないな、、
よし!藩主に知らせ兵を集めるよう伝えよ!
我が町からは一郎を大将として向かわせたい
仁右衛門よ構わないか?」
「父としては息子を危険な戦場に向かわせるのは
とても心苦しい
ですが私が行ったところで足手まといでしょう
それに一郎は武芸にも励んでいる
私より適任と思います」
「つらい決断をすまない
一郎を呼びこの町の兵を連れて藩主の元へ向かわせよ
100人程度連れていけるはずだ」
「100人!?
この町で兵と呼べる人間はそういませんが、、
足りるのでしょうか」
「これがこの町の精一杯だ
藩全体ならば1万程集まるはずだ」
「なるほど、、、
では一郎を呼んで参ります」
そして一郎にもその知らは届き100人をまとめあげ
藩主の元へ向かう事になった
そして集められた兵と合流し戦場となる盆地へ向かう
「一郎よ、、、
必ず勝ち平和な世から戦乱の世に戻すことのない
ように務めよ
そして父としての言葉だ
必ず、、何があっても生きて帰ってこい、、、!」
「一郎、私は心配でなりません
こんなことを言うべきではないとは分かっています
ですが母として
負けてもいい、帰ってきて
また元気な顔をみせておくれ、、、!」
「父上、、、!母上、、、!
行って参ります」
これが親子の最後の会話であった




