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桜の舞う摩天楼  作者: ハイク
第二章 魔王軍
60/68

58話 覚醒進化(3)

12/30 ちょっと書き忘れた描写があったので追加。


前回のあらすじ

クレア(友達であり恋人)と再会したら地獄に飛ばされたので悪魔を倒します。


「城の中で作業といってもまずはどうすればいいのですか」

子供にしてはしっかりしているように見える。

それに応えるように魔王という立ち位置の少年は、

「いつかの時のためにマニュアルを用意しておいた。これを今日中に読破するがいい」


これを聞いて表情を一切動かさずに出た言葉は、俺達を長い間悩ませる事になる・・・

「僕、文字とか読み書きできませんよ。」


魔王はどこぞのギャグかのように目を見開き口を大きく開けていた。


その後色々なテストをした結果、

「それにしても、この子一体どうすればよいのだ。読み書きも出来ない、肉体労働も出来ない、更には戦闘にも出せない!!」

「けど魔王軍に入りたいと思ったなら何かしらの理由があるんじゃないか?」

そう言って俺は続ける。

「やる気だけは十分みたいだし」


「実は・・・自分には親がいないんです。」

「さっきのは親ではないのか?」

「親だけど・・・親ではないです。優しくもないです」

お母さん息子に嫌われてますよ。


「そういえば魔王様、ここにいる人達は全員死者じゃないんですか?」

「現世の魔王は勉強熱心だな、惚れ惚れするぞ。死者同士で仲良くなれば子供が生まれる事もあるのだ。」


「あの・・・」

途中で話が切り替わったからか少し怒っているように見える。

「すまんすまん、その親をどうしたいんだ?」

「殺したいです」

・・・よくある典型的子供の考えだ。

しかし、7歳ぐらいの子供がこんな考えを持つとは物騒な世の中だな。

「どうして殺したいんだ?」

「理由なんてありません。ただ殺したいです」


魔王が唐突に笑う。

「その野望だけは立派だな、だがここは力が正義の実力主義社会だ。」

「だが、親を殺すのならまずは我を倒せるようにならなくてはならない!」

「魔王を倒せれば親など一捻りでつぶせるだろう!」


これがこの世界の考え方か、とその子の道を正す事は諦めてしまった。


「見た所お前にもオーラが宿っていないようだが・・・付いて来い、決闘場だ」

「もちろん観戦席もあるぞ、現世の魔王。」


子供を連れて行ってやって来たのはタイマン専用の小さいリング状の舞台。空は石のようなものに覆われていて見れない。周りにずらっと席が並んでいる。一部の席がボロボロに砕けているが気にしないでおこう。俺は適当にキレイな席へ座った。

