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桜の舞う摩天楼  作者: ハイク
第二章 魔王軍
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46話 悪夢

前回のあらすじ

豪邸から爆破アクションで脱出。白吹っ飛ぶ。

宿の屋根に落ち、落ちた先でうるさいと怒られる。白力尽きる。

・・・ッハ!

ぱちんと目が開く。知らない天井だ。


ベッドから体を起こし辺りを見回す。


「誰もいないのか」


一言で言うと宿の個室と病室を足して二で割ったような部屋。

まあ病室なんだろうけどさ。設備は特にない。


「(ここで抜け出しても皆が困るだろうし・・・どうしたものか)」


と思いつつも自然とドアに手をかける。

少しだけならばれない。そうだ、ばれない。

いや、別にばれてもどうにもならないとは思うが。


「(ドアノブの感触が違う。)」

始めは知らない部屋だしただの考えすぎだろうと思っていた。


だが。

「(廊下がこんなに長い・・・ここはどこだ・・・っ窓があったよな)」


部屋に戻り窓を見る。

「ここ、どこなんです?」


窓から覗くも開いて見ても見える景色は真っ暗。

いやいや何かの間違いだろう。そう最後の希望を頼りに廊下に出る。


「おかしい・・・いつまで歩いても・・・」

廊下が終わらない。ここまで長い廊下なんてものは存在するはずがない。

廊下はなぜか明るいが廊下の奥は暗闇だ。廊下の床と天井は白く、壁は薄い黄緑色。柄はない。

これは自然ではない。異常だ。


「(ララ、ララ。・・・ララ?)」

反応なし。

「(ステータス。ステータス、ステータスオープン!)」

これも反応なし。

「(スネーク、スネエエェェェェェク!!)」

応答なし。


「扉・・・なんで今まで気付かなかったんだ?」

壁には見渡す限りの扉が。よく見ると、異世界のものと全然違う。地球にあるものだ。

木の高級そうな扉。普通なら歩き始める前に気付くものだが・・・


とりあえず扉を開ける。


ギィ…


「・・・」

言葉にできない。

扉の先には真四角に直下掘りされたような落とし穴にしてはとても深いものがあった。

慌てて他の扉を開ける。

開ける。

開ける。


・・・どれも同じだった。

悪夢という単語が頭に浮かぶ。

これは夢だと思えば楽になれる。

これが現実なんて思えるはずがない。異常だ。ただただ異常だ。


それにしては、意識もしっかりしていて手の感覚さえも不自然ではない。

試しに頬を叩いてみたが、目が覚めただけだ。痛覚もきちんとある。


「どうする・・・」


思い切って穴に落ちるか。

痛覚がある・・・という事が恐れになり出来ない。

例え何度死んでいても、自分から死ぬということはそれなりの決意が必要だ。

自殺行為を軽々行える人はただの思考停止だということを思い知らされた。


「地面は・・・やっぱり見えないか」

壁を見る。幅は狭い。

「いけそうな気がしてきた」


壁を頼りに伝って降りて行く。常に集中して動く。思ったよりも疲れるが、唯一休める地面は一向に見えてこない。

この状態が何十分も続く。不思議と手が滑って落ちそうになる様な事にはならなかった。


「・・・筋肉が痛くならない。」

矛盾が生まれる。痛みは感じるのに筋肉の痛みは感じられない。

しかし、この痛みの代わりに疲労がとてつもなく蓄積されている。


「く・・・地面はまだか」

ふと上を見上げる。

・・・扉が、すぐそこだ。

「移動していない?」

怒りと似たような感情が昂る。

弄ばれているかのような感覚。それは白の決意を強固なものとした。

「落ちてやる。いくぞ・・・」

落ちることは意外に楽だった。少し呼吸をし、手と足を放す。


音も無く落ちる。



少しして下を見る。何も見えない。上を見る。扉は見えない。

更に速度がついてきたように感じる。

しかし音はない。

怖くなり壁に手をつく。しかし壁はさっきとは違い恐ろしく滑る。いや、摩擦がない。

更に速度は上がる。


更に速度は上がる。


速度は上がる。


速度は上がる。


