53話 亀裂
前回のあらすじ
登山に行こう。
「白さん、起きてください。」
「・・・ん?・・・あぁ、エルフィンか。どうした?」
「出発する前に付近を魔術で探ってみたのですが・・・」
エルフィンからこう告げられた。
「山なんてものどこにもありませんよ・・・・」
「はぁ!?」
早速『焼き串』屋へ確認を取る。
もちろん他の店にもだ。
「山ならあるじゃないか。あちらに行けばいい。」
店主は砂漠のほうを指差す。
・・・他もすべて同じような回答だった。
「ちょっと飛んでくる」
「気を付けてね」
と、飛んでみたがやはり何もない。
最終手段であると言い張る人達に案内してもらうことにした。
幸い焼き串屋の人が案内してくれるそうなので街を出る。
「ここが『山』です。」
「どうしたんだ?みんなして見えてないような顔して。」
いや・・・俺に見えているものはただの砂山なんだが・・・
「・・・山に入りますよ」
店主はてくてくと小さい砂山に向かって歩いていく。
俺達もついていく。
小さな砂山の目の前まで来ただろうか。
そこから一歩踏み出した途端小さな砂山は脆く崩れ去り、気がつけばその先には大きな岩山ができていた。
その山はまるで最初からそこにいたかのように佇んでいる。
「今度は何ですか・・・急に山が出てきたような顔をして」
山を登っていく。
道中、というか見渡す限りリザードマンが居る。
想像通り細長い剣と丸い盾を持っているようだ。
「うぐ・・・これ以上は危険なので案内はやめます。」
「そうか、ありがとな」
足早に店主は立ち去る。
「さて・・・狩るか?」
「レイカとエルフィンは後衛で、他は前衛で頼む」
「了解」
ストレージボックスを試してみるか、と思いあらかじめストレージボックスに入れておいた薙刀を取り出そうとする。
ストレージボックスを呼び出し、手を突っ込み引っ張り出す。
「これ便利だな・・・・」
取り出したい物を意識すれば自然と手に持っている。
俺は翼で飛び上がり、ブレイブスターを連発する。
リザードマンは運良く盾で受け止めた者、頭を容易く斬られ絶命する者、盾が弱くそのまま斬撃に貫かれた者など・・・数多くのリザードマンが一振りで散る。
この惨状を見ると自分が無双ゲームをやっているような心地になる。
ここは別の世界とはいえ『現実』で、実際に命を奪っているにも関わらず、俺自身は何も感じない。
生きるため・・・だからだ。人は生存するためなら何だってできる。
「本当にリザードマンしか見かけないな・・・」
「そうね・・・」
「ここまでリザードマンが多いと絶滅するまでこの山の生物を食いつくしたとしか思えないな」
「ちょっと待ってください。」
「魔術探知か?」
「ノームさん、知ってるんですか?」
「魔王じゃからな。ただお主のはまだ練度が低い。儂に任せるのじゃ」
魔術探知というものは初めて見るが・・・手のひらに白い魔力の糸を生み出し、それを蛇のように地面に這わせて探索するようだ。
だが、ノームはくるっと一回転して「あっちじゃ」・・・・糸も何も見えなかったぞ。
「まあ、行ってみるか」
ここじゃ、と自信満々にノームが言う。目の前に見える岩肌に亀裂がある。
「この中か?」
「この魔術によるとな。」
「入るか・・・」
その亀裂は一人ずつならなんとか入れそうだ。
中に入るとそこには妙に生活感のあるような洞窟になっていた。
まるでどこかの他人の家の中のように家具が置かれている。床や壁はもちろん岩だが。
そして、明かりがまだ点いている。火のような明るさだが燃えてはいない。
「怪しいな・・・」
真っ先に思った感想がそれだ。
「誰かいますかー」
エルフィンがわりと大声で言うが・・・反応ナシ。
「住んでる人には悪いが少し調べよう」
部屋を探索したが、特に何もない。
リビングのような部屋・・・部屋はこの一部屋だけではないようで、奥にまだあるようだ。
「何か見つかったか?」
「いや、何も見つからないわ」
「じゃあもう少し奥に行ってみるか」
「そういえば、部屋の数は4部屋のようじゃ」
