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桜の舞う摩天楼  作者: ハイク
第三章 ドラゴンと魔法
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65話 魔法を探せ

俺が海の覇者バカ二人を装置に放り込んだ所から話は始まる。

「よし、全員揃って入ってくれた事だし君には外を見てもらって色々と調査をお願いしたい。」

俺はシルフに勇者の育成のために必要な『四季魔法』の習得を任された。更にシルフは念話を通じて続ける。

(もし監視者の居場所も分かればすぐに報告して欲しい。皆が帰って来るまでにも、やる事は沢山あるからね。)


「ああ。とりあえずメサラドに行ってみるか。」

「くれぐれも力を使い過ぎないようにね。」

力…俺があの覚醒進化装置に入って手に入れた力のことだ。使いすぎれば敵に場所がバレ、不利になるらしい。そこの加減が全く分からないが、今のところ控えめにしていれば問題ないだろう、と思いたい。


俺は完璧な豪邸と化したシルフの城を出て、歩き始める。飛んだ方が速いけど歩きながらスキルの確認がしたかった。


光の種というスキルを使って掌から種を出す。

種は少し光りながら生み出される。光が消えたときにはただの黄色い種となるのだが、この種を割った時に自在に想像した事が現実のものとなる。


例えば強化魔法を常に発動させるといったことも可能だった。遠目から見てもチートにしか思えない。

何かをすっ飛ばしてこうなっているような、そういう感覚を覚えた。

そうやって種を使って試行錯誤しながら歩いていると、すでにメサラド付近にまで来ている。種を出すのをやめて俺はメサラドへと走っていった。


メサラドは砂漠があることが特徴の街だ。砂漠の先にはイフリートの城があり、彼が陰からメサラドを支えている。今は装置に入っているのでイフリートはいないのだが、それでも街の活気は途絶える事はなかった。


俺はギルドの依頼をこなしつつ情報収集をする。

情報収集が目的なので依頼は必要最低限しかこなしていない。

(図書館が無いなら地道にやるしかないな…)

探してもそういう場所が無い。そういえばここは魔法なしで戦う人が多かったな。


しばらくして、やっと手掛かりを掴む。メサラドの外、依頼で小屋を調べた時にそのメモを見つけた。中は大分使われていないようで、机には良く分からない事が書かれた紙がかなり置かれてあった。


『四季魔法の特徴と条件』


『四季魔法は莫大な気力と引き換えに圧倒的な攻撃を行える。これは魔法の扱いとは違い、魔力があまり必要でないようだ。』

『扱いに注意しろ。全ての魔術師にこれを使わせたら世界は滅ぶ。このメモを見つけたのなら中身を見ずに勇者に渡して欲しい。』

といった前書きの下に俺の知りたい事が全てあった。


『まず一つに魔力をあまり必要としない代わりに気力を持っていかれる。』

『二つに使える者は必ず強い素質を持つようだ、しかしそれについてはまだよく分かっていない。』

『三つに四季という根源にあるものを想像できなければこれらは使えない。』

『四つに使い方は術者によって大きく変わり、使い方の幅も術者の気力によって大きく異なる。』


(シルフ、手掛かりを見つけた。一旦戻っていいか)

(そうかい、ならすぐに戻って来て欲しい。)

俺は『竜変身』を使い、その翼で飛び上がった。


帰ってメモを渡す。シルフとレイカはほぼずっと特訓をしているようだ。

「ふむ、どう思う?レイカ。」

「……」

「何かあったのか?」

シルフは何かあったと言いたそうな、申し訳なさそうな顔をこちらに向ける。

「はぁ。そんなに魔王といるのが嫌か?」

「…そんなのじゃないわ。」


その言葉を発した勇者には、弱さがあった。……そして、


「っ!」

レイカは突然手首を押さえつける。

「シルフ!何があったか教えろ!」

「それはレイカ君を治療してから伝えるよ…」

まだ申し訳なさそうに話すシルフを見て、俺はおもむろに種を生み出す。


(回復!)