速度は上がる。


速度は上がる。


上がる。


上がる。


上がる。


やがて白は悟った。

「恐怖を永久に受け続け、死ぬ事も出来ず。ただ死の無い一生という永遠をここで暮らす」と。

死ぬ事が出来ない人間の気持ちを少し理解できた。


速度は上がる。

思考も出来ない程にまで速度はみるみる上がっていく。


やがて気付く。

思考を言葉に変換出来なくなるほどの恐怖を浴びた白にも、一つの光明が。

「自決する」

と。


手を首にそっと当てる。そして一気に絞める。

息が苦しく・・・ならない。そもそも白は息をしていなかった。

酸素が不必要になったのだ。

悪夢の様な世界。物理法則を無視した部屋。地獄とも似たような世界で唯一の救いの道、「死」を選べなくなっていた。


しかし白は直感で考えるのを止めない。いや、止めたら本当の苦が待っているからそこへ逃げ込むしかないのだ。

ピ、ピ、ピ…

もし白がCPUならこう音を出していただろう。


体を動かそう・・・体はもうすでに動かない。骨が消えていた。




目を動かそう・・・目はもうすでに動かない。淡々と落ちていく景色を捉えさせられるだけだ。





耳をつかおう・・・耳にはなにも聞こえない。静かだ。






口をつかおう・・・口は動くが、喋る事はできない。歯がすべて消えていた。







頭をつかおう・・・脳はすでにもうない。そこにあるのはただの皮と肉だけだ。













・・・全てを思い出す。体が有る。顔も動くし、腕も動く。足も動く。


「っは」


白は、ベッドで目が覚めた。知っている天井だ。


廊下に出る前に窓を確認する。窓は割れている。


黒く、どろどろとした闇がこちらへ迫ってくる。



「逃げろ。」



本能が叫んだように聞こえた。


急いでドアへ行き、ドアを開けようとするが、いくらドアノブを押しても引いても反応なし。


後ろを振り返る。まだ闇は窓を潜り窓の下に闇が溜まっているだけだ。


パニックになりドアノブを乱暴に扱う。


ドアノブが外れる。闇に放り投げドアを蹴る。


開く。この先は廊下だ。そう確信しドアの先を確認せずに走る。


足を滑らせた。下を見る。先ほどの落とし穴だ。


・・・どんどん落ちるスピードは上がっていく。闇は自分が落ちるスピードなどお構いなしに着実に距離

を詰める。




そして、白は闇に食われた。







すべてを思い出す。闇に食われたと思った身体は無事だ。


「っは」

白は目が覚めた。


同じ部屋。


何もないと「確信し」進む。



ドアを開く。目の前に先ほどの闇に目が付いたモンスターがいた。

白はそのまま飲み込まれた。







「っは」



ドアノブに手をかける。


ドアの先は細長い通路だった。

進む、進む、進む。



進んだ先にはドラゴンが居た。緑色だった。


「お前は私だ。そして私はお前だ。」


「運命を受け入れよ。道を示すのはいつだってお前自身だ。」


・・・危機感を感じさっきまで後ろに無かったドアのドアノブに手をかける。

開かない。後ろを振り返る。



闇はドラゴンの口から吐き出されるように沸いてきた。

白は、抵抗をする間もなく闇に飲み込まれた。





「っは」

何か左胸に温かい光がある。


どのような無謀にも挑戦し成功するようなどこまでも強い光。


それだけを心に持ち、窓もドアもベッドもない方向を向く。


そこには本棚があり、本棚には一冊の本。


そこから闇が這い出てきて、白は動じず待つ。


闇が来る。

そんなものはどうでもいい。

闇はゆっくりと人の形を取る。顎に髭のようなものがあるがそれが何かは闇に阻まれてわからない。




闇はゆっくりと歩み寄り






そして







――白を食らった。


















―――――声が聞こえる。


「運命を受け入れよ。自分の心でその運命を歩め。捕らえられた小鳥よ・・・」

何かを言いかけたが、光に飲まれて最後の方は聞こえなかった。



しかし、想いは伝わった。

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