84話 戦女神
しばらく手元を離れていた相棒が戻ってきた。
私は左手の中指を眺める。
翠の石がほんのりと光帰還の挨拶をしてくる。
また、よろしく頼む。
指輪は承知したと言わんばかりに二度明滅した。
地下道は広大だった。
この町の規模でこれほどなら都市部など一体どうなってるのだろう?
まぁ今は関係ない。
途中にも何本か見えたが側面に梯子がかかっている。
二人を探すなら地上もよいが一度一番下まで行ってみるのも手かもしれない。
私は梯子を登り横穴にはいる。
少し歩くと縦穴に出る。
辺りの水が流れ込み滝になっている。
すぐ上に空間があってそこに流れ込んでいるようだ。
手をかけるには距離があるが、この流れに乗れば一気に上に上がれる?
いや、水に呑まれて動けなくなるのが落ちだろう。
下を見下ろすとたくさんの獣達が外壁を登ってきていた。
私を追ってきたわけじなないか…
私は上を見上げた。
誰かが追われて上にいる?
「砕けろ!」
黒滝…?
水音で聞き取り辛いが
真上から黒滝の声が聞こえた。
何かと戦っているのか?
また、あの黒狼の姿になって…
待っていろ!すぐに…
下を見た。
駆けつけたい。
だがまずあれをどうにかしなくては
上の戦況が悪化する。
私は下に飛び降りた。
「お前らこっちだ!」
壁を這い上がる獣達に私の決意を叩きつけた。
上を見ると獣達がこちらに気づき一斉に飛びかかって来るのが見える。
軽く20匹はいるか?
獣達ともろともに縦坑の最上層へ落ちていく。
さぁ相棒出番だ。
指輪が激しく光を放つの同時に
獣達が私に群がる。
そして最下層に激しい破砕音とともに激突した。
先ほどまでの私なら落下の衝撃で絶命していたろう。
先ほどまでの私なら今、私に群がる獣達に
全身噛みつかれ引き裂かれ絶命していたろう。
だが今私は直立していた。
全身に群がる獣達の牙も爪も私を傷つけることは無かった。
一匹肩に噛みついている猿の頭を掴み握りつぶした。
それを境に全身に群がる獣達を引き剥がしにかかった。
イチイチ一匹一匹剥がすのはめんどくさい。
私は激しい回転で群がる獣を引き剥がす。
獣達を引き剥がした中心にいる私はもとのボロボロのスカート姿ではない。
今自分の姿を見ることは出来ないが
濃紺の艶やかな全身鎧。
中世の騎士のような装飾的な鎧ではない。
流線形な女性的なフォルムのボディーアーマー姿。
全長は2メートル10。
重量150キロ
顔はアイアンメイデンのような金属製の面に包まれその目は翠の石がはまっているはずだ。
戦女神
敵と戦うために世界が産み出し私に与えてくれた力の一端。
こんな獣共など物の数ではない。
獣達はこちらに怯えも見せず向かってくる。
強者に襲いかかる時点でこいつらは獣でさえないのだろう。
最初に襲いかかってきたネズミ達を拳と蹴りで叩き潰す。
後属の犬共はどうしてくれよう。
私は両の手首を返した。
そこから二本の剣が飛び出す。
そこからはもうただの作業だった。
この身は蒼い旋風となり残る獣達を切り刻み殺し尽くした。
1分もたたず私以外に動くものは無くなっていた。
ふぅ。久しぶりだったけどうまく動かせた。
次は黒滝の方に向かわなければ。
私が上を見上げようとした時…
ブッ…ブッ…ブン…ブブッ
手首についた赤い石が明滅した。
なんだ?こんなものは前はついて無かった…
見れば足首にも同じような石が嵌められ点滅を起こしている。
なんだ!カンタ様!
これは…
ゴキッメキッ!
肩が膨らむ腕が膨らむ!
女性的なフォルムだったアテナの体が膨らみ歪み
変化していく!
何!
イヤッ!
意識が赤い光に犯されていく。
イヤッ止めて!
助けて!
誰か!
イヤッ!イヤアアアアアアアアアアアアア!
薄れ行く意識の中で
二人の顔が浮かぶ…
コハルさん…
黒滝…
助けて…
ルシルさんにもチートをぶちこんでみました。




