18話 この問題は回避出来ない。
汚い話とエッチな話どっちから聞きたい?
ヤバァ~イ…
マズイ…マズイぞ…
トイレ行きたい。
超トイレ行きたい。
ウンコしたい!
これは困ったな。
ノグソなんて無理だ。
したこと無いもん。
男の子だもん。
都会っ子だもん。
ノグソの作法とかわからんぞ。
ググりたいけど携帯繋がらないだろうし…
ってかググって載ってるのか?
ここは我慢するしか無いのか。
「そろそろ住宅街に差し掛かってきましたね。」
「はっふぁっ!」
危なく出るかと思ったぞ。
青い顔する俺を無視してルシルはうちわを扇いでいる。
別にくつろいでるわけじゃなくて、
船を漕ぐ作業なんだがなんか優雅だな。
育ちが違うのか?
「なぁルシルって…」
「どの家にしますか?」
「あっおう。あそこはどうだ?」
俺は何を聞こうとしてるんだ?
知り合ったばかりの人間に聞いていいことじゃない気がする。
俺はごまかしついでに少し先に見える二階建ての個宅を指差した。
この辺は少し丘にあるので二階でもボートで届く高さだしな。
「そうですね。入りやすいし手頃ですね。
そうしましょう。」
?なんか根拠とか求められそうと思ってたんだけどな。
特に反対もされないし。
もっと好きあらば俺を苛めるのを楽しみにしてるかと思ったのに…残念。
ん?残念?なんでだ?
まるで俺がドMの変態みたいじゃないか!
違う違う。俺はノーマル。
彼女も思ったよりノーマル。
少し彼女を見謝っていたのかもしれないな。
俺が目をつけた家は鉄筋二階建ての出来立てホヤホヤな家だった。
別に広い家に住みたい訳じゃないが、ちょっと羨ましいんだよな。
こーゆー戸建てに住むのって。
まぁウチは母一人子一人。
戸建てじゃ広すぎるしな。
これくらい新しい家ならネズミとかはいないって思いたい。
住民は…まぁ言葉が通じるんだ。
トイレくらい貸してくれるだろ。
交渉あるのみだ!
ゆっくり近寄り二階のベランダにボートをよせる。
洗濯用の紐?みたいなのが転がっていたので
それでボートを係留した。
窓は空いていた。
開けっ放してのは無用心だな。
もしかしたら俺みたいに外に出たのかもしれないな。
部屋は確かにひっくり返っているが動物の気配は無い。
冷蔵庫やらキッチンカウンター、ソファーがあるのでリビングだな。
流行りの二階にリビングがある作りか。
すぐに飯にありつけそうだ。
ありがたい、ありがたい。
「貴方は上を見てきてくれません?
私はこの階を見廻ります。」
「?一緒に居なくていいの?」
「別々に物色した方が早いでしょ?ほら早く行きなさい!」
「わかったからケツ蹴るなよ!」
漏れちゃうだろ!
別に一人が怖いわけでは無い!
断じてない!
俺はそそくさと上の階を目指した。
トイレは上にもあるだろうしな。
部屋を出てすぐ階段は見つかった。
しかしマンションの時みたいに登れるような作りではない。
階段の上が吹き抜けの作りなのだ。
これは登れないな…
俺は諦めるやいなや隣の書斎らしき部屋に飛び込んで鍵をかけた。
チャンスだ!
今だ。今しか無い!
て言うかもう漏れそうだ。
トイレなんて探す余裕はない!
俺は急ぎ書斎のベランダに向かった。
ベルトは既に外している。
もう限界なんだよ、無理だよ、ここでするしか無い!
幸い下は空だ。
俺の排せつ物はお空に消えて無くなるし、
ちり紙は鞄に入っている。
ベランダの窓を開け庇に出る。
倒れる窓は無視。
幸い書斎の机に引っ掛かって割れずに済んだし。
流れる様な動きでスボンをおろし、外にケツを向けた。
大変見苦しい状態なので少し時間を飛ばさせてもらおうか。
はぁ~間に合ったよ…危なかった…この年になって、う○こ漏らすとか有り得ないからなぁ。
フキフキフキフキ♪
そなえあれば憂いなしだなオイ♪
一息つきふと回りを見回した。
あれ?
右隣にもベランダがある。
ボートの端が見えるから、俺達が乗り込んできた場所だろう。
俺はそこで衝撃の景色に遭遇する。
コンクリートの壁の下。
そこにしゃがみ姿の女子の下半身が見えた。
わぁ♪かわいいお尻♪
そしてそこから黄金の…
…ってダメだろこれ!
ダメっ!アウトアウト!
これ絶対見ちゃいけないやつ。
俺は音をたてないようにそっと立ち上がる。
幸いここのバルコニー同士を遮る壁は高くコンクリ作りのしっかりしたやつだ。
もともとバルコニーの天井付近まで遮っている作り。
今は天井から膝よりくらいの高さまで延びていて目隠しされる構造。
気づかれることなくゆっくり部屋に戻れば何も見なかったことに出来る!
俺はそーっと物音を立てずにゆっくり立ち上がる。
もちろんズボンも平行してはく。
優雅にエレガントにプリーツの裾は揺らさないように歩くのが乙女のたしなみ。
わけがわからん事を考えつつ、ゆっくりゆっくり立ち上がった。
そして気づく。
確かにコンクリで出来た頑丈なベランダだ。
だが目線の高さ辺りから天井までは縦のスリットが何本か入っていたのだ。
俺は壊れたオモチャのようにゆっくり右を向いた。
氷のような冷たい目が俺を見ていた。
「いや、ちゃうんや!」
つい関西弁になる。
住んでいたことはない。
彼女はそのまま後ろをむく。
テキパキと係留した紐をほどきボートに乗り込んだ。
「違う!ちょっと待って!見てない!
何にも見て…」
彼女は渾身の力でベランダを蹴りボートは矢の様な速さで出発した。
みるみるボートは遠ざかって行った。
俺を一人残して…
「いや、ホンマ見てへんねんて…」
誰も突っ込んでくれない下手くそな関西弁が虚しく響いていた。
ヒロインに捨てられました…




