表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜の舞う摩天楼  作者: ハイク
第二章 魔王軍
64/68

62話 覚醒進化(7)

~前回のあらすじ~

お姉さんが腹パンされた。

わたし、ウンディーネ。みんなからはウン子と呼ばれているわ。


許さねえあいつ絶対に。



今居る場所はシルフのお城ではないの。何か変な装置に入れられて気がついたら体が縮んでた!


騙したな。あのバカヘタレゴミ研究者。



何があったか困惑しちゃいましたが私は元気です。


元気でありたい・・・。









「プハーッ!」

ここは見覚えがある。そして現在地はお風呂場近くの洗面所。そう、ここは我が家だ。


「ほらほらどいて。」

「・・・」


(そういえば、こんなだったなあ。)

私は姉に押されて素直にどく。その時、目に大きな閃光が走る。

(は、え、ちょっと、もう少し堪能させてよ!!)


体の自由は効かなくなり・・・・・


ドサッと音がする。地面の痛みは後からやって来た。

「アガガガ!いったい足が!」


気がつくと人魚の姿で波によって砂浜に打ち捨てられていました。

あれ、ここ記憶にないぞ。


「と、とりあえず水、水!!」

ウンディーネには空を飛んで楽をする力などありません。私はこの日からウンディーネになりました。

さっきまでの私の本当の名前なんてもう忘れてるとか言えない・・・


なんとか自力で水にたどり着き、海へ潜る。

そういえば、ウンディーネは水の精霊だ。簡単に海の魚などを食べられる。海には凶暴なモンスターなどはおらず・・・・・・


居たわ。



「ちょ、待って!私は味方!!ウンディーネ!!!」

憎きりばいあことリヴァイアサンに追っかけまわされた。彼女は私の事を珍しい獲物と思って追っかけている。


「待ちなさい!おとなしく捕まって!!もう三日も食べてないのです!」

「だからって私を食べないでよ!それにまだ理性あるじゃない!」


この間私とりばいあはこの海全体を使った高速鬼ごっこが展開されていた。


「つ、疲れてきました・・・もう許しませんよ!」

りばいあが大きく息(水)を吸う。あ、これはマズイ。私の力じゃどうにもできんしっ


「お願いしますお願いしますお願いします!許してください食べないで下さいいっ!」

さすがにいつもの強気な態度には出られなかった。プライドなんて物は何一つねぇ!


