45話 魔法
前回のあらすじ
悲しいことに敵は負けイベント並の強さを持つ中ボスだった。
こんなのは許せないので出来る限りの力で報復してやろう。と決意した白であった。
「(・・・)」
攻略すると決意したにしてもこれをどうやって乗り越えるか、目の前の難題はそう簡単には解かせてはくれない。
「(なあ、一つ聞いてもいいか)」
「普通に喋れますよ?」
「あ、ああ、もう一つ聞きたいことが出来た。」
「なんで最初はこの部屋で声を出すことも出来なかったんだ?」
「魂が同化しているから喋れる・・・・そういえば、スキルに取り込まれそうになった時があったようですね。」
「その時は確か・・・状況判断っていうスキルだったな。」
「それと同じような物ですね。状況判断というスキルの時と違ってこの同化には害はありません。」
「それと忘れかけてたがもう一つある。」
「死の直前以外には飛べないのか?」
「それが・・・セバスから受け取った竜玉が原因で移動できません。」
「セバスは追跡するための物と言ってたような気もするが、こうなると少しおかしいな」
「追跡じゃない、もっと別の何か・・・本来の用途があるはずなんだ・・・」
「現時点ではわかりません・・・。すみません。」
「そういえば、叡智で分かる範囲はどれぐらいなんだ?」
「この世界にある本という本から情報を取り込めるものなので、人間が知らない事、人間の記憶の中にしかないものは分からないようになっています。」
「便利過ぎるスキルなんてあるはずがないよな」
自力で頑張るしかない・・・そう思った時、閃いた。
「本という本から情報を取り込めるのなら、魔法書も本というカテゴリーに入るよな?」
「はい・・・しかしおすすめできません。」
「覚えるのが面倒くさいとか?」
「いえ、一気に魔法を覚えると元の(・)世界の身体に悪影響を及ぼす可能性があります。」
「・・・悪影響?元の世界??」
「ここは精神世界といって、現実とは違う場所です。精神世界では肉体は存在せず、魂だけが存在を許される場所です・・・」
「スキルというものは魂に刻み付けて使う物で、魔法というものは脳に詠唱を記憶したり、体内の魔力を借りて使うものです。」
「なので、覚えすぎると元の世界との矛盾が大きくなって・・・」
「まあ簡単に言うと、魔法を覚えすぎると復活することが難しくなりますね。」
どれぐらい覚えたらアウトなのかは分からないが必要な魔法だけを覚えるようにしよう・・・
「2つぐらいなら大丈夫か?」
「はい、どんな魔法を使うんですか?」
「強力な・・・光の魔法と強力な火の魔法」
魔法については詳しくないので適当に言ってるが、とりあえず敵が吸血鬼ならそれを浄化できる魔法があるかもしれない。
「もう一つ追加で、手っ取り早く魔力を回復させる方法・・・とか」
「流石にそこまで簡単に世界は出来ていませんよ・・・?」
ですよねぇ・・・
「とりあえず魔導書の類は出しておきますからそこから選んでください・・・」
ドサッという効果音が鳴りそうなぐらいの書物がそこから出現した。
「・・・あっ」
「読み書き・・・できますか?」
適当な本のページをめくる。
「・・・」
「・・・読める・・・読めるぞ俺は・・・」
「諦めてください。」
「仕方ありませんね。交信を復元します。」
しばらくの時間が掛かった。そういえば・・・交信というスキルは一体何の効果だったんだ?
「どうぞ」
「読める・・・なんでだ?」
「これは私の情報を白さんに送っているから分かるだけです。」
・・・ああ、つまり交信というスキルのお蔭で今まで会話が通じていたのか。
ってまたスキル勝手に消されてるし。
じゃあ魔法を覚えよう・・・まずは基礎から!
