54話 雷鳥
前回のあらすじ
崖から落ちたり鳥に命中100%の大技出されたり頭痛に耐えたりリベンジしたり。
「キュルルル!」
まずは力を籠めてブレイブスターを発動させる準備をする。
そういえば、と忘れかけてたブレイブマジックを使い、4本剣を宙に浮かせる。
「先制攻撃だ!」
思いっきり下から上へと振る。ブレイブスターのお蔭で射程は物凄く伸びている。
ブレイブマジックの剣も全弾発射だ。
だがそれを軽々とかわす。相手は伝説の鳥。空の支配者みたいなものだ。
羽根を11枚ほど飛ばしてくるが、追尾する能力はないようで動きは直線だ。
「ブレイブスターが効かないならやっぱり竜変身しかないのか・・?」
竜変身。そして素早く向かう。向かう先は雷鳥の『影』だ。
「影縫い!」
雷鳥の影を切り付け羽でまっすぐ上へ。炎を纏った爪でアッパーをくらわせる。
だが影縫いで動きが止まるのもほんの一瞬になっている。相手が強いのだ。
だが、もう一度影縫いをかけてみる。
降りる時間も惜しい。爪を炎で延長させ影を斬る。だが反応はない。
「耐性をもう持っているのか?」
影縫いが使えるのは一度きりのようだ。それも1~2秒動きが止まるだけだ。
もうこうなったら殴り続けるしかない。
手から滲み出る炎で延長させた爪を雷鳥へぶつける。
だが、ダメージはない。回避しているのだ。
「(MP残量を教えてくれ。)」
「(左上に表示させますからしっかり見てくださいね)」
そういって左上にMPの残量が出る。あまり減ってはいない。
最終手段は時を止めるタイム・ドラゴン。これの消費MPはわからないが、二回使ったらもうMPが切れている気がする。
雷鳥の攻撃は今は羽根を飛ばすだけのようだが、いつ奥の手が来るともわからない。
「まずは一発当てなきゃな」
攻撃するが当たらない。当たらない。当たらない。
まだ殴ろうとする。当たらない。
MP残量は残り8割だ。
「ぐ・・・当たらない事がこんなに辛いのか」
ほとんど相手の回避だ。
「キュルルル・・・」
俺のセンサーが反応している。これはまずい。
雷鳥は右へ行き羽根を飛ばし、左へ行き羽根を飛ばし上に行き大量の羽根を振らせてきた。
この鳥、俺の仲間には当てないように羽根を飛ばしている。
なんとなく俺は回避手段がないと悟った。
だが、時が、止められなかったらの話である。
「タイム・・・ドラゴン。」
ゴーン・・・と鐘が鳴る。
俺は時を止めた。MP残量は5割だ。
・・・!? 羽根が・・・止まらない。
それどころか雷鳥は平然と動いている。
俺は、なすすべもなく・・・
・・・ゴーン
竜玉の光に導かれ、再び過去へと戻った。
「・・・ぐっ・・・が・・あっ」
前回とは比べ物にならない痛みが走る。
「(大丈夫ですか!?・・・記憶を持ったまま過去へ戻ったんですね?)」
「(この先はないと思ってください。記憶の矛盾でいつ死ぬかわかりませんから)」
「大丈夫!?白」
「どうしたんですか白さん!」
「む・・・?」
「ど、どうした、んだ。ノー、ム?」
「何かでかいものがやってくるのじゃ」
そこには雷鳥が。前回よりも早い。
「俺が戦う。下がっててくれ。」
早速竜変身して雷鳥と話す。
「お前一体何者だ?」
「キュルキュル、キュルルルル!」
挑発しているようだ。
タイム・ドラゴン。
ゴーン・・・と鐘が鳴る。
「ここでなら誰にも聞こえないだろ。お前一体何者だ?」
「あなたは一回でも自分自身の力で勝利を手にしたことはありますか?」
「・・・え?」
「『もらいもの』のスキルでは私は倒せませんよ。」
・・・ゴーン
「キュルル!」
雷鳥が羽根を飛ばす。炎の爪で切り捨てようとするが羽根はなぜか異常に堅く、回避せざるを得なかった。
「竜変身を解けってことか?」
竜変身を解く。しかし俺が不利ということには変わりなかった。
「キュルル。」
正解と言っているのか?