「・・・あなたは?」

「お、おーようやく気付いてくれたかー。俺はうんでぃーーーーっっね!!この海の支配者になる漢だ!で?どうするわけ?君はヘブゥッ!」


「調子に乗りやすいタイプのようですね・・・。それにあなたは女では?」


威力弱めの水鉄砲を当てられた。威力弱めと言っているが地上で出すと分厚い木の板にへこみが出来る威力だ。


「今回は魚と間違えてしまってすみませんでした。私はリヴァイアサン、この海の覇者です。」

「支配者と覇者どっちが強いか教えてやるよ!りばいあっ!」

「すぅぅぅぅ・・・.....」


特大級のブレス動作を見て私は元々青い人魚の顔を更に青くする。

「覇者のが強かったよ・・・」


この言葉を聞いた途端すぐにその動作は中断した。そしてなんとなくその龍は脱力して、

「なかなかにかわいい生き物ですね・・・どうですか?私と海で暮らしませんか?」

正にウットリといった感じだった。


「そ、そんなー、・・・騙されないぞ!どうせウン子とか言ってからかうつもりだ!」

「そんなことしませんよ!そんなことする人(龍)に見えますか?」

「うっ・・・」


未来では見えるが、今のりばいあにはそれが見えない。


「見えないけど時間が経てばそう見えるようになる!」


これからの日々、普通に貝がらを取ったり普通に美味しい魚を取ったり普通に何事もない日々が続いた。

自然も常に味方している上に私達は海の生物強さランキングがあるとすれば1位と2位(どちらが1位かは長年の疑問)なので、陸から外敵が来ない限りここは楽園のようだ。

それは変な装置に入る少し前も同じように楽しく過ごしていた。

私には過去にも現在にも恐ろしいと思える出来事はない。楽しい友達が出来て毎日二人だけで遊んでいた。とても楽しい日々だ。



「ところで、ウン子さん。」

「またからかったぞこの人!やっぱり最初のソンナコトスルヒトニミエマスカ?は嘘だったんだ!」

「うう、親しみを込めて呼んだらそうなっただけなのです・・・」

「もっと他の呼び方があるでしょ!」

「後でそれは考えてきますしその話は置いといて、ウンディーネさん・・・今日は少し遠くに行ってみますか?」


それは遠足を意味していた。更に遠足が意味する事は・・・


「この家もういいの?」

「まあ、分かるように目印を付けておきましょう。」


りばいあは器用に石を並べ、前の住処の前にトーテムを作った。石で作ったので何か強い衝撃があると崩れてしまうが、これなら分かりやすいだろう。

遠足は子供達のする遠足とは程遠い。一度の遠足に3日で済めば早いといったぐらいだ。私達の移動スピードは体が水中移動に特化しているため早い。私達の『駆け足』が人間が全力で走った速度の更に5倍程度のスピードだろう。それだけこの海は広く、陸が狭い。陸の周りを1週する遊びをしたが、一日半で一周した。私達の時間感覚は少し地上の人間とは違う。



「もし偶然ここを通りかかったらその日はここで遊びますか。」

「そうだね。」


のんびりと楽しかった時間は過ぎていく。

楽しい出来事は、覚えたいと思っても覚えられない。余程心に残らない限り覚える事はないのだ。

私は自分の名前を思い出せない事から分かるように私は覚える事が苦手だ。苦手なんて物じゃなく、私の記憶にはりばいあの姿で全てだった。他の記憶はすっからかんで、何かを思い出したくなる時があるが、結局思い出せずに結局楽しいりばいあとの時間を過ごした。


私には気がつかなかったが、地上ではもう一年が過ぎている。


そんなある日、目の前に突然薄緑色の空気を纏った人がやって来た。

「うわああああああああああ!?」

私は大声を上げる。


「やあ、はじめまして。僕はシルフ。君と同じ魔王さ。」

シルフが・・・私に「はじめまして」?いやいや、こんな研究の事になると何があっても忘れないような耳長い人が私を忘れる?冗談だよね?


「ごめん、俺とシルフ、どっかで会ったことない?」

「僕の記憶には無いね。」


ああ、本当に忘れ去られているようだ。このバカヘタレゴミ研究者。


この会話を聞きつけて帰って来たりばいあ。

「あれ?その人は誰ですか?」

「シルフだよ。ねえりばいあ、会った事あるよね!?」

「ないですけど。」

「へっ?」


まさか、自分だけが見覚えある?

いやいや、まさか記憶力の無さに定評のある私に・・・


「あれ、本当に記憶ないの?私だけ?」

「この子何か言ってますけど、シルフさん、私とあなたは会った事ないですよね?」

「無いよ。という事はこの人魚が変なだけだね。」

「人魚とか言うな、ってか変もいうな。私にはウンディーネという名前があるのだ!」

「そちらは?」

「リヴァイアサンです。こんにちは。で、そちらは何をしにここへ来たのですか?」


「少し君達についてきて欲しい所があるんだ。」

「ダメダりばいあ!こいつは研究者で私達の体を隅々まで調べ尽すつもりだ!」

「と、ディーネはこう言っていますが、行きますね。」

「りばいああああああああぁぁぁぁぁぁぁ......」


「とりあえずウンディーネ、君にも来てほしいんだ。」

「え、嫌だよ。誰がそんなとこ」

「あーあ、付いてきてくれたらお礼に美味しいお菓子でも用意してるのになあ。」

「あんぱんっ!!」

「えっ、まだ僕は何も言っていないのだが、・・・正解だ。」



そう、この人は研究に貢献すると必ず『あんぱん』という食べ物をくれるようだ。

あれ?本当に皆覚えてない?私だけ?


「こうして、食べ物でつられてしまった私ですが、今も元気です。生きています。

私は食べる事が大好きで、そのためならなんだってしてしまいます。

それもこれも私の知能が低いせいです。こんな脳みそさえなければっ!!」


「何いってるんだい。君は運動能力に殆ど持っていかれてるだけじゃないか。」

「それが嫌なんです!中途半端な知能なら無いほうがマシだぁッ!!」


適当に検査され結果を報告される。ここ病院か?強制検査の施設か?見た目普通の白のお城なのに?