次の部屋を覗く。だが本棚しか見えず、図書室のような部屋から先の部屋は無いように見える。
「(ここの本の内容も叡智には記録されているのか?)」
「(当然です、ですがメモとか書類は含まれません。)」
「ノーム、ここには二部屋しかないようだが他の部屋の入口はどこだ?」
「ちょっと待っておれ」
ノームが一回転する。ついでにポーズを決めた。
「こっちじゃ」
案内されたところはただの『壁』・・・。
「隠し扉とかか?」
そう言いながらその壁に手をつこうとしたが・・・
手は壁を通り抜け、俺はコケた。
「こういうタイプだったか・・・」
3つめの部屋は家具らしきものは何も見当たらない。
代わりに壁に絵画とその下のプレートに説明が書かれている。
「・・・これ」
「なんでこのゲームの説明が・・・?」
書かれていたのは俺がやっていたネトゲ。その最初のあらすじが絵と文字で描かれている。
更に、このプレートに書かれた文字・・・日本語だ。
「ト、キ。ぐ・・・喋りづらい。」
喋るのは諦める。
プレートにはこう書かれていた。
時は冥王歴800年、世界は冥府によって影ながら支配されていた。
旅人のあなたはあることから世界の支配を知る。
ダークな世界観と5000種類以上のモンスター。多種多様なアクションで冥府の謎を解き明かせ。
まあ一応はRPGなんだが・・・どこに行ってもモンスターが出現する上に世界がとてつもなく広いからちょっと遠出したら拠点に戻ってくるのに半日かかるゲームだ。5年ぐらいやっている俺でもまだマップを把握しきれていない。
RPGというより旅を楽しむ感じのゲームだった。
そして絵なんだが、拠点である王都グランハイツの絵だ。この際だから言っておくが、拠点はこの王都しか存在していない。村や街はいくらでもあるが、料理したり馬を育成したりといった事はこの王都でしかできない。
「でも・・・なんでこんなものが?」
かけられていた絵画を手に取る。長くやっていたゲームだけあって少し懐かしく、一粒の涙がこぼれ落ちる。
「いや、そんなことより。ノーム、次の部屋に案内してくれ。」
「こっちじゃ」
そこには祭壇が。
確か、さっきのゲームでの祭壇の役割はアイテムを錬成する錬金術が出来る・・・だったはず。
「ちょっと待っててくれ。この祭壇、記憶にある」
思い出す。今手持ちの材料で何か作れるか?俺は錬金術で色々な物を作った事があるからレシピはなんとなく覚えている。
今何をしようとしているのかというと。この祭壇が本当にあちらの物か確かめようとしているのだ。
「確か、魔力ポーション1、薬草3、本1で。」
本は適当に図書室から拝借する。薬草はエルフィンから教えてもらった魔力ポーションを作るために買っていた。
「確かこう、置いて・・・」
材料を祭壇に置く。
「この先どうしたんだっけか」
ゲームの中の錬金術は置くだけで目的の品が出現した。
「(魔力を込めてみるか)」
この手のものなら大体魔力で解決するだろう。
ポンッ
そう音が鳴る。
白い煙の中から出現したのは『回復魔法の書』
使う(振る)だけで簡単に回復が出来る優れもの・・・である。
「どうやったの・・!?」
「不思議な男じゃの」
「白、手に持ってるそれは何だ?」
「ああ、回復魔法の書といってな、振るだけで回復魔法が使えるんだ。」
「多分、こう、だ。」
試しに振ってみるが反応がない。
「まさかこれも魔力いるのか?」
魔力を少し籠めて振る。
緑色のキラキラしたふりかけのようなものが頭から振る。
「すまん、これ少しだが魔力がいるみたいだ。」
「ラースにあげようかと思ったがラース、魔力使えるか?」
「鍛冶しかやってねえからな。魔力はムリだ。」
「じゃ、エルフィン、これ使えば回復支援とかできるだろ」
「いいんですか?」
さっとエルフィンに手渡す。
そしてさっと祭壇をストレージに突っ込む。
「消えた・・・」
「いや、これ使えるかと思って。ほら。」
ストレージから出現させ元の位置に置く。