薙刀を持ち、常時付けていたスーパーブレイブモードを解く。
ここまで来てやっと思いついた。
魔術を使い、薙刀を宙に浮かす。
「(ララ、頼んだ)」
春の目覚めを11回召喚する。召喚された刀は召喚された順に空中に浮かしておく。
薙刀を手に取り、構える。
・・・試しに一本の刀を雷鳥に飛ばしてみる。
雷鳥はかわす。遠くに行った刀は消えて戻ってきた。
「動かし方は覚えた。行くぞ・・・」
竜変身はしていなくても竜の翼はある。だが、その翼は意識から外す。
俺が走り出すと同時に雷鳥はステップで羽根を飛ばしてくる。さっきの大技のようだ。
(守れ!!)
刀に付いている桜吹雪を俺を中心としたドーム状に舞わせる。
前が見えないが仕方ない。俺は走り続けた。
大量に飛ばされた雷鳥の羽根は俺の桜吹雪で消滅した。
(行け!!)
雷鳥の大技を防ぎ切ったと思ったら早速防御を解き、刀と桜吹雪達を雷鳥の周囲に漂わせる。
雷鳥が回避行動を取れば即座に周りの『武器』が突撃する。どこに回避しても無駄だ。
俺は走る。この雷鳥に一撃を食らわせるために。
「クリア・・・スマッシュ!!」
ジャンプして上に切り上げてようやく届くその位置。かすり傷さえ与えればあとはそこに白い爆発が起こる。
だが・・・
「キュルルルル」
ゴーン・・・
「はっ!?」
気がつけば後ろを取られていた。この位置からだと周囲に漂わせた刀達も間に合わない。
そして、この鳥は俺を攻撃することもなく大きな羽で俺を包み込んだ。
「電気が、ない?」
雷鳥は俺の右手をさわる。
「ストレージボックスが・・・勝手に・・・」
そう、俺にしか使えないはずのストレージが勝手に発動していた。
「(ストレージボックスが進化したようです。名前は『とりかご』)」
俺の手には、今までのストレージボックスとは別にもう一つストレージボックスがある感覚があった。
「まさか・・・入れてほしいのか?」
「キュ」
俺はこの鳥を『とりかご』に入れた。
「あっ」
今俺は空中、姿勢は不安定。・・・不時着します!
「痛っああ」
「(ヒール使ってくれ!)」
早速俺はララに頼みエクスヒールを唱える。
「ふぅ・・・」
仲間が駆け寄ってくる。
「大丈夫だったか?」
「ああ、大丈夫だ・・・」
「多分これでリザード肉の問題も解決だろう」
その後仲間には先に帰ってもらい、俺はリザードマンを集め『とりかご』から雷鳥を召喚する。
多分雷鳥のほうから説明してくれるだろう。
「キュルル、キュル、キュル。」
ただ、俺には両者とも鳴き声にしか聞こえない謎の会話だったが。
「ありがとよ!これで街にも美味しい料理が復活する!」
「今度からリザード肉は食わない、焼かないように言っておいてくれ。」
あんな不思議食感はもう嫌だ。
ギルドに行くように言われ、受付に行くと、
「結局報酬っていくらになったんだ?」
「5600マルになります。お疲れさまでした」
「5600!?」
「はい。この街の冒険者では解決ができず諦めかけていた依頼なので。この金額はこの街のみんなからのお礼の気持ちです。」
かなり美味しかった。ついでに世界地図を貰った。
それにしても、レイカが崖を草むらか何かと見間違えていたのはなぜだったんだ・・?
