40話 川登り
この町南北に縦断する川。
まっすぐ通りを進み新築のマンションの横を通りすぎた辺りで橋に出た。
迂回ルートはこの橋を渡る。
だがコハルちゃんが見つけたルートはここから川に出る。
なるほど地図で見れば開けた両側の土手と
川が流れていた。
そう流れてるな川。
ここに来るまで実はけっこう興味あったのだ。
水が貯まっているのか流れているのか。
流れてるてことは海も存在してるのかな?
まぁ今の舟の高さなら上に水が流れていようと関係ないしな。
橋からも3メートルは離れているから
橋との干渉もない。
ここから川上へ進めばいいだけの超イージールート。
いざ川登り!
「出発!」
コハルちゃんの号令と共に
俺とルシルは鉄パイプで橋を押して川の上に出た。
川の側だからか風も吹いてなかなか気持ちいい。
「なかなか気持ちいいものですね。」
「そうだな!」
「ここはこんなに気持ちいいけど、風あんまり吹かないね町の方。」
「まだ馴染んでいないからだろう。」
偉そうなトイプーが俺の頭の上で眠りながら答えた。
「馴染んでない?」
「この世界とだよ。」
「世界?」
「ここは君がもといた世界ではない。」
なんかサラッとスゴいこと言ってないかこのトイプー。
「でも町はそのままだぞ。」
「それはそうだろうな。」
「人もいるよ。」
「それは部分的にはそうだな」
「部分的には?」
「まぁいずれわかるさ。私は寝る。」
え!寝たよこいつ!マジか?
気になるよ。俺は気になって眠れないよ!
「黒滝!」
ルシルが俺を呼ぶ。
なんだ?!今大事な話を…あれ?
川が近づいてる。川は高いところから低いところに流れてる。だから極論上流に向かえば川面が近づくのは当たり前だ。
だが急すぎるだろ徐々に川面が近づいてるじゃないか!
舟が明に傾いている。
俺もルシルも立っていられずカタヒザを着く。
コハルちゃんは先端に座っていたが
後ろに転がってしまった。
すかさず俺はコハルちゃんの腰に手を回す。
「ナイスキャッチ!お兄ちゃん!」
腰細いなぁ…いかんいかん。そんな場合じゃない。
「コハルちゃん!そこに捕まって!」
床に設置してあるデカイ収納箱にコハルちゃんを押す。
「ルシル!」
俺は床に置いたパイプを再び握る。ルシルも理解してくれたようで、足元のパイプを手にとって構える。
徐々に近付く川面。
15…13…10…7…5…今!
二人は同時にパイプで川面を突いた。
水深がどれくらいかわからないが、川底を突ければ一瞬止まるはず。
その隙にルシルのボートと俺の浮輪で脱出出来るはず。
ズムっ!衝撃が走る。
舟の甲板にパイプが突き刺さる。
舟の前はパイプでつっかえたせいか水面から2メートルくらいで止まった。
今度は舟のケツが浮き始めた。
ムリムリムリムリ!
ふと、収納箱に捕まるコハルちゃんと目が合う。
うわぁめっちゃ信じてるよ的な顔された。
その信頼、答えてやるぜコノヤロウ
パイプは四本積んであるが予備の二本は甲板に固定されたままだ。
なら、これしかない!
俺は舟の後ろに固定されてる棚(家に置くようなやつを無理やり固定した。)
にかけ昇ると万歳!
ザバーン!水に頭から突っこみ川底に手をつく。
コナクソオオオオ!
めっちゃ重い。潰れる…ヤバイかも…
ザブン!俺の横にパイプが突き刺さり川底にに突き立つ。
よし!もうダイジョブ!河から体を引き抜こうとするが抜けない!ウオッなんだ力が逃げる。上手く動けない。
ズボン!
下に俺の足を掴んでルシルが無理やり引っこ抜いてくれた。
マジで死ぬかと思った!
「何やってるんですかあなたは?!パイプが固定されたら体を戻せばいいでしょ?」
ルシルがすげーキレてる。心配させてしまったみたいだ。
「ごめんルシル。でも水の中、力が上手く伝わらないみたいなんだよ。」
「っ別にあやまってほしいわけじゃ…」
素直じゃないやつ…
「はぁ!何失礼な!だいたい貴方は…」
「お兄ちゃん!ロボがいない!」
!あっ!あいつ俺の頭で寝てたなそーいや。
振り返ると少し河下にバタバタ水しぶきがたってる。ヤバイ!どうする?
そのときコハルちゃんがさっきまで俺が登っていた棚に登ると水面にジャンプした。
ザブン!水の中を泳ぎロボに追い付くと
水面にサムズアップした手を突きだした。
よく見りゃ舟から紐が伸びてる。
「ひけ!ルシル!」
ルシルはグイグイ紐をひっぱり舟の上まで引き寄せると一気にひきこんだ。
水面から二人が落ちてくる。
俺はコハルちゃんとその胸に抱き抱えられたロボをキャッチした。
ゲホゲホっいくらか水を飲んだのか
けっこう咳き込んでる。
「無茶苦茶するなぁコハルちゃん。」
「…惚れ直した?」
「あぁ100倍くらいに好きになった!」
!!コハルちゃん顔真っ赤だぞ?
「水飲んだの辛かったんだね。ゆっくり休んでて。」
俺はコハルちゃんを棚にもたれさせた。
なんだ?ルシル?その冷たい目は?
まだ心配させたこと怒ってんのか?
ゲホッガハッ!
コハルちゃんの胸に抱かれた羨ましい犬が咳き込んだ。
「いや、そこの女はだなぁお前が…」
「また溺れたいんですか?犬畜生。」
「私は狼だ!」
ほんとこいつらは緊張感が無いな。
さて、こうして川登りは開始早々頓挫したのであった。
対生き物のバトルより対自然の方がやっぱ楽しいですね。