「今回はこのボロ剣で行う。」

「貴様もこれが特訓とは思わず本気で来い。」


「は、はい!」

少年がプルプルしながらボロ剣を構える。

「では、始める」

足音一切せずに少年の懐へ入り込む。

「もらった!」

魔王は容赦なしにボロ剣を弾き飛ばす。


「・・・え?」

少年は何が起きたのかわからないといった顔で戦意を失っていた。

「最終的にはこういった感じになってもらう。」

「む。無理だよ」

「お前の覚悟はそんなものだったか?」

「無理だよ!!!」

少年が俺の耳にもキンキン響くぐらいの大声を出す。

「こんなの、僕の知ってる剣じゃない!」

「なら何の剣を知っている?」


天破滅翔てんはめっしょう流、最終奥義」

剣を取りながら最終奥義と言っている。

「獄滅の太刀!」

少年がボロ剣を一振り。一瞬だけ力が発揮されたが、その一瞬はとても短く・・・

ボロ剣は更にボロボロになり刃は消えてなくなった。


「貴様にはノンフィクションとフィクションの違いを突きつけることから始めないといけないみたいだな?」

何だこの剣はと言わんばかりの威圧をかけている。

「まずさっきの!あれを使えばこのつるぎじゃ耐える事すらできない!」

「確かに某アニメにてボロ剣でこの技を使っていたが、それは作り物だからできるというものだ!!」


「実際には存在するのか・・・」

つい口が出てしまった。

「本当はあの剣はな、超超超特殊な作り方で作った耐久性抜群の剣なのだ」

「だからあの派手で耐久殺しの技を使う事も許される!」

「あんな技使ってしまったら魔剣であろうと10発で終わりだ!」

「獄滅の太刀といったか?その技を見ただけですぐ使えるお前の技量は生まれついての物だろう。だが!」

だが!の部分が決闘場のドームに激しく木霊する。

「お前にはまず知識をつけることからだ。そうでなければお前に剣を預ける事はできない!」


「だが読み書きが出来ないのにどうするんだ?魔王様」

「ぬぅぅ、仕方あるまい、文字を教えるしかない!」


こうして文字を教える事が始まったわけだが、3時間ほど経った今でも1文字もマスターできていない。

――6時間、0文字

――9時間、2文字

――12時間、3文字

――15時間、2文字


「おい!なんでさっき書けてたのにできなくなってる!」


――18時間、6文字

――21時間、12文字

――24時間、32文字


どうやらコツを掴んできたようだ。

「さすがに疲れたな。今日はもう休む。また明日やろうではないか」


「はい・・・あ、あの。ありがとうございました!」

「そんなことは全部覚えた後にすることだな。」



――――――明日、0文字


「・・・」

今の魔王様はピキピキと怒りゲージが上がって行っているとこだろう。


これから地獄の文字教えが始まった。

そして、3カ月ほど経った頃。

(なぜこんなに時間を浪費してるんだ俺は)

当初の目的を思い出す。

4年で強くなって神に挑む。

なのに今はどうだ。子供に読み書き教えてるだけじゃないか。


そして相変わらず一晩寝たらすべて忘れている。

一部覚えている字もあるみたいで、たった2~3文字だが先はとんでもなく遠いだろう。


「俺、あと2年と半年で死ぬんだ」

「貴様にはそれぐらいの気持ちがなくてはな。」

「魔王様。事情は話せませんが俺にはあと2年しかありません。」

「知っている。」


そういえばこの魔王他人の記憶覗けるんだったな。


「貴様にはあの少年を見てどうも思わなかったか?」

「え?」


「奴には力がある。膨大な量が眠っている。それを呼び覚ましたくは無いか?」

俺には何も感じられなかった。ただの子供だと思っていた。

だが、考えてみればおかしい点は少しばかりある。

一晩寝たらすぐ忘れる特異体質。

必殺技とかは見ただけで出せる異常さ。

技術量だけでは俺達を軽く上回っているだろう。


「貴様にもやっと分かったか。」

「おい少年!決闘するぞ!」

「は、はい!」


久しぶりに見たこのステージ。

イスは相変わらずボロボロとかキレイなのとか差が激しい。

「前やった時とルールは一緒だ。」

「このボロ剣で我を倒してみろ。」

少年は少しふらつきながらもしっかりとした顔つきで剣を構える。


「っ!!」

魔王が動き出した途端、少年は姿を消した。

姿を消したように見えるだけでうっすらと影は映っている。

真斬留剣しんざんりゅうけん

少年は軽く空気を撫でる様に斬る。白く輝く軌跡がずっと残っている。あれ、俺達文字しか教えてなかったよな?

