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桜の舞う摩天楼  作者: ハイク
第二章 魔王軍
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51話 復讐からの逃走

前回のあらすじ

医者が押しかけて来て仲間になった。

草原。

「(ララ、そろそろ治ったか?)」


身体の修復が始まってから三日が過ぎた。

昨日は仲間を呼び作戦会議。エルフィンが仲間になった事、そして事情を知らない皆にセバスは俺を殺すための刺客だった事、領主クポが黒幕という事・・・エルフィンが仲間になった事以外皆はあまり信じてはくれなかったが、ノームのフォローのお蔭か一応は理解してくれた様だ。


「(丁度終わりましたよ。もう解除しても大丈夫です。)」

早速竜変身を解除する。

俺の本体の体と、この竜の体は別物らしく、変身しても着ていた服は同じ(ように見える)など違和感はないようになっているが・・・例えば服のポケットに入っている物とかは変身を解除しないと取れない。


ポケットから竜玉を取り出す。

「(これってやっぱり何か分からない?)」

「(実は、この玉が無いと体の修復が三日では済まなかったと思います。それに・・・竜変身中、玉からあなたに謎のエネルギーが注がれていました。)」


タイム・ドラゴンという技も竜玉を持っていたから手に入ったのかもしれない。


「(そういえば、叡智の検索範囲ってどこまでなんだ?)」

「(『本』というカテゴリーに入る物全てです。メモや書類などは含みません。)」


ちなみにノームが持ってきた証拠は契約書だ。


ここまで来て俺は、気付く。

―領主をどうしたいんだっけ―


そう。例えば領主を殺しても領主が治めていたこのクポの街はどうなる?

クポの街は凶悪犯罪も起きない平和な港街だ。はっきり言って治安はとても良い。

領主をつきつけて俺の言い分に賛同してくれるか。その可能性は低い。

これは俺の「復讐」なのではないか?