更に、山に入る前はただの砂山にしか見えなかったのもおかしい・・・
まだこの街には何かあるのかもしれない。
そしてその時はやってきた。
あの日から十日ほどが過ぎた。
クエストをこなし、金を貯める。そういったことを日々繰り返していた。
宿屋でふと独り言を呟く。
「そういえばこの鳥名前がなかったが・・・名前ってあるのか?」
ストレージボックスが発動する。
前より小さく黄色い鳥になっていた。
「ピピピピピピ」
「この国の言葉で頼む」
「好きに呼んでください」
「じゃあ、・・・って言ってすぐ思い浮かぶと思うか?」
「ならもう雷鳥でも構いません」
「じゃそれで。」
小さい雷鳥は何か疲れたようにストレージボックスへと戻って行った。
「(なあララ、ここには何がある?)」
「(この街の異常事態についてですか?調べてみましたが何も載っていませんでした)」
「ぐ・・・」
あれから山に行っても砂山にしか見えず、近づいても何も起きなかった。
さすがに何かがおかしい。そう思い調べているのだが、あの山について聞いても、ちょっとわからないという反応しかなかった。あの焼き串の店主に聞いてもだ。
だが、食べ物はリザード肉ではなく、他の肉料理が出されている。この肉は一体どこから出ているのか。
考えたところで何の痕跡もなく分からない。
俺はこの肉がどこから来ているか焼き串の店主に聞いた。
「この肉は狩人に依頼をして獲らせてるんだ。」
とのことだったが・・・・この街に狩人なんてものは存在しない。
狩人がいるギルドを教えてもらったがそこはもうすでに空き地だ。
「狩人」が怪しいと思い、調べているが当然何も痕跡はなく、途方に暮れた。
その事をノームに言うと、意外にもその口からは答えが来た。
「あれは魔王かもしれないの。名前は忘れたが魔法が得意だったはずじゃ。幻覚なんて簡単にできるじゃろう。」
「じゃが、もし違った場合、この街は終わりじゃ。」
「は?なんでアレが魔王の仕業じゃないと街は終わるんだ?」
「街には必ず一人、裏で支える魔王がいるのじゃ。儂の街はもう潰れたがな。」
「お前は魔法都市担当だったのか」
確か、イドの村も街だったような気がする・・・そこで大蛇の姿をした魔王が居たな。
なら、あの港街・・・クポの街の魔王は何だ?いつかそこに戻ってきて調べるか。
「でも、殺そうとは思うな。ああ見えても魔王は平和に暮らしておるのじゃ。」
「よくモンスターの元凶が魔王だとか言われておるが、そのモンスターから守ってやっているのも魔王なのじゃ。」
「そうだったのか・・・そういえばお前、塔からモンスター溢れ出してたけどなんでだ?」
「それは聞かないでほしいの・・・実験が失敗したのじゃ。」
ああ、察した。
「俺、何がしたいんだっけ」
大蛇との会話を振り返る。
俺に竜変身を授けてくれた。これでどうやってこの世界を救えばいいのだ。
俺はあの時どうでもいい質問しかしなかった。
だが、今なら分かる。
竜変身は大蛇の『後継者』の証だ。それで魔王と仲良くなり、この世界を救えってことだ。
そのためには何としても一人ずつ、一魔王ずつ会っていかなければならない。
竜変身は、魔王を倒すための力ではなかった。
俺は心当たりが出来、砂漠を飛んでいる。
「あった」
黒い城、その後ろには海。
俺は竜変身をし、扉をノックする。
「(魔王の反応がありますっ)」
少し待つ。
「もういい加減にしろ!・・・あれ?」
「あれ・・・この後どうするんだっけ・・・」
そこまでは考えてなかった。俺の考えは浅瀬のように浅い。
「あの、何の用ですか?」
「魔王に会いに来ました。」
「オレが魔王ですが。」
赤くツンツンした髪、チャラチャラした青年っぽい男はそう言った。
「じゃあ話でもしませんか」
「あー今暇だしいいっすよ」
「俺は鱗動 白です。」
「ここじゃ日本人の名前とかやめたほうがいいっすよーちなみにオレはイフリートって呼ばれてます」
「まだ日本人が来るなんて珍しいなーあっちの方とかで何かあったんすか」
「確か大蛇を倒した後竜変身ってスキルを貰って」
「勇者!?女って聞いてたんだけど」
「いや俺は男だよ、まあ勇者が仲間に居るけど」
「こんなケース見た事も聞いたこともないっす・・・」
イフリートは何か驚いている。
「この世界って何かあるのか?」
「この世界の魔王は勇者に斬られる役目なんよ、本当にやられ役。やられたら死ぬんです」
「じゃあ魔王って何年ぐらい生きられるんだ?」
「興味が出てきたっすか!?・・・はい。精々100年ぐらいっす・・・人間と同じっす。勇者がぽんぽん来るせいで」
「大蛇は強かったおかげで400年とか生きてたと思うんすけど、それ以上は知らないっす」
「確か魔王にも寿命があるとかなんとか」
「でも不思議な人っすね、勇者の仲間なのにオレを倒さないなんて」
「ノームから聞いたからな、もう倒す気なんてないよ。」
「あれ、あいつ何かあったんすか」
「あいつが事故して街とか吹っ飛んだ」
「あー、・・・アレならありそうっすね」
「納得するな!」
ノームがばん、と扉を開ける。
「一体どこいったかと思えば手ぶらで魔王に会いに行きおって・・・」
「儂も混ぜるのじゃ!」
「ひさしぶりっすねおこちゃま魔王」
「儂をその名前で呼ぶな!」
俺は日が暮れるまで二人と楽しく話した。