「っく!」

なぜか魔王は追い詰められているようだ。

しかし、少年が剣の軌跡から外れた時、

「居合!」

速攻で動き切り抜ける。


「幻影老剣」

斬られたはずの少年は人型の影となって消え、複数の幻影が魔王を斬り抜けては消え、斬り抜けては消える。

そして最後に本体が姿を現し斬ろうとした時。

魔王は微笑んだ。


「もうバテているのではないか?」

魔王が居たと思われる場所は霞の様に消え、少年の上空には少年を取り囲む様に複数の顔のようなもの達が笑っていた。

皆それぞれどうした?その程度か?体力もないんじゃなぁ?弱い?小さい?などと小言を何枚にも重ね合わせ少年の耳に延々と流し続けた。


「あ・・・・や・・・やめろお!!!!」

「やめて・・・」

少年は恐怖で座り込む。

こちらから見た的にはそれほど怖くないのだが、やはりオーラというもので精神を崩しているのだろうか。

よく見るとカウンター合戦じゃないか。

「もらった!」

剣を少年の目の前で寸止めする。


「相変わらず技は完璧だな」

「では、我と共に行こうか。コイツを実戦へ連れていく。」


俺達3人はゲートへ飛び込んだ。

当然のようにゲートの先は空。

俺と魔王様は大丈夫だがこの少年は危ない。

魔王様はそこらへんのことは何も考えていないようだ・・・

「へぶっ!」

時間が無い。空中で少年の手を掴み、斜め前に空中ジャンプする。

ゴロゴロゴロ・・・よく転がったがダメージは無しだ。

「わ、我にも救いの手を・・・」

「魔王なら自力で何とかしろ」


立ち上がって次の目的地を見る。ここの普通の地面との境がくっきりと見えるほどに極寒の大地が広がっている。

雪・・・で作られた橋だろうか。吹雪が吹き荒れる大地と地獄の大地を取り仕切るように存在している。


「進むぞ。」

「防寒具はないのか?」

「ここは黄泉の国だ。温度などとうの昔に忘れた。」

なぜか少年も頷いている。確かに、目の前に吹雪が吹いているのに冷たさひとつ感じない。感じないのだが・・・体力はどんどん落ちている。


「さすがに温度は感じなくても防寒具ぐらいは付けたほうがいいんじゃないか?」

「そんなもの要らないと言っているだろう。」

ずんずん進んでいく。


「ここだ。」

目の前には何も見えない。どうやら雪原のようだが。

「出てこい!いるのは分かっている!」

「まさかこの俺様のステルスを見破るとはなぁ」

「まさかとは思うけど勘じゃないよな?」


俺の言葉は無視して話が進む。

「この姿を見られたからには生かしてはおけん!覚悟しろ!」

「我の名は魔王りんご!!貴様を成敗してくれる!」

「魔王が成敗って言うのか」

「俺の名は下級悪魔サーチャー!貴様ら魔王を倒して、大悪魔に上り詰める悪魔だ!」

悪魔が名乗り、弓を召喚する。かなり使いやすそうな弓だ。


「いざ!」

「尋常に!」

「「勝負!」」


「少年。俺達はあちらで見ていようか」

「貴様らも戦うのだ!基本は1人に対して3人だ!」

「タイマンではなかったのか?」

「地獄にルールなど不要!力こそが正義なのだ!早く来い!」

そういうものか。


俺には特別に作ってもらったこの剣がある。

この子供には普通の扱いやすい剣を作ってもらっているようだ。

「ぬうぅ・・・ここは流れ的に一騎打ちではないのか!」

敵さんも怒っているようだ。結局このあくまの方が心キレイじゃないか?


俺は地面に剣を突き刺していつでも敵の弓矢をガードすることにした。

当初の目的はこの少年に実戦経験を積ませる事だからな。


「小手調べに・・・ストレイトショット!」

威力の高い矢を放ってきた。

「遅い」

魔王は相変わらずタフだが、このままだと少年が避けきれずに直撃する。

「シールド」

オーラで分厚い盾を作り、魔法で射程内のどこからでも発生させる技だ。

この盾、強度がどれぐらいかは知らないので盾が破られて少年に直撃したらとんでもないことになる。


ッカン。

矢を弾いた。

だが矢は勢いを失っていなかった。

なぜか矢じりは進む方向に合わせて常に最前線をキープしている。

つまり弾いたはずなのだが、なぜか反射した光のようにまっすぐ進んでいるのだ。


その先。魔王。

まだ気付いてはいない。俺は無茶をした。

「オーラボックス!」

オーラで作った箱の中に矢を閉じ込めた。

この使い方。魔力とオーラの使用量が均一ではないので危険な気がするのだ・・・

「あああっ!」

右手・・・オーラを直に受け過ぎた手に鋭い痛みが入る。

「なっ!?貴様、我が配下に何をしたっ!」

「・・・だから育成なんて面倒なんだ」

剣にエンチャントをして過剰魔力は無くなった。

出来た剣は前の剣よりも軽く、そして鋭い。


風。空気のエンチャント。溢れてしまった魔力を使い、俺の武器に満足するまでエンチャントを施す。

空気と完全ではないが同化しているため振り心地は最高のはずだ。

俺の身体には魔力とオーラという二つの異世界の要素が混じっている。

片方の要素を使えない代わりに身体能力の上昇、魔法とオーラ両方の力を使う代わりに高威力かつ万能の具現化が出来るようだ。

丁度さっきのように盾を召喚したり、箱を作ったり。

両方の力は反発しており、どちらかが欠けると一気に欠けた一方の器に流れ込み、激痛と共に俺の体は破壊される。多分そうだ。


「行くぞ・・・許さんからな」

ビュン、力強く飛べばあくまも逃げられまい。

軽く切り上げ、慣性を利用して回転しながら斬り、地面に足をつく。

「フフフ・・・ハハハ」

「偽物には所有者のオーラが必要なんだよな?」

具現化しながら突く。偽物のオーラと本体のオーラを繋ぎ、ダメージを共有させる。

「ナ・・・ぎゃ・・・・」

奴は近くの草むらに隠れていたようだ。

剣を抜き、首を斬り落とす。

驚き、しかし笑いながら崩れていく顔は間近で見ていて気分の良い物ではなかった。

悪魔はその場で塵となり、ひと吹きの風で散り去った。


「ふぅ」

一息つく。

今回の戦いではっきりと分かった。

余裕なんてない。


俺は魔王にこう言った。

「魔王様。俺には仲間を守れる程の余裕がないことが分かりました。」

そうすると魔王は、

「そうか。なら一つ改善点を教えてやろう。」


「貴様は動いた方が強い。縦横無尽に飛び回っていれば貴様のしたかった『守る』とやらも簡単にできるだろう。貴様が動かずに守りに徹するという作戦自体は良かったが、貴様のスタイルにとても合わない作戦だ。それに・・・・」