・・・なるほど、わからん。
精神世界じゃ魔法の実践もできないので本当に分からない。
「あの時水を生み出すことはできましたよね?」
「ああ。」
あの時と言えばエリュシオンが火事とモンスターの嵐だった時か。
「なら素質はあります。出来ない事はほぼないに等しいです。」
そういえば・・・・
「魔法と魔術ってどう違うんだ?」
「魔法は魔術の簡易版でしょうか。」
「簡易版と言っても魔法と魔術では用途が全く違いますけどね。」
「魔法は魔力消費でいくらでも撃てますが、魔術は使いすぎると撃てなくなります。」
「それはなぜかっ、答えは大地の力[マナ]を使っているからです。」
「マナとMPは全くの別物で、自然に漂っているものがマナ、体からあふれ出る活力を魔力と言いますです。」
「話を戻しますね、水を生み出すことが出来るのなら魔法は簡単です。」
「基本はイメージを固めて生み出す、そして応用はそれに作用を促す」
「ここではできませんが、知識さえあれば復活した後すぐにでも使えるはずです。」
「そして、詠唱の有無についてですが・・・詠唱があれば魔法の精度が上がります。無詠唱では現象を生み出すことは出来ても制御がほとんど効きません。」
不思議と聞いているだけでどういったものか分かってくる。
「では、イメージは実戦でやるとして、詠唱を覚えましょう。」
魔法の概念の説明を受けた後に待っていたこととは・・・
細かな細かな魔法言語習得だった。
どんな意味なのかはどれも分からない。しかし、その言葉が魔法にどんな作用をしてくれるのかはララが教えてくれた。
さすがについ最近も英語らしきものを覚えたというのにもう一つ言語を覚えるのは辛い・・・
今度はどれぐらい時間が経っただろうか。
「これで最後です。しっかり覚えてくださいね!」
「※※※※※」
「これで終わりです。では早速復活しますか?」
「えーと、肝心の魔法自体を教えてもらってないんだが・・・」
「何事もイメージですべて乗り越えられます。」
妙に自身ありげな声で話してくる。
「とりあえず復活。」
視界は光に包まれ・・・
パッと切り替わった画面のように現実世界に放り出される。
「...ここで斬って捨てましょう。」
セバスが剣を抜く。
・・・詠唱する時間が無い。
最初から使うか・・・
竜変身!
「(タイム・ドラゴン!)」
ゴーン・・・・
はっと気付いた事がある。
この時間に詠唱してしまえばいいのではないか。
急げ、そう思いつつも慣れないドラゴンの体で詠唱する。
・・・・ゴーン
「消えたっ!?」
「・・・上かッ!」
セバスが太陽の様に光る玉を切り伏せる。
だが、そちらはダミーだ。
もう回避不能の瞬間まで来ているだろう・・・
仕上げの時のため後ろで気配を消していた俺が竜変身を解除し・・・
「影縫い!」
手にブレイブスターの力を込め適当に振り払う。
春の目覚めを発動し刀を出す。これはダメ出しに刀ごと投げる。
「ぐ・・・動けん!!ぐあッ!」
「下!?」
魔法言語を習得した俺にとって炎を自在に操る事など造作もない!!
・・・ふざけている場合じゃない。
床を突き破って特大サイズの火球が出てくる瞬間を見計らいもう一度時間停止。
――――――竜変身!!
「タイム・ドラゴン!」
ゴーン・・・
さてここまで来たからには派手に決めてやろうじゃないか。
今までの恨みを込めながら静止した火球に魔力を注ぎ、詠唱し続ける。
注ぐ場所は火球の「核」。
ギリギリまで注いだら即退避。豪邸から脱出する。折角竜変身で翼があるので窓から豪快に脱出しよう。
念のために雷撃を逃げる途中で撒いておく。
これは無詠唱なので誘導効果はない。
蹴りが窓にぶちかまそうと思った瞬間・・・
・・・・・ゴーン
強すぎる爆風で窓を蹴るまでもなく吹き飛ばされた。
「(くっ・・・体制が立て直せない・・・!)」
吹っ飛んだまま竜変身を無意識に解除してしまう。
吹っ飛んだ先は・・・
俺達の泊まる予定の宿屋
ズガァ、・・・ドン。
「あ・・・あぁ・・・」
体が動かない。
「白か!?」
「一体なぜ空から・・・」
「ギルドで聞き込みしてたんじゃなかったのか?」
幸いにも他人の部屋じゃなく俺達が泊まる部屋だったようだ。
「とにかく、※※※※※※※※・・・ヒール!」
少し楽になったが・・・
「いや、回復は自分でできるからいい・・・」
無詠唱で極端に回復量が低くなったヒールを秒間16連射する。
「一体いつの間にこんな魔力を・・・」
「は・・・ふぅ・・・で、この穴の修理代どうすっかな・・・」
「「お前が払え」」
「冷たいなお前ら」
ドコドコドコと足音が聞こえる。この足音は絶対怒ってるやつだ。
・・・バンッと思いっきり蹴られたドアはなすすべもなく開いた。
「一体何なんだい騒がしいね!!!!!」
少し太った女将が俺が落ちてきた時の音と張り合えるほどの大声をあげる。
「すみません。修理代は払うので勘弁してくれませんか。」
「・・・訳アリかい?」
「・・・はい。」
まあ、確かに生死が掛かってはいたし、嘘は言っていないだろう。
あれ・・・力が・・・
ガクッ
白は魔力不足で倒れた。