そういう考えが頭を支配する。


しかしやってみなくちゃ分からない・・・





クポの街には小さな裁判所がある。この世界には弁護人、検察の概念はない。

両者の言い分を聞き、謎を明かし、判決を下す裁判長に全てはかかっている。

この裁判所は主に罪人を裁き、強制労働の刑などにする場所だが、今回の裁判は雰囲気が違う。

何せ訴えられているのは領主、訴えているのはただの「冒険者」なのだから。


「では、これよりクポ・エルゼダムの裁判を始めます。」


「まず最初に鱗動 白氏、クポ氏の犯した罪について教えて下さい。」

「俺を殺すように差し向けた。」

「差し向けた?誰をですか?」

「セールス・バム・スルール。」

「セバス氏の事は知っていますが・・・襲ってきたのですか?セバスさんが?」

「はい。クポ・エルゼダムはセバスに俺を殺すよう命令しました。証拠があります。」


「戯言を・・・・・・何っ」



俺はララにすべてを任せ、暗闇から見える小さな裁判所の風景を見ていた。



「判決を下します。クポ・エルゼダムは有罪。」

「地位剥奪とし、10年の強制労働とす。」

傍聴席で聞いていたクポの住人は猛反発していた。






「・・・これで良かったのかしら。」

「俺は別に良いさ。だが・・・このパーティは解散だな。」

「ここも中々良いな・・・また武器屋でも始めるか。」

「領主になったからには美味しい料理を毎日儂にくれるかの?」

「いや、毎日は無理だがお土産とかあったときにはあげるよ。」


「僕はどうしたらいいんですかね」

「藪医者でもやってろ」





俺は、この街の新しい領主となり、2年が過ぎた頃・・・



コンコン。

「どうぞ」


赤い服。

竜変身、タイム・ドラゴン


「あら・・・偶然ね」


・・・スッ












暗闇・・・この部屋は・・・

「お久しぶり・・・かな?」

「私少しだけ先の未来が読めるようになったけど、だからこそ伝えなくちゃいけない事があります。」

「二年間の記憶を消して、あの時に戻りなさい。」


答える暇もなく暗闇は光に包まれ・・・


「っ!」


頭痛。

俺が見知らぬ部屋で・・・赤い服・・・

それは、さっきまでそうしていたかのように感じる。


今は俺の体の修復が始まって二日目。竜変身というスキルで入れ替わった竜の体で生活している。


「復讐・・・か」


俺はさっさと狩りを終え、報告する。


皆より早めに宿に戻ってきた。

帰ってきた途端コンコン・・・とノックが入る。


「エルフィンか。」

「あの大穴は無事に塞がったんですね。」


他人事はさすがにむかつく。


「今日はお願いがあって参りました。私を貴方の仲間へ入れて下さい。」

「お前プライドってものがないのか?・・・それで、理由は」

「領主にクビだと言われまして」

「領主とはどういう関係だったんだ?」

「よくぞ聞いてくれました。昼には医者、夜には諜報そして緊急時には...」

「諜報はわかるが医者は領主と関係ないんじゃないのか?」

「・・・いえ、医者といっても魔術を使って治癒場を発生させる事しかできません。薬は領主が持っている事になっていますので」


「お前、万能薬ポーション無かったら医者うまくいってただろ」

「そうかもしれません。それにしても、今回はやけにフレンドリーですね?」

「確かに俺はお前に恨みとか殺意を持っていた・・・はずなんだけどな。最近は分からなくなってきた。」

「俺を殺しに来た奴を殺すことは俺の『復讐』だ。だがその先には何が待ってるか?『報復』だ。報復を消す為には関わった組織全体を壊しに行かなきゃならない。」

「つられて手を出した方が負けなんだよ。」


「それに、お前は領主と縁切ったんだろ?なぜだか知らんが俺はお前が信用できる。」


「・・・」

俺は右手でエルフィンの肩をたたく。

「お前は俺達の仲間だ。」

「ところで魔力ポーションが切れかかっているんだが、作り方を教えてくれないか?」


「・・・はい!」



メンバーが帰ってくるまでその日は魔力ポーションの作り方を1から教えてもらい、試作した。


ぐびっと試験官に入った青い液体を飲む。

「この味は・・・辛い・・・」

視界に畳まれたMP表示を見る。

回復しているようだ。


「一応成功か。ありがとう」


「強化魔法は使えるのに魔術はできないなんて驚きました。」

「その強化魔法解かないんですか?」


「ある事情で明日まで強化魔法かけてなきゃいけないんだ」

強化魔法なのかは不明だが・・・



「ただいま」

「おかえり、紹介しよう。今日から仲間になった医師のエルフィンだ。」

「・・・お前俺らが金なくて困ってるの分かってるか?」

「金ならある。稼いでおいた。」

ぽん、とマールが詰まった財布を置く。

この世界の財布はマールの真ん中に長めの紐を束ねて、専用の笠につるして出来上がりの簡素なものだ。

なんか似たような物が俺の記憶の中にあった気がするが・・・気にしないでおこう。


「・・・下位ランクの討伐依頼がごっそり消えていたが・・・お前か?」

「そうだ。ごっそり消えているわりにあまり稼いでないように見えるがそれも含めて説明しよう。」


俺は今自分が置かれている状況を話した。


セバスは俺を殺すための刺客。エルフィンはその仲間だったが、解雇された。そして、領主が黒幕なのだが、なぜ俺を狙っているかは分からない。


「エルフィン、本当に何も知らないのか?」

「はい。あなたが危険人物という情報以外何も知らされていません」

「絶対領主はお前の事自分の下っ端だと思ってただろ」


最後に、俺の竜の体について説明した。



「ノーム、ごめん。証拠とか集めてくれていたのに」

「良い、良い。それなりに楽しめたしの」


「じゃあ、そういうことで、この街から逃げるぞ」


「明日だ。明日には竜変身が解除できる。」


気がつけば外は真っ暗になっていた。






朝。


「(ララ、体は元に戻ったか?)」

「(はい、丁度)」


竜変身を解除する。