まさか白いお城ってことで病院を意味してるわけじゃないだろうな?

「仮にも君は『魔王』だ。だから戦わなくちゃいけない。そのための生き残る力があっていいじゃないか。」

「本当の幸せは、死ぬ事だあああああああ!!」

「あんぱん食うかい?」

「本当の幸せは、食べる事です...」


シルフにねだればいくらでもあんぱんがやって来る。そこまで量産されているにも拘らずそのあんぱんはこの世の物とは思えない程のおいしさがあった。


私はその丸くてふわり、中には甘美な餡が入っているパンを齧りながら、質問した。

「あの、私の状態ってどんな感じだったんですか?」

「興味があるのかい?」

今はリヴァイアサンとは別の部屋、シルフの配下が面倒を見ていると言っていた。

シルフは何かが書かれた紙を見ながら椅子に座っていた。



「軽く調べさせてもらったんだけど、君には本当に僕との記憶が入っていた。その記憶の先には僕が作ったと思われる装置もあった。簡単に言うとね、君が今ここにいる場所は『過去』の物なんだ。」

「君には記憶を整理する力が少ないだけで本当の『記憶』はしっかりと覚えていたよ。」


「え・・・じゃあ。」

「僕が説明している記憶からその装置の目的を推測するとね、君はどうやら強くなるためにその装置に入ったらしいんだ。君も装置から出た人間を見た事があるようだ。白髪の、種を使って君達の攻撃を無効化した人間が。」


思い出そうとする。だがあまり思い出せない。


私が頭の上にハテナを浮かべているとシルフが更に説明する。

「君はすぐにその生活をやめて強くなるべきだ。じゃなければ死ぬ事になるのかもしれない。敢えて元の時代と呼ぶが、元の時代の状況は深刻なようだ。僕たちにとっては単なる未来の出来事なのだが、そこでは時間がないようだ。すぐに強化を受けよう。」


「ここ、が、過去。で、元の時代、が、現在?ん??」

「証拠は君の記憶しかないが、前後の記憶がしっかりと保存されているのなら君の言葉が妄言とは言えない。例えその記憶が嘘の物だったとしても僕にはしっかりと君に協力する義務があるはずだ。」


「少しリヴァイアサンの所を離れる事になるけどいいかな?」


りばいあと離れる。それはこの過去の世界で離れ離れ、もう一生戻ってこない別れを意味していた。

「え…?嫌だよ、だってそんなの…。」

「君は『元の時代の』リヴァイアサンと居るべきだ。君が本当に好きなのは、今の時代のリヴァイアサンではなく、オリジナルのリヴァイアサンだろう?」

「ここと・・・オリジナル。」

「君は普通なら絶対に出来ない手段でここへ来た。君が本当にしたい事は強くなって本当のリヴァイアサンと仲良くなりたいからじゃないかな?」


「そうだ・・・・・・・・」

なぜ皆に私の記憶が無かった?それは私が皆と出会う前の過去だったからじゃないのか?