「ということでこの祭壇、俺が使おうかと思うんだが・・・やっぱ住んでる人に悪いかな・・・」
自分のやっていることは山の中とはいえ『盗み』だ。
悩んだ結果祭壇をストレージに突っ込んだ。
「(そういえばこの明かり、なんて言うやつだ?)」
「(発光苔と言うようですね。置いておけば常に明かりとして使えるとあります。)」
・・・今はここにはもう誰も住んでいない可能性も出てきたな。
このまま俺達は何事も無く部屋から出た。
意外なところで俺の知っているゲームの話が出てきたがそんなことはどうでもいい。この洞窟は肝心のリザード肉事件には何も関係がなかった。
「ノーム、他に探知に引っかかった物ってないのか?」
「ないな。大人しく山を登るしかないじゃろう」
こうして俺達は山の頂上へ着いた。
空気が冷たい。この山の頂上はそんなに高くないように見えたが。
そして頂上のすこし手前。鳥の巣のような所に大量にモンスターが置かれていた。
「これもしかして・・・」
「なんとなくトカゲ男達が犯人ってわかりますね。」
「しかし、こんなに殺されていたらもうこの山で生きてる奴は一匹もいないだろ」
どうする・・・と思った時、レイカが口を開く。
「ここで待ち伏せしてみたら何か分かるかもしれないわ。ほら、あそこに丁度いい場所が」
丁度いい場所。レイカが指差す方向には何も見えない。ただ少し広めの平地があるだけだ。
「どこだ?」
自分の中でガリッと何かの歯車が止まった音がした。
「ここよ、ここ」
そう行ってレイカは歩いていく。
指差した方向の『先』へと躊躇いもなく進んでいく。
「待て!その先は崖だ!!」
俺は気付くのが遅かった。
だがレイカは止まらない。
俺は走り出す。
「あっ・・・れ・・・?」
足を踏み外した!俺は助けるため竜変身をする。
俺は飛び込んだ。落ちていくレイカ。地面まで残り僅か。
「チッ!」
俺は助け出したい、だが救えない。しかし、まだ諦めるわけにはいかない。
「うおぉぉぉぉ!!!」
持っていた竜玉が光りだす。
俺の意思に反応するように竜玉は共鳴する。
そして、俺はレイカを救うことなく、光に導かれ数分前に戻った。
「・・・・ぐっ!」
頭が痛い。
「(これは・・・記憶を引き継いだまま過去に戻りましたね?)」
「(ララか。記憶を引き継いだまま過去に戻るとこんな感じに頭が痛いのか?)」
「(場合によっては死ぬこともあります。)」
「(今回は矛盾が小さいせいでなんとかなりましたが次はないと思ってください。)」
ララは静かに怒る。
「これもしかして・・・」
「なんとなくトカゲ男達が犯人ってわかりますね。」
「しかし、こんなに殺されていたらもうこの山で生きてる奴は一匹もいないだろ」
「ここで待ち伏せしてみたら何か分かるかもしれないわ。ほら、あそこに丁度いい場所が」
「その場所はどんな場所だ?」
「どうしたの、白、あそこに丁度いい『草むら』が見えるじゃない。」
「見えない。」
「え・・・?」
「あそこは崖だ。落ちると死ぬ。」
「おいお前ら一体何の話を・・・」
「確かに草むらなんて見えませんね。どうしたんですか?レイカさん」
「あっちがいい。草むらはないが落ちるよりマシだ。」
「じゃ、じゃあ。そこにしましょう」
俺達は伏せていた。やがて黄色く、丸い鳥が巣にやってきた。
その羽はバチバチと電気を帯びている。
「(この鳥は?)」
「(伝説種。サンダーバードです。)」
「(伝説種ってなんだ?)」
「(簡単に言うと滅多に出会えない伝説の種族です。かなり強いです。)」
「ふむ・・・俺はアレを倒せるのか・・・?」
ララは『かなり強い』と言っていた。『まず勝てない』と言わないあたり、勝機はある。
「俺が奴を倒す。」
「ちょっと白!?」
「僕たちはどうすれば」
「みんなはそこで伏せててくれ。」
「死ぬなよ、白」
薙刀を手に持ち、翼で空中にあがる。
「勝負だ。」
基本こいつは電気を帯びた羽のせいで近接は難しい。
俺の竜変身も電気に耐性があるか分からない。
遠距離からチクチクと。最初の方針はこれだ。
「キュルルル!」