魔王は少年を見る。

「貴様の介護が必要な程、我等は弱くなんかないぞ?」


思い出す。

彼は動けなかったわけではない。

気付いていながら、あえて動かなかった。

矢を真正面から迎え撃つつもりだった。


「申訳ない・・・」

「謝る必要などない。魔王にとってそれが一番の不服だ。」



これから何日も休みなく悪魔と戦い、城では少年に文字を教える。

少年の名前について聞いてみた時があったが、魔王曰く無理だそうだ。

そして、俺は最終決戦に突入する・・・







わけではなかった。

タイムリミットなのだ。

俺は魔王に相談しようとしたが、かえって不快になるだけだろうと思い今まで隠してきた。

そろそろ『過去』と合わせて4年が経つ。

俺は外に出て、誰も見ていない所で魔力とオーラの混合技、『術』(俺命名)を使っていた。


「っ!!」

オーラと魔力を混ぜてまるい弾を作る。

それを残りの魔力で勢いよく飛ばすと、敵に当たれば破裂して内部から破壊するし、地面に当たると跳ねる。

今回はこの操作だ。弾を思い通りに動かす。

魔力とオーラを少しだけ放出し、弾を自由に動かせる領域を作る。

この領域の中だとどのような状態だろうと好きにこの玉が動かせるのだ。



「お前か。現世の魔王」

魔王か。

「少し練習だ」

「珍しいな、お前が練習とは」


俺は弾と領域を片付け、適当な所に座る。


「今日が、終わりだ。」

「終わり?何の話をしている」

昔の魔王は俺の記憶を覗いて知っていると言っていた・・だが、この二年の間壮絶な戦いだった。忘れていても仕方ないだろう・・・

「知りたきゃ俺の記憶でも探ってみるといい。」

「あ、ああ」

魔王は恐る恐る俺の頭に手を置く。


「・・・そういう事か。」

「ああ。別れだ。」

「お前は役目があってここに来たんだな。」

「ああ。元々はそのつもりだ。」

「・・・お前の抜けた穴は大きい。我は決戦まで持たないかもしれぬ。」

「仲間はいらないのか?」

「決戦には我と貴様しか入れぬ。となると我は一人だ。」

「あの少年では駄目なのか?」

あの少年は、未だに名前がない。少し調べたところクーという名前らしいが、この子はその名を嫌って使おうとはしていないようだ。

「・・・名前が無ければ魔王には成れぬのだ。」


体の感覚が薄れていく。俺の意識も朦朧としてきた。

最後に俺は術を使い日本語ではない文字を書く。

『ありがとう。さようなら。』と。


意識が戻る。

懐かしい。覚醒進化装置から目が覚めた。

少し違和感があるが。と思い確認。どうやら俺の体にはまだオーラと魔力が流れている。そして、あの時オーラによって出来た赤黒い右手はどこにも跡がなく、綺麗な肌色だった。

「あ、サトルさん。」

「クレア、お前、人間に」

「はい!けど、そっちも一緒じゃないですか」

「・・・いらないかもしれないが、合言葉だ。」


「「ありがとう」」


俺はあの魔王を助けるため、この世界の神を倒すため、決して揺るがない覚悟を決めた。


足音が聞こえる。この部屋の前で止まった。

部屋を開けてきたのは白だ。

「おはよう。・・・って誰だお前ら」

「大蛇だ」

「雷鳥よ」

「新婚カップルか」


俺とクレアは白に連れられ、広間で待っているよう言われた。


「多分そろそろ起きだしてくるから、ここで待っててくれ」


「・・・って父さん!?」

「気にするな、たまたまだ。」

「まさか父さんとこんなところで会う事になるとはな。ま、俺は気にしない事にする。他の魔王の様子見てくるから」


白が去った後で

「あー・・・」

「俺にも色々事情があるんだ。すまんな。」

「ひとまずはそういう事にしておきます」


息子が居る事は彼女には伝えていなかった。


次回はノーム編となります。

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