66話 見えない敵を探せ1
目の前の一人が合図するとほぼ同時、周りの守衛が一斉に槍を向けていた。
「どうせ俺達に敵う奴なんて存在しねぇ。さっさと捕まれや」
・・・全員で三人か。
「悪いがそんな事をしている暇はない。さっさと通してくれ。」
「あぁ!?」
「てめぇ・・・立場が分かってないようだな!?」
「仮にも街を守る兵士なんだろ?ならその言葉遣いはやめておけ。」
「知った風な口利くんじゃねぇ!!」
先頭の一人が痺れを切らし、槍を持って襲い掛かってくる。
「『アイシクルレイン』!!」
突き出した槍が俺に届く事はない。それもそのはずで、相手は元から槍を当てる気はなかった。
だが、突き出された槍の先端が白く、そして蒼くなり、その後槍を中心にした多数のつららが俺に飛ばされる。
(そういうスキルかっ・・・光の種!)
種を作り出し、つららに向かって弾く。
種は光を出しながらバラバラに皮が弾け、さっきまで迫ってきていたつらら達は全て跡形もなく消えていった。
そしてスキルを使った本人は種を弾けさせた時の光で目くらましを食らったようだ。
「くッ・・・流石は『セバス殺しの槍使い』と言ったところか」
「・・・は?・・・・・・・俺は何もしてねーぞ?」
なぜだ?
俺はこの世界では殺した事はない。俺の記憶違いではなければアレは前の世界の記憶だったはず。
「誰もお前の話なんか聞いちゃいねえっ!!」
大声を出し、その後だらだらと喋りだす。
そして大体の話が終わったあと。
「・・・いいか!複数でかかれば対処はできねえはずだ!!」
すぐ後ろにはもう兵士が冒険者達を引き連れてきている。
「ゴルドーさん!!連れてきました!」
「長話してまで俺を止めたかったのかよ!!」
長話の最中俺は逃げる事も出来た。しかし逃げたら面倒になりそうだ。目的はここエリュシオンにあるのだから。
「おっと逃がさねえぜ!!」
「逃げる気なんてねえよ!」
「野郎ども!!叩けえええええ!!」
まるでこれは一人のHPが高いボス敵相手に複数人で囲んで叩く・・・よくあるボス戦のような光景だった。
しかし、叩く側は逆だ。
冒険者がぞろぞろ向かってくる中、俺はどうやって奴等を殺さずに良くて気絶させる程度に済ませるか悩んでいた。
四季魔法は高火力。隕石が落ちてもエリュシオンごと大被害だろうし、刀を使っても攻撃すれば花びらで敵が消滅してしまう。
こういった『手加減』は全く考えた事はなかった。
(種・・・木剣を)
種を潰し、木剣を生み出す。
(種)
剣を持ちつつもう一度種を潰し、木剣に『エンチャント』を付ける。
「隙あり」
「お前がの間違いだろ」
木剣で軽く叩く。
「あが、あががが・・・…」
まるで電気ショックを受けたようにその冒険者は倒れた。
やはり効果は大きい。ただ麻痺効果を付けるエンチャントをしただけなのに、人が気絶するレベルの威力がある。
「おい!!」
はっきりと遠くまで大きく声をかける。
「こうなりたくなかったら、エリュシオンに入れろ!俺は何もする気はねえ!」
「嘘に決まっている!また誰か標的にされるぞ!!」
ゴルドーとかいった守衛が張り合って妨害。
「なら」
「ここだ!」
向かってきた敵に対し木剣で叩く。
「っ!」
木剣で叩く。
「この街の事を教えてくれるだけでもいい!」
「この・・・いつまで」
木剣で叩く。
「だから、一つ協力させてくれ!」
「いい加減にしろ!!」
木剣で叩く。
しかし、敵が向かってくるペースは明らかに落ちていた。
「…お前の立場が分かってるのか?俺はお前を街に入れさせないために居るんだぞ。」
「ああ、それと、『俺達に敵う奴は存在しねえ』とか言ってたけどそこらへんどうよ」