種をレイカに向けて弾き、当たるギリギリではじけさせる。

割った種から粉が飛び出しその粉は目標を包み込む。数秒で粉は消えていき、そこには元通りとなったレイカがいた。


「ちょっと待って欲しい。白、今君は…」

「ただの魔法だ。それよりも何があったか教えろ。」

「そ、そうだな。実はだね…」

今度は困惑顔になったままシルフはわけを話していく。


〜〜〜〜――――――

「それは駄目だ」

「でも…!」

この部屋にはシルフとレイカだけ。特訓のためだけに作られ、特訓に必要な物以外なにも置かれていない殺風景な部屋だ。


「まだ満足に剣も振れていない癖に僕と戦いたい?時間が無いんだ。もう少し強くなってからでないと…」

「やらなきゃ分からないっ!!」

カン、カン。無駄な動きを伴う剣戟はあまり剣を握らないシルフですら簡単に受け止める事ができた。

五回、硬い物が打ち合う音が鳴る。六回目の音が鳴ろうかとなる時、シルフは動いた。


「支配!!」


言葉が聞こえた時にはもうそこにシルフは居ない。いや、実際の所は空気と同化してそこにいても見る事すら出来なくなっていた。


一瞬で目の前に居る敵を見失った『兵士』がどうなるか。それはもう分かり切っていた。


手首に衝撃。直後に足、胴体。様々な所が立て続けにダメージを受ける。

痛みに意識が向き、咄嗟に痛覚が悲鳴を挙げた場所を抑える。


「風の精霊よ!突風!」


足元から緑の線が複数見える。回避、動かさなきゃといった焦りがレイカの顔に滲み出る。

しかしもう、足は固定されて動けない。空気、空間を操るシルフにはもう、ネズミの退路を塞ぎこれからどう裁きを下すか…既に次のステップしか見えていない。


足が地面から剥がされるような感覚。

「ま、ずい…っ」

ゆっくりと踵から浮いていき、踵が完全に離れたときはもう体全体が空中へとうち飛ばされていた。


〜〜〜――――――――

「聞けば聞くほどシルフが悪い。加減ぐらいしろ。」

「…本当に申し訳ない。」

「くっ、魔王は私の敵。いつかは倒さなければいけない…敵。」


何かこじらせてそうなセリフを吐き、足早に退室した。

「あ、おい、待て!待てよ!」


俺も部屋を飛び出そうとするが、シルフに呼び止められた。

「白君はこのメモを持っていて欲しい。そして勇者レイカの事は任せるよ。」

「遠回しな丸投げご苦労さんっ」


俺は走っていく。

「サラ!」

「はい、何でしょう?」

作り笑顔で返事をしたのは悪魔っぽい羽が頭にある、シルフの助手のサラだ。

「レイカを見なかったか?」

「…あっち…あちらでございます。」

「無理しなくていいぞ?とにかくありがとう。」


俺は走る。


「おい、レイカ。」

迷いながらも彼女を見つけ、肩を掴んだ。しかしレイカは止まらない。俺も早足になりながらも追いつく。

「…何か用?」

「そんなにシルフと特訓するのが嫌か?」

「そうじゃないわ。何度も言わせないで…」

「じゃあどう違うんだよ」

途端にレイカは黙り込む。


他にも何かあったのか?

…いや、あの件の事で間違いないはずだ。

「……なら、何か一つ俺が、願いを叶えてやる。」

すこしぐらいなら俺の力も。しかしそれは自惚れであるとこの頃はまだ気付かない。

それで…レイカがより頑張ってくれるなら。しかし、彼女の言葉で俺は全て理解した。


「なら魔王を倒して、平和にする。モンスターのいない世界にして。」

「……」


彼女は勇者で正義。魔王は敵で悪。

彼女の受けた痛みは大きく、憎しみとなって魔王へと向けられていた。

「魔王を倒しても、モンスターが消えるとか、本気で信じているのか?」

「消えるわ」

圧倒的な自信を付けて返って来る。

「どうしてだ?」

「魔王が悪だからよ。」

「魔王が悪なら、魔王についている俺は悪か?」

「それは…そうよ。あなたが私を連れ去ったのよ。わざわざ敵地のど真ん中に。」


彼女は敵を魔王と定め、隙あらば倒さんとしている。

――変な話だ。魔王なんてただの被害者なのに。


「・・・」


――俺が、もっと強ければ。

(何を考えているんだ。これと自分の強さは関係ないだろ。)