そうだ・・・海岸に打ち捨てられた時、なんで気がつかなかった。"最初もそうだった"って事に。

リヴァイアサンと会う時だって全く同じだった。追いかけられて説得して友達になった。

私は私の頭の悪さを呪った。


「僕は準備に入る。それまでリヴァイアサンに別れを言っておいてくれ。僕からじゃ伝えられない事だ。」

シルフは私の横を通ってドアを開ける。


その数分後、元の時代より一回り小さいリヴァイアサンが入って来た。

「戻ってきました。どうしたんですか、暗い顔をして。」

「うぅ・・・っ、りばいああああああ!!」

しかしここは地上、足が魚の私は歩き方を知らなくてコケる。

りばいあは蛇のように這うことで地上での動き方をマスターしていた。私は両手で手で這おうとしたが、少し進もうとしたら鱗が引っかかって痛かった。


「だっ大丈夫ですか!?」

「う、うん、大丈夫・・・そうだりばいあ。私がいなくなると寂しい?」

「…寂しいに決まってるじゃないですか。」


心配したりばいあが私を器用に椅子に座らせる。

「だよね。・・・実は、そのことなんだ。」

「何かあったのですか?」

「私は、未来から来たんだって。」

「そんな丸わかりな嘘どうして信じるんですか...」

「いや、本当に私は分からなかったの。シルフからしたら私は初対面なのに、私はシルフの事を知ってたし、りばいあだって最初なんで追いかけて来たのか分からなかった。」

「それははっきりとした嘘です!ディーネもそんなの信じちゃ駄目です!」

「いや、本当の事しか喋らないよ、シルフは」


りばいあにはこれが洗脳された人のように見えるだろう。


「私が何を言っても信じないと思うから・・・これだけは言っておくね。今までありがとうね、りばいあ。」

「ウンディーネ・・・!!」


りばいあから怒りのような感情を感じる。知らない人に友達を奪われたような、そういう怒りの感情。

今シルフが入ってくると本気の水鉄砲を食らわせてくるのだろう。

私はそれを必死になだめた。


「はぁ。やっと収まった。私と離れるだけでどれだけ泣いてるのよ。」

「そっちもこっちに来るなり大声出していたじゃないですか。」

「ああ、ちゃんと話したかな?そろそろ出来るから行こう。」

シルフがやってくる。りばいあはまた怒りの水鉄砲を出そうとする。


「ま、待って!本当に待って!」

叫んでいるのは私だ。


この後何とかなだめて、ようやく行く時が訪れた。

「別れはいいかい?」

「もう言った。」

「少しリヴァイアサンはこの子と遊んで待っていてくれ。」


天井からりばいあの前に白衣を纏った赤スライムが落ちてきた。


私はもう振り返らずに進んだ。(シルフが台車に私を乗っけて運んでいた。)

さっき来た時は無かった場所に扉が付いているような気がする。案の定その扉に案内された。


「ここだ、ついさっき完成したばかりだけど機能は十分だ。」

「その台に寝て欲しい。」

私は頷いて、シルフはそれを見て私を台に載せた。


丁度私が入れるカプセル状になっていて、中では頭に取り付けるような何かの装置があった。

「それを被れば始まるよ。準備が出来たら被って欲しい。」

すぐに私はそれを被った。


何だか…眠たく……。


目が覚めた。場所はさっきと変わらぬカプセルだった。

「やあおはよう。」

「ちょっと待って・・・今何が起こったの!?」


シルフは無言、無音でこちらへ来る。シルフはいつも動く時は風が吹く音がしていた。


私は目をカッと開き、足りない頭でシルフの情報を探査する。

「偽物。」

私はこのシルフから逃げた。

よく見ると、壁が真っ黒に塗られている。


え?え?


今更になって気付くが、これは『ホラーゲーム』という物ではないのか。今となっては顔も思い出せない姉が少しだけやらせてくれた。その時はかくれんぼ形式のホラーゲームで何度もゲームオーバーになり、ゲームオーバー前のとても怖い演出から私は何日か眠れない時があったのだ。


え、まさかこの真っ黒になったシルフが鬼?

「いやあああああああ!!!」

あれ、足がある。ここはやっぱり夢なんだ!


もう使い方を忘れた足で走る、こけそうになったらバランスをとって何とかあの黒いシルフから逃げる。

最初の、目の前にある扉は簡単に開いたが、開いた先が問題だった。

「え、ここどこっ!?ギャアアアアアアアアアア!!」

とにかく走る、どこか分からない不気味な洋館の中を走る。暗いけどなんとか走る。

真っ黒なシルフは見えなくなった。



この先適当に謎を解いて進むのだが、私には人魚であり魔王だ。力があった。強引に仕掛けを解いて進む。


その途中、タンスの裏に隠れていた真っ黒シルフが飛び出し、私は叫びを上げながら逃げ続ける。


「ホワアアアアアアアアア!ホワアアアアアアアアアアア!ホワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

「み、見えなくなった。ここどこおおお!もうやだあああ!」


流石にこんな恐怖は一度も体験した事がなかった。

もうこれ絶対眠れないわ。そう思っても真っ暗な謎の館は私を外へ帰してくれなかった。

体力も尽きてきた。叫びながら走ったせいでもう気力体力共に限界だった。


ドアを開ける。

目の前にはベッド。寝室だろうか。

「う・・・怖いけど・・・もう寝たい・・・寝てもう終わりたい。」


眠気には勝てなかった。ベッドに吸い込まれるように入った。


起きるとそこは明るい館。いきなりのピカピカの装飾に目が痛い。

「やあ、こんにちは!僕はトミー!」

(だ、誰?)