「ッ・・・このガキ!!」
「おっと待て。この剣は触れるだけで周りの連中と同じ目に遭うんだぜ?」
脅迫になってしまったが、渋々といった様子で俺を街に入れる事を許可した。
監視は・・・付けているようだ。俺はそそくさとギルドへ足を運んだ。
「「「・・・」」」
周囲からの無言の視線に晒される。
依頼の掲示板を見る・・・しかし、やはりと言うべきか高難度の討伐依頼ばかりだった。
「俺が全部受けましょう」
その張り紙を全て受付に持って行き、俺は急いで街を出る。
・・・ジャイアントリザード20体。リザードは本来メサラド付近に生息しているが、どうやらエリュシオン付近にリザードの上位版、『ジャイアントリザード』が大量発生しているらしい。
強さはAクラスでないと太刀打ちできない程。公式の冒険者にはAクラスは数える程しか居ない為放置するしかなかったようだ。
俺は街を出てすぐに翼で飛び上がる。
目的地に着くと、すでに獲物を倒したシルフと会った。
「ああ、すまん。その証20匹分借りてくぞ」
「クエストかい?」
「クエストだ。事情は後で話す。」
俺はさっさと証を取り、次の場所へ飛び立った。
・・・ブラックパンサー5体。簡単に言えば黒い豹なのだが、戦闘となると強力なスキルを使って来て隊を一瞬にして壊滅させるらしい。更になぜか集団意識が高く、常に2体程で行動しているようだ。
俺はさっさと目的地に降り、
「光の種!!」
索敵、と呟きながら種を潰す。
すると情報が頭に焼き付けられるように周囲一帯の敵が見えた。
さて、
「春の目覚め・・・」
刀を取り、ブラックパンサーを片っ端から殲滅させていった。
「っと…証、証。」
5体だったよな。
数を集めてストレージに突っ込む。
・・・エイミングクロウ12体。縄張りに入れば超高速の矢のようなものを吹き出して来る鳥人のモンスター。最近その縄張りがエリュシオンの近くまで来ているらしいので掲示板に貼ったようだ。
「種・・・」
二つ出し、二つとも投げて弾けさせる。
麻痺効果の光を出させて、次の種で追尾機能を持つ矢を召喚する。
しかしそのせいであっさりと終わってしまった。
証を12体分取り、次の狩場へと移って行った。
・・・と、気がついた時にはもう夕方でやっと全ての依頼を終了させてギルドに報告しにいこうといった所だった。
「ほら、これで全部だ。」
ストレージから出した証を全て見せる。
「凄い…」
すると受付をしていた男性は奥へと走って行ってしまった。
――しばらくして、一人連れてきて戻って来た。
「確かに、これで全部だね。」
その一人は驚きもせず、ただただ冷静に証を見ていた。
「君が、白だね?」
やっとこちらを向いたかと思えば、名前を訊ねる。
「はい。」
恐る恐るといった様子で受付が袋を差し出す。
「では・・・報酬です。お受け取り下さい。」
「ああ。また何かあったら来るよ。」
さて、これで情報収集が出来る。
俺は明日を待ち、やがてその日がやってくる。
「情報をくれるなら」と付け、マールを見せる。すると色々な話が聞けた。
「近頃モンスターが強い奴しかいない。」「モンスターの縄張りが段々エリュシオンに近づいている」
「塔が怪しく感じる。」「夜、ある時間に塔が赤い光を出す」
夕方ごろになると話というより噂や都市伝説に近いものになっていた。
しかし、この話は確かめて見たほうがいいかもしれない。
俺は塔が良く見える所で夜を待った。
「・・・お」
赤く、一瞬光ったような気がした。
俺はすぐに確かめようとして塔へ向かおうとする。丁度その時だった。
(白君!すぐにこっちへ来てほしい!)
(シルフ!?どうした!)
(敵が・・・急に現れた!)
