30話 東条ルシル
私は戸惑っていた。
特に一人で困らないと思って生きてきた。
でも変な男に出会った。
特に何の力も無い、頭も回らない、助平で最低な男だ!
思ってることがすぐ顔にでる。
気まぐれに助けたが、ちょっと撫でただけで気を失ってしまった。
きっとすぐ死ぬだろう。
そう思っていた。
ネズミを恐がる顔なんて傑作だった。
オモシロイオモチャを手にいれた。
それが奴に対する唯一の好感情だった。
別れはあっさり訪れた。
まさか婦女子のトイレを覗くような不埒ものだったとは…許せん!許せん許せん許せん!
撲殺して八つ裂きにしてくれようかと思ったがやめた。
とゆうか冷めた。
何か私はあの男に期待していたんだろうか?
私としたことが何を…
私は奴を見限り本来の目的に戻ることにした。
急ぐわけではないが暇ではないのだ。
ボートをだしその場を離れた。
ふと気になり振り返ると
先程までいた建物に別の人間がいた。
少女だ…人の気配など気づかなかった。
あれは?泣いているのか?
あんな情けない面をして…そんなに私を頼りにしてくれていたのか?
少し胸が傷んだ?はぁっ?私が何故胸を痛めなければならないと?くだらない…
ん?なんだ少女が助けを求めているのか?
てゆうかなんで服を着てないんだ彼女は?
やつは気づいていないようだ。
まぁ気づいていたらきっとしどろもどろになって
何も出来ないのだろう。
む?なんだ?存外私はやつを信用しているのか?
あの女の子も気になる。少し様子を見てみるか。
何時間かして二人が浮き輪に乗って出発しようとするのが見えた。
なんだあのマネケな格好は♪
うっかり声を出して笑ってしまうところだった。
私は笑うのを我慢しながら、彼らがいた家の裏にボートをつけ雨樋を登った。
一階は荒れ果てていた。
カーテンは引き裂かれ家具は砕かれ
2つ大きな血の染みが広がっていた。
まずい、もしかしたら…
一階を手早く家捜しする。
寝室が2つとトイレがあるだけ。
幸い寝室は荒らされていなかったので
さらっと見て回る。
夫婦の居室のようだ仲は良さそうだな。
結構結構。
だが、あそこにあった血溜まりも夫婦のものだろう。死がふたりを別つまで。
皮肉なことだ。
ん?ではあの少女はなんだ?
私が思う最悪とズレてきている。
急いで彼らを追うことにした。
一体何が起きているのだ?
案の定来た道を戻っているようだ。わかりやすい阿呆で助かる。
にしてもマヌケな絵面だ。
遅い動きでゆっくり進んでいる。
なんだか楽しそうだなアイツ。鼻の下を伸ばしおって!生粋の変態だな。
離れて正解だった。私といてもビクビクオドオドしおって!あんな顔、一度も見れなかった…
私は怖がられていたのか…胸がうずいた。
くそ!後で袋叩きだ!
そうこうしているうちに先程の商店街あたりまで来た。
もい日もあまり高くない。あちらに向かうなら国語しなければならないが…
ん?なぜ右にゆく?
ボートが今度は山の方の建物の密度が低い場所へ向かい始めた。
まっ…まさか…
人気が無いところに少女を連れ込んでハレンチな行為におよぼうとしているのか?
ダメだ!阻止しなければ!
急いで追い付こうとした時
アパートの塀に一匹の猫を見つけた。
かわいい♪
触りたい♪
モフモフしたい♪
船をそっと寄せる。
シュッ!
目にも止まらない速さ。影を追うのでやっとだ。
電線を二ヶ所蹴りこちらに迫る。
とっさにスティックを縦に構えた。
耳障りな金属音と近くの塀に再び猫の姿を見るのは同時だった。
スティックには猫の爪痕が浅く残っている。
ワタシのスティックに傷をつけるなんて!
私はかわいいものに目がくらみ判断力をうしなっていたようだ。
そっと団扇を扇ぎ塀から離れる。
猫は興味なさげに寝にはいった。
近寄らないようにしましょう。でもいつか!
新たな決意をかため二人を再び追いはじめた。
しまった!見失ったか?位置的にはそろそろどん詰まりのはず…回りを見回す。
くっ猫に気をとられなければ!しかし!
ふと視界に黒いうきわを見つける。
あーそーこーかぁああああ!
猫に触れなかったフラストレーションもあいまって猛烈な速度で建物にふみいった!
「キャアアアアアアアアアアアアアアア!変質者ですウウウウ!助けてええええええええええええ!」
!!!ついに正体を現しましたねあの男!
スカートの腰の辺りを叩くとソフトボールが落下。
それをスティックにひっかけ投擲した!
ヒット!
悪は滅びた。
まぁその後この行いは私の勘違いだとわかり、少し反省するはめになりましたが。
人とこんなに長い間一緒にいたのはいつぶりでしょうか。
新しいイカダの板を固定しながら、こんな風に物思いにふけるのも久々だと
東条ルシルは少し唇の端を持ち上げ作業にいそしむのだった。
ちょっと休憩がてらルシルを書いてみました。