「君にプレゼントを持ってきたよ!」


その子供は急にやってきて、白の箱に赤のリボンがついたプレゼント箱を渡す。

「さようなら!」


子供はすぐに去って行った。

(プレゼントは何・・・?)


いや、開けたくないぞ。


しかし開けた。気になっては眠れない。悲しい人魚のさがだ。

中にはお菓子・・・らしきものがある。丸くて水分が無くて、その上には甘そうな匂いを放つトッピングが。


(た、食べよう)


しかしこれを食べた。食欲には勝てない。悲しい人魚のさがだ。



「ハッ!!」

目が覚める。目の前は暗い寝室。


…まずい、今来られたら…


奥のタンスから真っ黒シルフがやってきた。

「ピャアアアアアアアアアアアアアア!!」

悲鳴をあげ、ベッドから飛び降りる。




その後もなんとか逃げては謎を強引に解き、ようやく終わりの時が見えた。

ガチャリと最奥の部屋のドアを開けたウンディーネ。

その目の前には真っ黒ではない、緑色のシルフが立っていた。


「おめでとう。」

シルフの後ろから次々と私の記憶にある・・・魔王達が出現した。

「おめでとう。」

「おめでとう。」

「おめでとう。」

「おめでとう。」

「おめでとう。」

「おめでとう。」


「あ、あ・・・」

なにこれ怖い。


「さあ、この箱を開けてよ。」

幾らなんでも入りきらないサイズの箱から小さなポケットから取り出された。

その箱を軽々と私の目の前に置いた。



「・・・中身は?」

もう私の目は全ての人を疑う疑いの目になっていた。


「開けてみてからのお楽しみ。」


シルフはそんな私を嘲笑うかのように最適な答えを言う。

こう言ってしまえば気になってしまうため開けざるを得ないのだ。


「う・・・うう!」

目を瞑りながら箱を開ける。色なんて周りは明るいのに真っ黒だ。


「え、紙?」

そこにはしわくちゃになった紙があった。今見えている所は裏面のようだが白い。

私はその紙を開こうとする。少し手をかけたら、その紙は自律的に開き、私を覆い尽くす。


「見~た~なー!!ハーハッハッハッハ!助けてくれたお礼にキサマに呪いをかけてやろう!」


子供向けの玩具のようだが、私は子供だ。アイムキッズ。簡単に信じた。

「呪い!?やめてください!」

「問答無用ッ!!」


パン、ッパン、パァァン。視界が三度もフラッシュする。

「キサマに呪いをかけたぞ!その呪いは水があれば水を操る事が出来るのだ!どうだ参ったか!」


(う、うん?)

人魚は気付いてしまった。これ呪いじゃないよね?、と。

「他には?」

「他にはない!キサマだけの呪いなのだ!!ハッハッハ!!」


人魚は思った。この紙内心冷や汗掻いてるな、と。


「さて時間のようだ!ハーハッハッハッハッハ.........」

紙は徐々にしぼんでいき、どこかへ消えていった。


後ろには真っ黒シルフ、目の前には緑シルフその他大勢が真っ黒になりかけていた。

(ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!)