俺は塔を後回しにしてすぐにシルフの居るらしい平原へ向かった。
シルフの前方に大勢居る敵を薙ぎ倒し、俺は一息吐く。
「まさか、夜にモンスターが増えるなんて思わなかったよ。」
・・・まさか。
「シルフ、ちょっとあの塔まで来てほしい。確かめたい事がある。」
「内部の調査は君に任せたはずじゃないのかい?」
「もしかすると、敵の根っこだ。」
「・・・分かった。協力するよ」
俺達二人は歩いてあの塔まで向かった。
「「・・・」」
「少し、話すか?」
妖精のララは最近姿を見せていない。
「そうするよ。」
「『支配』」
シルフの足元に風が集まって、シルフを宙へ浮かす。
「四季魔法について何か分かったか?」
「いや、僕が使えない事には調べようもないからね」
「それなら俺が使えばいいんだが・・・」
「必要ないよ。もしかすれば、僕の中ではもう答えが出てるかもしれない。」
「そうか。」
「・・・所で」
「なんだ?」
「君の方こそ順調かい?」
「そりゃあ、まあ。実はエリュシオンの中じゃ俺はお尋ね者になっているみたいで、街に入るのも一苦労だったよ。」
「それは・・・ハハ、街の中でも気を付けたほうがいいかもね」
「だな・・・」
辺りは光源も無く、暗くなっている。当然だ。夜の平原なのだから。
「…」
「…」
それからも会話を続けた。
「ならそろそろ、かな」
よっ、とシルフは動くベッドのような風の塊から降り、エリュシオンの門へ向かって歩く。
「もし君が赤い光を見たというなら、急がなきゃいけない。あと少しで夜が明ける。」
「そうだな…」
塔へ急ぐ。
「乗れ」
「お言葉に甘えて。」
人の姿のまま竜変身をしてシルフを抱えて飛び上がる。ドラゴンの姿だとあの所へ入れない。
塔にはいくつかガラスが貼られていない窓のような空間がある。
目的の階にもそれはあって、そこへ俺は飛び込んだ。
「着いたね。」
シルフは俺の腕からするりと抜けて降り、隠しスイッチに一直線に向かった。
「ここは僕もたまに来ていたんだ。ノームに色々見せてやろうと思ってね。」
ガチャ・・・ゴゴゴゴ・・・
「まあ、白君が連れだしてくれたお蔭で僕もそういう事をする必要は無くなったわけだけどね」
開いていく扉の隙間から少し、赤い光が見える。
「…まだ召喚は続いているようだね」
完全に扉が開き切り、俺達は『祭壇』へと歩いていく。
小部屋。菓子が詰め込まれた袋、水筒、ここで暮らしていたのは間違いなく魔王であるノームだ。しかし、ノームは今は居ない。
「先に行っていいか」
「何か起これば君の方が対処しやすいだろうね。」
俺はその更に奥の大部屋へと走る。しかし俺はその光景を見て驚く。
「・・・シルフ!来てくれ!」
「ああ、分かった」
シルフも到着する。しかし、シルフですら驚きの表情を浮かべ、硬直している。
祭壇からモンスターが送られて、次の祭壇で別の場所へ飛ばされるモンスター達。
一列に並び、祭壇を通じて別の場所へ飛ばされている。
「おい、シルフ。この祭壇は壊してもいいのか?」
「駄目だ。・・・厳重に対策がしてある。もし壊しても・・・モンスターがこの部屋に溢れ出て押しつぶされる。」
「他に方法は無いのか?」
「・・・術者を倒せば・・・止められるかもしれない。この祭壇を使ってモンスターを飛ばすのは必ず魔法じゃ無く『魔術』でなければ出来ない。」
「そしてこのモンスターは全部・・・術者が指定した場所に送っているみたいだ。」
「こんな数を!?どうやって!!」
「それが・・・そうだ。それが分かれば。・・・とにかく、この祭壇は放置するしかない。白君には悪いけど、黒幕を見つけて倒す事が先決だ。」
シルフは次第に落ち着きを取り戻していった。
「シルフ・・・」
「僕は少し調べる事が出来た。ちゃんとモンスターの処理はするから、君は敵を見つけ出して欲しい。」
「…ああ、分かった。」
『黒幕を見つけろ』。エリュシオンにはかなりの人がいる。難しいとは言いたくないが、祭壇の術者を見つけ出すだけなら魔術に長けた人を探し出すだけでいい。
まずは・・・その魔術者を見極める方法を探らなければ。




