47話 同化
前回のあらすじ
夢の中で変な黒色のお化けに食われて食われて食われまくった結果悟りを開きました。
「・・・」
目は自然と開いた。
天井には穴が、・・・宿屋か。
ベッドで目が覚めた。
「・・・目が覚めたのね」
「ここがどこかわかるかしら?」
「クポの街の宿屋だ」
「元気ないけれど、大丈夫?」
「大丈夫だ、少し嫌な夢を見ていただけだ。」
「もう、そんなに堅くならなくてもいいわよ。仲間なんだから素直に話してみなさい。」
「だいじょうぶ。何も、問題ない。」
「はぁ。私は仮にも勇者なんだから、仲間と打ち解け合うことぐらいできないと勇者の名が廃るわ。」
「レイカ、お前勇者の称号嫌じゃなかったのか?」
「顔に出てた?」
「・・・すまん、ちょっと寝かせてくれ」
白は眠りについた。
目が覚めた。希望の夜だ。
「生活リズムぐっちゃぐちゃだな俺・・・」
とりあえず体を起こそうとする。
「体が重い・・・ぐっ」
起き上がれない。
「(ララ、いるか?)」
「(いつでもどこでも居ますよ、大丈夫ですか?)」
「(なんでこんなに体がだるい?)」
「(魔力不足です。魔法を本気で撃ちましたからね。今の魔力じゃ切れてダウンしますよ。)」
「(なぜもっと早く教えなかった)」
「(それぐらい必死にならないとあの関門は突破出来なかったでしょ?)」
・・・ああ。セバス戦か。
正直、悪夢のせいで忘れていた。
奴も逃げて倒れた俺を迂闊に襲撃することはできなかったみたいだ。暗殺が目的だったようだしそれもそうか。
何か不思議な力を感じた。
「(ステータス)」
「(はい・・・あれ?何か変わってますね)」
いつも見ているスキル欄に竜変身Ⅲが追加されている。
それ以外には特に何も変わってはいないが・・・
新しいスキルを手に入れたら試すしかないだろう。
動けないけど。
「(これじゃ、置き手紙も満足に書けないな。)」
ここで使用してまた宿の人に迷惑かけるわけにもいかない。
「(私が話し相手になってあげましょうか?)」
・・・なんか自分の妄想と会話してるみたいでそれはそれでちょっと嫌だな。
「(私にはしっかりとした意思がありますから大丈夫ですよ)」
「(嘘くさいんだよなぁ・・・)」
それから小一時間ララは俺の話し相手になってくれた。
気がつけば寝ていて、すでに朝だ。
ラースが声をかける。
「よう白、大丈夫になったか?」
「結構ラクになったよ。」
「無理するなよ」
まさしく病人だ。まあMP切れも病気な気がするし黙っておこう
「ううむ・・・なんか身体が軽い。」
いつもより、と言った方がいいだろうか。
身体が少しだけ軽くなった気がする。正確には身体の感覚が少し違う。
何かが顔に当たる。
振り向くとそれは竜の翼。まさしく翼だ。
ドラゴンサイズの大きな翼を人間サイズまで小さくしたかのような翼が俺の体に生えていた。
ちょっと飛んでみよう、・・・背中に感覚はあるが、どう動かせばいいかさっぱりわからない。
「んー」
試行錯誤していると、
「どうした?具合悪いのか?」
「俺の後ろに翼生えてるんだけどわからない?」
「翼?・・・見えねえけど、・・・疲れてるなら無理はするな、休んどけ」
うん、俺完全に変人扱いだ。
まあ病気で幻覚が見えるのも仕方ないしね・・・って足元が少し浮いてるんだけど。
ブワッと浮遊する想像をしたら突然翼が動き出した。
翼を大きく羽ばたかせ、どんどん地面から足が離れていく。
「おい、これ浮いてるんだけど」
「なんだ白、本当に大丈夫か・・・うをあっ!お前、これ、どうやってんだよ」
「だからなんか俺に翼が生えたっぽい。」
「信じられねえよ!これもなんか即興で作った魔法か何かだろ?」
「これも?」
「あの時詠唱無しで水出したろ。」
「あぁ・・・」
つまり・・・そういうことだな。
「お前ってほんと天才だな。」
「いやこれ魔法じゃないから、本物の翼だから」
本物の翼だったとしても物理法則の壁にぶち当たって普通は飛べないと思うがここはファンタジー世界っぽいし無視だ無視。
「見えねえもんをあると言われても信じられねえよ!?」
まあ、とりあえず見せてやろう、浮遊力を!
(バサッ)ふわっ(バサッ)ふわっ(バサッ)ふわっ(バサッ)ふわっ
「まあ本当に飛んでるみたいな動きができる魔法だってことは分かったが・・・」
「魔法じゃねえ つ・ば・さ だ!」
「仕方ない、窓開けてくれ。」
「ほいよ」
ノリ良いな。
(バサッ)ふわっ(バサッ)ふわっ(シュゥゥー)・・・ガンッ
「だっはっはっはっはっはっぐぉふっ」
「笑うんじゃねえ、失敗しただけだ!」
―TAKE2―
(バサッ)ふわっ(バサッ)ふわっ(シュゥゥー)
「(パチパチパチパチ)」
「じゃ、そういうことだからよろしく」
「逃げたな。」
もう一回披露して失敗するのが嫌だったわけじゃない。俺は竜変身Ⅲの謎を解き明かしに行くんだ
「お前寝間着だけど大丈夫か?」
「はよ言え」
結局もう一回披露して着替えてもう一回披露というよくわからない事になったが。
適当に空を飛ぶ気持ちよさを堪能したところで適当な森へ入る。
「(竜変身!)」
あれ?と思い尻の方に違和感が発生する。
「尻尾、・・・え、これだけ?」
見事な竜の尻尾、モデルが女の子だったら完全にコスプレだ。
「(竜変身!)」
尻尾は消えた、もう一度変身したが尻尾が生える以外に何もなかった。
「(せっかくの新スキルがこうじゃなぁ)」
変身したままとぼとぼ森を歩いていると紫色のスライムに出会ったのであの時の恨みをぶつけるために力を籠める。
「(あれ?何か感覚が違う)」
よく見ると爪、手が竜の物に変わっている。
とりあえず力を籠めたままじゃ何もしないままスライムのターンになるので解き放つ。
見事なアッパー。なぜか反動で空に飛びあがり慌てて急降下する。
急降下したところ追撃を加えるつもりはなかったのだが手が出てしまった。
もちろんスライムがただの引っ掻きごときで倒せないのは知っていたが・・・だがさっきの追撃は何だ。
爪に炎が出ていたぞ。
その炎はスライムが居た地面を中心に、扇状に広がる。
「(この炎はどっから出たんだ!!)」
ぐちぐち言ってても仕方がない、スライムに止めを刺す。
軽く横なぎすれば炎が爪のアタッチメントみたいに取り付き、炎をまき散らしながら切り裂く。
「・・・やばいここ森だ大火事じゃん」
スライムを倒してから気付いた。その後水を大量に生み出して消化した。
急いで帰る。竜変身は解除だ。変身中は見えるようになっていると思うし。
気付けば夕方だ。
飛ぶのが気持ち良過ぎたり消化するのが楽しかったりで時間を忘れていた・・・
超特級で飛ぶ。
「多分、この方角で合ってるよな・・・?」
ギリギリ夕飯には間に合った。
宿の窓から侵入したせいで食堂に居た仲間達はどこから来たのか不審がっていたが。
ただ一人、気まずそうに飯を食べるラースを除いて。