もうだめだ・・・おしまいだ・・・


私は気絶した。


目が覚めるとそこはカプセルの中、外は明るく、シルフもシルフらしかった。

「恐怖を与え過ぎたようだね。」

「キサマああああああああ!!よくもおおおおおおお!!」

私は全ての元凶に掴みかかろうとする。しかし今の体は人魚のもの。歩く事はできない。


「ああああああああああああ!!私の鱗がああああ!」

「騒がしいね。僕は君を助けているのに。」

「助ける方法がひどすぎるわっ!」


突然ホラーゲームに放り込まれた人の気持ちを考えた事はあるのか。


「あんぱん食うかい?」

「…ください。」

待っていましたと言わんばかりにシルフはあんぱんを一つ取り出す。


「幸せだぁぁぁぁ」

「君にはもう力が付いていると思うよ。君自身が手に入れた力だ。僕はもう満足したし、僕の来るべき未来に向けて研究を続ける事にするよ。」



その言葉を聞いた直後、この世界は真っ黒に染まり、私はあの時の恐怖を思い出して震える。

「覚醒の試練、過去を断ち切りました。これからあなたには次の試練へ行ってもらいます。」

「え?え?あんぱんはどこに行ったの!?」


何も言わずに変に人間らしくない声は扉を用意する。

「はい?何も分からないよ!?ちょっ待て俺は海の支配者ウンディーネっ・・・」

何も聞こえていないようだ。


渋々地面を這って扉を開けた・・・


ぱちゃん。


「ひゃっ、冷たっ!」


水の上でぴちぴちと跳ねる。

「こんなところにいたんですか!ウン子さん。」

「その呼び方をやめろおお!ってあれ?」


そのりばいあは前見た時より大きかった。

「まさか、りばいあ?」

「そうですが、何か?」

「うう、りばいああああああああああっ」


私は冷たい水も我慢してりばいあに抱き着く。

「やっぱりりばいあは私のりばいあだああああ」

「ちょっ変なことを言わないで下さい!」


「あーいちゃついているとこ悪いんだが…」

私は誰だと思ってキッと鋭い眼光を声の方向へ飛ばす。


「ああ、ウンディーネもいるのか。話が早い。」

「どこから来た!白髪しらが人間!」

「なあ。そこの人魚になんでこんな嫌われてるんだ俺?」

「知りませんよ。何かあったんでしょう?」

「いやいや、俺何も思い当たらないんだけど」


白とかいう少年はりばいあと仲良くなっている。


「許さない!ウォーターエクスプロージョン!!」

水で水を爆破する。


しかし少年は慌てずに種をひとつ出しただけで回避した。


「おい、本当にどうしたんだウンディーネ…俺が何か悪い事でもしたか?」

「した!私達を知らない装置に入れた!」

「まだ恨んでたのか・・・もう世界は救われたんだし装置に入ったお前らのお蔭でもあるんだぞ?」

「世界・・・救われた?どゆこと?ねえりばいあ?」


二人とも「あっ…」という声を漏らす。


「考えられる理由はタイムスリップや記憶喪失ぐらいですね。」

「ああ。原因は覚醒進化装置だと思う・・・つまりコイツは」


二人の目からギラギラと光を出しているように見える。怖い。


「とりあえずシルフに言うか」「とりあえずシルフに報告ね」



「え、シルフ!?やだやだやだ!あんなヘタレウザ最悪研究者なんか嫌だ!」

「一体シルフに何されたんだ・・・」


二人の阿吽の呼吸で私を連れ去り、シルフの城へ運ばれる。


「いてっ、なにすんのよ!」

「床スレスレで呼び出したら床に埋まる事があるが、それがいいのか?」

「何わけわかんないこと言ってんのよ!」

「性格変わってるナー」

「私は怒ってるのよ!!」


やがて声が聞こえたようでシルフがこちらへ来る。

「今日は何だい。」

「こいつを診てほしい。」


白は指差してコイツと言った。許せない。

「ああ、僕の方で何とかするよ。」

シルフに台車で連れていかれる。


「もういやだー」

「確かに少し変かな・・・」


バタバタとする私にシルフは独り言を呟くだけ。


「何かあったのか」

「~~~、~~~~(あ、ウンディーネちゃんこんにちはー)」


頭に羽の生えた子供、赤くて白衣を纏ったスライムが出迎えてくれた。


「この人を診てやって欲しい。何か変だ。」

白からはあまり事情を聞いていない。


「ああ、そんなことかシルフ様。」

「~~(何かあったの?)」


「少し寝かせてやってくれ。その間に僕たちはウンディーネの体を調べる。」

「~~、~~~~(そういえば、なんか人魚の姿だねー)」

「え?え?」


私は困惑していた。寝る?調べる?


