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桜の舞う摩天楼  作者: ハイク
第二章 魔王軍
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50話 小者

前回のあらすじ

なぜか医者が逃げた。

クポの街の領主 クポ・エルゼダム。

人成らざる者に仕える一人。その男は危険因子の排除を任務としている。

その領主の屋敷に一つの報告が入る。


「領主様。配下のセバスが敗れました。」

「一筋縄では行かぬか・・・それにしてもセバスの奴め。簡単に逝きおって」


「しかしターゲットはまだ力を残している模様です。いかがなさいますか。」

「ターゲットと接触したのか?」

「はい。ターゲットに治療と称して情報収集を行っておりました。」


「・・・馬鹿者が。情報など後でいくらでも手に入る。なぜその時殺して置かなかったのだ。」

「ターゲットの背後には魔王ノームがついているとのこと。ならば直に殺すよりも裁判で死刑にするほうがいくらか得なのでは?」

「面倒な仕事だけ残して逝きおったセバスめ・・・それに、いくらか得とはどういうことだ。治療と称して情報収集と言うからには微塵も怪しまれてはいないのだろうな?」

「・・・は「もう良い。魔術で確認するとしよう。」・・・い?」


クポの手には魔力で作られた水晶体が。その水晶体。配下エルフィンの目にはしっかりと自分自身の額に流れる汗を映し出していた。


「・・・」

「お前は解雇だ。」


クポの目には何が映ったか。それはどう見てもたった一つの結論に収束する内容だった。

「怪しまれるどころか殺意を持たれている。」



・・・場面は切り替わり、白は病室のような部屋から出る。

部屋から出ると、ここは宿の中のようだ。今まで全く気がつかなかった。


「さっき医者が出て行ったけど・・・体は大丈夫なの?」

「大丈夫だ。心配かけたな」

レイカはずっと部屋の外で待っていてくれていたのか。


「・・・にしては、随分と変な恰好だけど。」

「ああ、これか?実はな・・・」

「竜に変身してる姿じゃ。なにやらコンパクトになったのぅ」

ひょっこりとノームが顔を出す。

「ちょいちょい。」

手招きされ、階段の影へ移動する。


「お主、本当に傷は治ったのじゃろうな?」

俺は決心し、小声で

「お前には本当の事を話しても誰にも話さないと思うから話すけど・・・」

「元の体は治ってない。未だ大穴が空いてる。だけど、治す方法はある・・・三日間待てば治せる。」

「本当じゃろうな?」

「本当だ。後、俺が外に出られない間セバスの聞き込みと魔力ポーションをちょっと買ってきてくれないか?」

「聞き込みはいいが、魔力ポーションは難しいかもしれんのじゃ」

「あれから収入はゼロで貯金も残り僅か。なのに隠れて高い物を買っていたら怪しまれるじゃろ」

「金・・・か。仕方ない。俺が何とかする。そっちは聞き込みの方を頼んだ」




この姿は中々に恥ずかしいが、背に腹は代えられない。早足でギルドへ駆け込んだ。

駆け込んですぐギルドカードを忘れたと気付く。

ギルドカードとは、どこのギルドに所属しているかを表したり、身分証にもなるカードだ。いつも俺達が自由にクエストに行けるのもこのカードあってこそだ・・・


しかし、このカード。元の身体が着ていた服に入っていた気がする。

「作るしかないか・・・」


「討伐ギルドに入れて欲しいのですが」

「身分証明になるものはお持ちですか?」

「ああ・・・ないです。」

「匿名での加入でしたら、高難度クエストなどが受けられないといった制限はありますがギルドカードへの記入も自由です。」

「じゃあそれで。」


後は適当に書いて10分ほど待ったらギルドカードが手に入った。

適当な討伐クエストを選んでは狩るの繰り返し。気がつけば夕方になっていた。

低ランクの魔物討伐はすでにすべて制覇した分大量のマールを手に入れ、前行ったことのある雑貨屋へと足を運んだ。


「いらっしゃいませー」

命の源である魔力ポーションを探す。


値札を見る。さすが魔力のポーション。小さい試験管のようなものに入った青い液体これ一つで1700マール。稼いだマールのほぼ全てを使ってしまう。