そんな考えはすぐに振り切った。


廊下に鳴り響く音は二人分の足音のみ。しばらくして白は口を開く。

「っああ、忘れる所だった。特訓なら俺とやらないか?」

「…ここがどこか分からないのかしら?」

「え?」

レイカが指した方向をじっと見る。

「あー……なるほどな」

見るのは初めてだがどうやらここが『訓練場』らしい。


「私は一人でも強くなるつもりだわ」

「しょうがない奴だな…」

頭を少し掻く。こうして俺は彼女との『特訓』に付き合う事となったのだ。


一言で説明すれば、筋トレ。ひたすら素振りとランニング等をして基礎となる体をを作ろうとしていたのだ。

レイカは魔法を使えるのだが、それを使った特訓は無い。


俺が何か教えられる事は、少ないのかもしれない。

俺は特訓が終わったあとすぐさま空へ飛び出し、わざつまり四季魔法を使っていた。


(春の目覚め…夏の空…あとは、……)


俺の目の前に刀が現れ、空からは隕石が降り出す。

ここは海。だがこのままでは高温の熱を伴う隕石にその海水は即座に蒸発してしまうだろう。


(…)

二つ種を生み出す。俺はその種を二つとも潰す。すると魔力で作られた刀は俺の制御を離れると共に10本程同じ刀が現れて隕石へと向かっていく。


瞬く間に隕石は消滅して、あとに残る物といえば何事も無かったように佇む水平線、海。

「くそ、残りがわからん!」

春、夏とくれば秋、冬。しかしその秋と冬の魔法がどう覚えればいいか分からない。


・・・確か、『気力』がどうとか書いていたよな。

メモを取りだして読み終えた俺は、

(秋…)

目を閉じてイメージする。


――30秒経過。


――1分経過――


――5分経過――――………


「っ…はぁ。」

単なる時間の浪費であった。

確かに俺が覚えている『春』と『夏』は意識するだけで発動する。

しかし、まだ『秋』と『冬』の条件が分からない。それはどれだけ想像を膨らましても発動する事はないだろう。

まだ何かが足りない。そう直感した。


日が明け、レイカは訓練場へと足を運ぶ。俺も後を追いかける。

そして日が暮れ、軽く食事をして眠りに入る。

進展が無いまま時間が過ぎていく。



それから2日後、シルフが慌てた様子で俺に話しかけて来る。

「白君か…丁度良かった。君にも行って欲しい所がある。出来ればすぐに」

「何かあったのか?」

シルフとは3日程顔すら見ていない。助手にいた所、研究室に籠りっぱなしのようだ。

「もしかしたら、四季魔法の手がかりがあるかもしれない。場所は向かいながら伝えよう。」

「シルフも行くのか?」

シルフはそれ以上喋る事は無く、急いだ様子で魔王城を出る。


(…竜変身)

門を出た所で竜の形に成る。体が鱗で包まれて手には大きなツメが付き体のシルエットは最早人間の物ではなくなる。ただ、このガチガチのドラゴン姿をしたのも久しぶりだ。

「ギュルルル(ほら乗れ)」

「気を遣ってくれたのかい、ありがとう。」

俺はシルフが背に乗ったのを確認して飛び立つ。


「実は、エリュシオンの辺りでモンスターが妙な動きをしていてね。」

(おかしいな・・・)

エリュシオンのモンスターならノームが原因の事だったはずなのだが・・・

「(どういう風に妙なんだ?)」

「普段存在しないモンスターがエリュシオンを中心に複数存在している、と言った方が分かりやすいかな」

(同じだ…)

なら、相手は別に居る?

「もしかすれば何か起こる前兆。逆に言えばこちらに有利になる手がかりが見つかるかもしれない。」

「ひょっとしたら僕一人では解決出来ないかもしれない。・・・と、もう到着したね。」

エリュシオン前に降りて変身を解く。

「じゃあ、君は冒険者だったかな。僕は辺りの敵を探ってみるから君はエリュシオン内部を探って欲しい。」

「ああ。(面倒だな・・・)」

(何かあったらすぐ連絡入れて。モンスターの狙いがエリュシオンとなると一刻を争うかもしれない。)


シルフは何か知っているような様子で急いで森の中へと消えていった。


「まずはエリュシオンに入らない事には始まらないか・・・」

考えてもらちが明かない。

俺はエリュシオンに入ろうとした。しかし、

「おい、待て!」

(おかしいな・・普段は呼び止められる事とか無いんだが)

「お前怪しいな、身分証になる物は持ってるか?」

「これでいいか?」

俺は冒険者カードを取り出し守衛に見せる。が・・・

「はぁ・・・犯罪者がノコノコと顔出してくれるとはな」


彼の目は獲物を見つけた虎のように鋭く、今にも俺に攻撃せんとしていた。

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