「じゃ、そこのベッドに横になって。」

「よ、横になりはするけど、これから何が始まるん・・・です・・・か?」

「軽く調べるだけだよ。」


そう言ってシルフは私を抱き上げ、ベッドに寝かせる。


「え、ちょ、え?」

「拘束。」

「~(はい。)」


スライムがバンドみたいな物を四つ取り出す。

それをシルフが受け取り、私の手足を(足だけ魚のものなのだが、バンドを二つ使って)固定された。


「え、これから何が始まるんです?」

「これから寝てください。」


寝やすいようにふっかふかのベッド、ふっかふかの布団、ふっかふかのアイマスクなどを付けられた。

「ね、眠れないし気持ちいいけど眠れないしっ!」

「そんなに眠れないならクスリでも飲むかい?」


『クスリ』。その響きは悪魔の言葉。

「はい。寝ます。」


意外とあっさり眠りについた。

私が見た夢は人間のように両足があって砂浜を誰かと走っている夢だった。


「ん、んん?」

「おはよう。」

私は目を覚ました。それとほぼ同時にシルフは挨拶をした。


「長い間眠っていたね。もう3日だよ。何か辛い事でもあったのかい?」

シルフが優しく問いかける。

「キサマの恐怖体験のせいで私は眠れなかったんだああああ!!」

ガチャガチャ。まだ拘束されているようで動けない。


「確かに過去の僕は君に悪い事をしたね。それは謝ろう。しかし君は強くなるためにここにいる。違うかい?」

「いいや違うねッ!私は楽をするためにここに居るのさッ!!」

「ウンディーネはやっぱりウンディーネだ。」


シルフは安堵の溜め息をつく。


「じゃあ君はリヴァイアサンと仲良く暮らしたいかい?」

「そのために私はここにいるんだ!!」

「ならリヴァイアサンと仲良く暮らすといい。今のリヴァイアサンは君が突然いなくなって寂しがっていたんだ。」

「シルフ?」


「君が過去の姿だったとしても君が期間を終えるまではしっかりと愛してくれるよ。」

「君に残された期間はあと2年と7カ月だ。その間たっぷりとリヴァイアサンと楽しむといい。」

「期間?何を言ってるの?」


「君は覚醒進化装置に入って4年を過ごす。元の時代では2年が過ぎた頃に帰ってくるだろう。」

「え?かくせいしんかそうち・・・」


そういえばそんな装置をシルフに入らされたっけ。シルフは続ける。


「この時代では先日ウンディーネが突然居なくなった。この世界をくまなく探しても見つからなかった。」


私が、いなくなった?突然?りばいあを置いてまで?


「白にはまだ伝えてない。さっき僕は白にリヴァイアサンからウンディーネにあることを伝えて欲しいように言うように頼んだだけだ。すると君が見つかった。過去の状態で。」


「このことから推測するに、この時代は君が居る間この時代のウンディーネは存在しない事になっている。」


え?私が私を消した?


「ちょっと待って!私が悪いの!?」

「誰も悪くない。僕は君がいる間と言った。君が期間を終えて帰還したらちゃんとこの世界のウンディーネは帰ってくるだろう。あ、今のは期間と帰還を「もういい。」」



「私はこの間りばいあと楽しめばいいの?」

「楽しみながら、リヴァイアサンに色々教えてもらうといい。」

「わ、わかった。ところで、この変なのいつまで付けるつもりなの?」

すぐにシルフの顔が豹変する。

「それはねぇ・・・」


「冗談はいいから早く外して?」

「分かったよ。」


私は今、解放された気持ちと共に台車に押されている。


外に出て、空を飛ぶ白にお持ち帰りされて今海のど真ん中に落された。上空から、海まで。


「もう絶対許さねえええ白髪しらが老人じじい!!!!」

びちゃびちゃと水で音を立てながら反抗する。

「さっきの仕返しだ!口が悪いウンディーネには似合ってるぞ!」

「ぐぬぬぬぬぬぬ....」


白は飛び去って行った。



「あ、ウンディーネ、どんな感じでしたか?」

「シルフに思いっきりりばいあと遊んで色々な事を教えてもらってこいと言われた。」


するとりばいあは少し安心したように、

「そうですか、じゃあ楽しみませんか?心ゆくまで。」


私も笑顔になって、

「うん!」

と無邪気に答えた。


私の人魚生活はまだ始まったばかりだ!

次回はウンディーネの続き。リヴァイアサンの回はもう少し後になります。


・・・見てくれた人に感謝。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