「なんでこんなに高いんだ?」

「あーこのポーションはですね。作製するのが難しくてどうしてもこの値段になってしまうんですよ」

「・・・そうか。じゃ、これ下さい」

「1700マールになります。丁度、ですね。ありがとうございましたー」


俺は店のすぐ外で買ったポーションをちびちびと飲んでいた。



~二日後~


宿の部屋。中には俺とエルフィンがいた。


「で、俺の前にのこのこと顔を出して来たのか。」

「すみませんね。このままじゃ職も無いので食っていけないのですよ。」


悪の親玉に解雇されて我らが正義(?)の味方につく悪役がどこにいる。


「お前には魔術があるだろ。それ以外は知らん。これ以上近くに来ると殺すぞ」

手を突き出し、「控えめに」炎を出す。宿が燃えたら大変だからね。


「知っている事は何でも話します。」


「ふーむ何でもか。」

「じゃあ、始めに魔力ポーションの作り方を教えろ。」

「・・・え?」


座る。エルフィンもゆっくりと座る。

「どうぞ。」

「魔力ポーションは薬草を別の物質に変換させることから始まります。」

「この変換は魔力の流れを理解していないと出来ないため、殆どの錬金術師は変換の必要のない回復ポーションを作って生計を立てています。」

「このコップに注がれた水。これを変換するとどうなると思いますか?」

エルフィンが誰かの飲みかけのコップを手にする。


「火になる・・・とか?」

「そう。最終的には火になります。」

当たっちゃったよ。

「ちょっとやってみますが」


エルフィンがコップに手を触れる。

数秒後、コップの中の水は忽然と姿を消したように見える。

「ここに火を入れると火の結晶になります」

「火の結晶?」

「このコップだと火の結晶に耐えられず溶けるのでこのままにしておきます。」

「放置するとどこかへ消えるので大丈夫ですよ」


エルフィンが水が消えたコップに水を注ぐ。

「やってみてください。」

と言われてもどうすればいいのか分からないんだよなぁ・・・


とりあえずコップに手を触れて目を瞑る。

水の中で何かが流れる。これを魔力で・・・どうするんだ。


「魔力で何をどうするイメージだ?」

「流れを逆向きにするイメージです。」


もう一度コップに手を当て、目を瞑る。

今度は水にある「流れ」を反転させるイメージ。

手から生み出された魔力の糸が「流れ」に絡みつき、ゆっくりと流れを導いていく。

目を開ける。

数秒後、水は消えた。


「普通、こんなものすぐ出来ないんじゃないのか?」

「あなたの強化魔法の使い方を見るとこれぐらい簡単だと思いますよ」


強化魔法・・・竜のコスプレかな?


「変換の使い方はいいとして本当にお前何しに来たんだ?」

「解雇されたので貴方の仲間にさせてもらえませんか」

「は・・・?あの時の俺に対する態度と違うな?」

「それは・・・」


「仕事だったから仕方ないですよ。」

「本来なら貴方がセバスを倒したと確定した時点で殺していました。ですが私は」

「もういい。どうせ生かしてやったんだから仲間に入れろ、だろ?そんな回りくどいことせずにしっかり治療してりゃ何も言わないのにさぁ・・・」

「治らない傷をどう治せと言うのですか。」

「治らないなら素直にお手上げと言え。治療放棄してんじゃねーよ」


「お前を雇っていたのは領主、領主は俺を殺そうとしている。んで、お前は仕事できなかったから解雇された。だよな?」

「はい」

「お前が本当に俺らに悪さしないなら今から悪いのは領主だということで進めるが」

「はい」

「本当にいいんだな?」

「はい。」


「・・・ならこれからお前は俺達の仲間だ。早速だがエルフィンは俺用の魔力ポーションを作ってくれ。数は1本でいい。」

雑貨屋の数少ない魔力ポーションが品切れ状態になったためである。


セバスの情報収集は順調だ。

ノームが、セバスと領主クポが繋がっていた証拠を手に入れた。

後はこの話を衛兵が信じるかだが・・・


とりあえず行動に移してみよう。ララが俺の体の修復を済ませた後で。



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