胸が千切れるほどの大きな穴が空いていた場所は傷跡もなくきれいさっぱり治っていた。


「(ララ、一体何をしたんだ?)」

「(私が全力で集中しなくてはいけないナニカです♪)」


「(まあ、一応元通りになったんだな)」


身体を動かす。異常無し。


「・・・皆、おはよう」

「じゃあ行くか」


支度をし、馬車へ乗り込む。

タクシー代みたいにお金はかかるが、歩くよりは速い。


そうして着いた先は・・・



誇りの街 メサラド



港町から道なりに進むと見えてくる。

誇りの街と言われる通り、この街の住人はそれぞれ高い志を持っている。

料理、家具などの製作物、建築・・・あらゆる面において世界一だが、魔法の技術はゼロ。

騎士団と言われる組織があり、小規模だがかなりの能力がある。



「(ララ、この世界に国はないのか?)」

「(国・・・ですか?・・・あなたの認識だと街=国で良いです)」

「(どの街にも領主っているもんなのか?)」

「(全7箇所街があります。その全てに領主がいます。)」


・・・この世界、意外と狭いんだな・・・


「(村も結構ありますよ。)」

「(そういえば、あなたの記憶にある・・・イドの村・・・、ですね、あれも街になります。)」

「(あれは違うのか?)」

「(はい、街だったものが衰退して村になったものですから。)」


「・・・着きましたよ、お客さん」

「ありがとう。」

「酔い過ぎて目がつぶれそうじゃ・・・」

「それほど揺れも大きくなかったろ」


「白、降りたら話がある。」

「分かった。」


「じゃあ私達は先に宿の確保済ませておきましょう」

ラジャーとノームがよろめきながら敬礼する。



俺とジョーは馬車から降り、街の外の土が柔らかい場所へと出る。

「話って何だ?」

「一度本気で手合わせ願いたい。武器は木刀だ。」

ジョーが木刀を謎の空間から取り出す。

「ちょっと待て・・・今のそれどうやった?」

「後で説明する。」


「先に一発でも体のどこかに当てたら勝ちだ。」

「用意、・・・始め」


言われるがまま始まった模擬戦。


「(すまんララ、剣のサポート頼む)」

「(しょうがないですね)」


ジョーが一瞬の隙もなく近づいて来る。うっすらとだが、背後に紫色のオーラが見える・・・

「(隙を突く事は無理か)」

突き、それをジョーは微塵も動かず、木刀を当て突きの軌道を逸らした。

「(来る)」

斜め・・・。白はそれを柄で防ぐ。

横一文字、白はしゃがんで回避する。

ジョーは後ろへ一瞬で下がる。


「私は元々この街の住民だった。」


ジョーは前へ瞬間的に動き、縦切り。

反射的に白は受け止めようとしたが、身体を回避に持っていく。

何となくだが・・・さっきのは本命の一撃だ・・・


しかし、剣の扱いには急速に慣れていっている。


右に転がり、左側から一閃、受け止め次は右から一閃。

ガードすることしか出来ない。


「だけど私は街を抜け、エリュシオンへ来た。」


白は瞼を閉じた。前方から縦。白はそれを防ぎ、鍔競り合いの状態になる。

「見えたっ」


「今更だが・・・B+冒険者と偽っていてすまない。」


ジョーの木刀を弾き、走る。追撃は避けながらひたすら走る。

ただ闇雲に走っているわけではない。


「スキルはありなのか?」

「さっきから使っているが、わからないのか?」


「なら好都合」


思いつきで回転斬りをする。水平にだ。

振ったところから赤い粉が出現する。

回転切り直後二つ斬撃が来る。ガード・・・赤い粉は舞う。

「煙幕のつもりか?」

後ろから突きが来る。

その突きをを俺は木刀の先から奥へとへと滑らせるように・・・ガードする。

「そんな煙幕作ると思うか?」

「エンチャントだ」


木刀に赤い模様が浮かび上がる。

名付けるなら神速の木刀・・・

魔力ポーションを作る工程であった「魔術」を使用した。


エンチャントしてから大分防ぎやすくなった・・・あとはどう攻撃を入れるかだ


真正面からの剣戟が繰り広げられる。殆どジョーが攻め、俺は守りだ

一部重い一撃があるのでそれは直感でかわし、続ける。


「そろそろこの木刀も傷んできたか?」

ここで弾かれたように見せ木刀を真上に飛ばす。

そんなに上には飛んでないはずだ。

勝利を確信したジョーが来る。

「前にもあったよな?」


気付いたジョーは踏み込み、横薙ぎ。だが想定内。

隠し翼を使い高めに後ろへ飛ぶ。錐揉み回転で躱しながら木刀を取る。そこで別方向へ回転をかけジョーの腕に軽い一撃を与える。

ごろん。と転がりながらジョーの方向を向く。


「これ意外と首痛えな」


「さすがだ。」


「実は、私はこの街でパーティを抜けようと思う。」

「私は・・・いや、君は、私なんかよりもずっと伸びしろがある。」

「なりそこないの『達人』の私なんかよりもずっとね。」

「心配事が消えた。私は旅に出る事にするよ」


「なら一つ訂正しといてやる。お前はなりそこないなんかじゃない。達人でもない。凄腕の教官だ」

「自分で付けた称号に何の価値がある?思い描いた通りの生き方が出来て何が面白い?称号なんかよりも大事な物は苦労して勝ち取ったかけがえのない『記憶おもいで』だろうが」


ララに検索してもらいジョーについて調べてもらった。

どうやら彼は志が高すぎるあまり自分に「称号」を課し、それがどんどん苦になっていったパターンのようだ。更に原因は親の教育方針にもあったらしい。

世界一の剣の達人を目指してるのに自身の成長の方向性が全く違うとそりゃ辛いよなぁ・・・


「世界一になろうとしなくていいんだ、強くならなくていいんだ。お前が本当にやりたい事を見つけろ。見つけた先で出会った仲間と楽しく過ごせればそれでいいじゃないか」


「白・・・君は、一体」


最高ただの一般人だ。そして、お前の友人だ!」


・・・まあ、さすがにこういうこと言うのは恥ずかしいけどな

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